14/100
イザベラ【企画『二百文字の彼女、冬』参加作品】
・企画名/二百文字の彼女、冬
・企画概要/書き手の理想とする冬の美女を二百文字小説で表現し、完成した作品での美女コンテストを開催し、その得票数で「冬の二百文字美女」を決定する。
・企画趣旨/「二百文字という限られた文字数で魅力的な女性を描く」ことにより、人物造詣と人物描写を学ぶ
冬空の街に女が独り立っていた。
薄汚れたコートを抱いて肩を震わすこの女は、あごを伸ばして高く空を見上げ、何かに抗うように重い空を鋭い眼で睨んでいる。
「どうしました、お嬢さん」
その眼に惹かれ声をかけると、雪のような白肌に色濃く浮かぶ黒い瞳が私の眼を捉えた。
「待ってましたの」
そして女はにこりと微笑み、
「春を」
そう言って私の服の裾を掴んだのだ。
まったくたいした女だ。
こうして私はこの女の春となったのだった。