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馬鹿なネリー
やけ酒に浸る私の耳に、その歌は不意に届いた。
彼女はこぼれた水を
元に戻そうと必死になって
顔を上げるとバーの奥でドレスの女が歌っている。
ああ、ネリー
馬鹿な女
新しい水を
汲み直せばいいものを
化粧の崩れた私の顔がグラスに映った。
――酷い顔。
女は独り哀しく歌う。
彼女は枯れた花を
再び咲かそうと必死になって
ああ、ネリー
馬鹿な女
新しい花を
咲かせてあげればいいものを
「馬鹿な女……」
私は呟き、左手の指輪をじっと眺めた。