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登場人物 二宮・ローディス・アズロ・ディアン
飲み会開始からすでに1時間ほど経過。
みんないい感じに出来上がってるかと思われるが、このテーブルにつく4人はまだまだ序の口。
二:「え?アズロ彼女いねぇーの?意外だなぁ、おい」
ロ:「この顔に寄ってくる奴、腐るほどいるぞ?」
銀:「世の中には色んなタイプの方がいらっしゃるんですよ?一人に決めるなってもったいないじゃないですか」
デ:「ああ、もしかしてアズロは体の相性がいい相手を探してるとか?」
銀:「相性は確かにありますねぇ。でも感度がいい方もまた……ねぇ?」
アズロの台詞に全員が頷く。
デ:「女性歴、ここで話すとけっこう問題があるのかな。3人とも経験豊富そうだけど」
二:「ローディスとアズロはまだ話が続くらしいし、ディアン、おまえも小説掲載中だろが。お嬢さん方の夢壊す発言は控えた方がいいんじゃねぇの?」
ディアン首を竦める。
デ:「そういうのを喜々として聞いてくれる女性の方が楽しいと思うけどね」
ロ:「あー、確かにノリがいい方がこっちも気を遣わなくてすむよな。でも赤くなって恥らうのもけっこう萌えるぜ」
銀:「アクアがそういうタイプだからですか?」
ロ:「うっせぇな」
二:「ノリよくて時に恥らってっつうのがいいんじゃねぇの?あんまあけすけでも興醒めするし、嫌だ駄目だって言われ続けても萎えるし」
デ:「どっちに重きを置くかっていうなら、わたしは自分からも積極的に挑戦してくれる女性の方がいいね。ああ、でも逃げるのを追い詰めるのも萌えるかな。そして少しずつ堕ちてくるところを見る」
銀:「あー、わかります。言葉で否定しつつ体は抗えないっていう。――ディアン、あなたとは似たものを感じます」
ふふふと笑いあうアズロとディアンを見て、ローディスは呆れ顔で酒をあおる。
二宮、手酌にてグラスにウィスキーを注ぎ、にやにや笑いで一口。
二:「おまえら二人に引っかかる女が可哀想だなぁ。苛めて愉しむタイプだろ」
銀:「苛めませんよ。ローディス見てたらアクアみたいなスレてない女性も、案外いいものだと思いますしね」
ロ:「アズロ、おまえマジでアクアに手ぇ出す気じゃねぇだろうな」
胡乱な眼差しをアズロは微笑みで受け流しワインを飲む。
デ:「アクアってちょっと普通の女性と違うようだね。ローディスに足手まといって言われないよう強くなりたいって――そういうの、淑女から外れるから浮くだろう?」
ディアン、ワイングラスを手にローディスへ疑問を投げる。
ロ:「淑女?あー別にあいつは貴族でもねぇからな。ディアンたちの世界はそういう貴族社会の世界なのか?マナーとか身分とかいちいちうるさそうだな」
デ:「うるさい人もいるね。わたしは逆にそういうのが好きではないよ。淑女は型にはまりきっていて面白くないと思うからね」
二宮、またしても手酌にてボトルを空けストレートで。
かなりのハイペースにもかかわらず顔色も変わっていない。
二:「型にはまりきった女を鳴かせるのが愉しくねぇか?さっきの追い詰めるって話からすりゃぁよ」
デ:「その手のタイプは堕ちた後がやっかいなんだよ、本気になると」
ロ:「あー、選んでくれなきゃ死んでやる、とかか?それ、ねーわぁ」
二:「俺、魔術で忘れさせるから困らねぇけど」
銀:「わたしも幻術でその女性のツボをついた優しい男を見せて、そっちに本気にさせますね。まぁ、女性を追い詰めすぎるなんてヘマしませんけど」
ロ:「おまえの口のうまさ、ハンパねぇからなぁ。詐欺師とか絶対向いてるぜ」
デ:「わたしも危ない女性は深入りする前にやめるね」
二:「この中で、一番ヘタ打ちそうなのってローディスだよな。おまえ、遊び相手にまで優しいだろ。たぶん、アクア選んで正解だったんじゃねーの?」
銀:「よくわかってますね、ニノ。この人、亡くなった父君の教えだか知りませんけど、かなりのフェミニストなんですよ。なんだかんだ言いつつ面倒をみちゃうんですよねぇ。口調は乱暴なくせに実は優しいって、そりゃあもう女性に大人気で――」
ロ:「ああ?あんなん普通だろ?」
銀:「さりげなく重い方の荷物をもったり、仕事のフォローしたり、チンピラに絡まれてる女性を助けたり、他にもありますが……恋人の相談にきたはずの女性が、あなたに本気になったこと、ありましたよねぇ」
アズロがダメダメです、と首を振ったのを見てローディスは顔を顰める。
デ:「アクアとくっついたの知って、泣いた女性はたくさんいるんじゃないのかい?」
ロ:「いや、俺とアクアって始まったばっかなんだよ。それに小説ん中じゃまだ仕事先だし」
二:「気ぃつけろよー、ローディス。アクアみたいなタイプ、化けるしモテんぞ?で、ここにいるディアンやアズロみたいな奴らにもやたらとウケる」
二宮の言葉にディアンとアズロは目を見交わす。
二人の不気味な微笑みにローディスが溜め息。
ロ:「二宮も性格悪ぃな。人の不安あおって愉しみやがる」
二:「だーから、おまえが一番ヘタ打つタイプって言ったんだよ。俺たちほど腹んなか黒くねぇから。たぶんあっちのテーブルにいる要の方が黒いぞ。あとはシスルってのもなかなか曲モンかもな。俺たちと違う意味でなんかありそうっつうか。あー、要もちょっと似たとこあるな。意外なところでカルサイト。あの親父も実は意外な顔をもってそうなタイプじゃねぇ?」
二宮の言葉に3人がみんなのいるテーブルに目を向ける。
銀:「ダスティって彼も笑顔に騙されてはいけない気がしますねぇ」
デ:「笑顔でごり押ししてくるタイプだよ、彼。一筋縄じゃいかないね。――男を見るより女性を見るほうが目の保養にならないかい?あのラリマーって変わってるよね。布にしか興味ないのかな」
ピアーニーのドレスを上から下まで見ているラリマーに3人の視線が移る。
ロ:「仕立て屋なんだけどな。すげぇ腕はいいぜ。型紙とらずに布に直に鋏入れても、寸分もズレねぇんだよ。しかも着心地もいいし」
二:「ディアン、ラリマーみたいな女がタイプか?ちょっと個性が強すぎだろ」
デ:「さっきも言ったけどわたしは淑女は好みじゃなくてね。ああ、でもここに集まった女性は皆、それぞれに個性的だ。要の恋人の葵が一番普通の子だね」
銀:「恋人って言えばあのリリィとシスルって微妙な感じですね」
デ:「リリィは目でシスルを追ってるけどねぇ」
くすくす笑ってチーズをつまみにするディアン。
二:「あーいう小動物系の子ってベッドでどんなだろうなぁ」
ロ:「二宮、発言が親父くせぇぞ」
二:「やー、だって無茶なことしたら泣かしちまいそうだろ?で、それが今後の傷になんねぇかなって思わねぇか?」
銀:「いや、ああいう子のほうが意外にハマったりするんじゃないですか?うまく仕込めば」
ロ:「ここにも親父が……」
デ:「わたしは同じ小説に出てるから発言はさすがに控えておくよ。でもたぶん、彼女は頑張り屋だよ?」
ロ:「へぇ?じゃ教えりゃ上達しそうだな」
デ:「ローディス。きみも親父だよ……」
銀:「でも実際何も知らない子に色いろ教えるのは愉しそうじゃないですか?いいですねぇ、ローディス。これから実践できるじゃないですか」
ロ:「だから、おまえうるせぇって」
二:「自分色に染めるって男のロマンだよな。で、エロくねだってくれりゃ完璧」
デ:「奉仕してくれるのもわたしは好きだね」
二:「あー○○○で?それとも△△△△?あ、◇◇◇とか?」
銀:「ニノ、規制入ってますよ」
二宮が舌打ち。
二:「口とか手とか……お、こりゃいけるみてぇだな」
デ:「わたしはどれでも。女性が頑張ってくれるのを見るのが好きなんだ。うまい方がいいけどアクアのような初心者なら教え甲斐もあるね」
ロ:「おぃ、ディアン。てめぇもか」
ローディスの顔が険しくなる。
デ:「アズロの話から彼女の初めての相手はきみかと思って言ってみただけだよ。わたしはこれでも節操はあるほうだからね。誰かのものには手を出さない主義だ。相手から来る分には拒まないけど」
含みのある微笑にローディスの眉間の皺が深くなる。
ロ:「アズロとは別の意味でタチ悪ぃな。相手から言い寄ってくるように仕向けんだろ?」
答えずディアンは笑うのみ。
二:「ディアン、ローディス苛めんのもそのくらいにしてやれ。で、話戻すけど――女がやってくれんのもそりゃいいけどよ。やっぱ主導権はこっちが握っていたくねぇか?」
銀:「ディアンの言うように相手がうまければ、時に任せておくのもいいんじゃないですか?いつも男が主導権を握ってるっていうのも。僕の場合、気持ちよければどっちでもいいんですけど」
二:「やー、俺はやっぱこっちからがっつり攻めたいねぇ」
ロ:「俺も。で、理性が消えてぶっ飛んでるときに、普段嫌がるエロいこと言わせたり、体位で攻める」
二:「お、ローディス、気が合うな。俺もそれ萌えるわ~」
銀:「嫌がるのを無理やり言わせるのが愉しいんじゃないですか」
デ:「そうだね。それで恥ずかしがって泣き出されるとたまらないかな」
二:「はい、おまえら二人ドS決定な。俺もそういうの嫌いじゃねぇけど、ほどほどにしてやんねぇと、マジ泣きされたら困るじゃねぇか」
デ:「だからそこが可愛くてたまらないんだけどね」
銀:「ですよね~。で、それを優しく包んで絡めとって離れられなくするっていう――これぞ男のロマン。というか醍醐味じゃないですか?」
ディアン、アズロの言葉に頷いている。
二:「や、俺、そこに醍醐味感じねぇわ。同じ泣かせるなら気持ちよすぎて、ってのがいいじゃねぇか」
今度はローディスがうんうん頷く。
銀:「お二人には決まった相手がいるからじゃないですか?自分の彼女を気持ちよくしてやりたいっていう……。まあそれと男のサガは紙一重かもしれませんけど」
デ:「アクアは気が強そうな分、泣いたらギャップにやられそうだね」
銀:「あ、それ超絶イイですよ。しかもあの子は自覚なくローディス大好き発言しますからね。あんなふうに想われるなら僕も純愛もいいものだと思います」
二:「おいローディス、おまえとあの子じゃ体格差けっこうあるし、無茶なことしてやんなよ?それでなくてもおまえタフそうだし――壊すぞ」
ロ:「まだ一日中ヤリまくったことねぇし、そこまでめちゃくちゃなことしてねぇよ。つか、俺だけじゃねぇだろ。おまえらだって体力に自信ありってとこじゃねぇ?」
デ:「わたしはそこまで絶倫じゃないと思うよ」
二:「っていいつつ朝までヤリそうなタイプだよな、ディアンって」
顎に指をあて考える素振りのディアンが次の瞬間微笑む。
デ:「かもね」
彼らのテーブルには空いたボトルがもう何本も並ぶ。
4人の男たちのディープな話は尽きることがない。
そこへ突然割って入る声。
ア:「ローディス!」
後ろからムギューと抱きつかれ驚くローディス。
ロ:「アクア?おまえこんなことするタイプじゃ――」
ゴロゴロなつくアクアの呼気にローディスが気づく。
ロ:「おまえ、酒飲んだな?」
ア:「お酒じゃないのー、松本がね、天の人に頼んでね、女の子みんなに甘い飲み物をくれたのー。でもねぇ~、さっき、うわぁやられたぁって言ってね。「要様、甘い飲み物ってちゃんと言ったんですよ。でも天の人がですね」とか言っててぇ~。葵がいきなり笑い出して弾けてね~、そのあと松本が要に怒られたぁー」
ロ:「甘い飲み物?」
ア:「かくてる、とか、ちゅうはい、とか言ってたのー。おいしくていっぱい飲んじゃった。ローディスもいるかなぁって誘いに来たのよー。でもまだ4人で話するのぉ?」
ローディスの頬を両手で挟んで顔をのぞきこむアクアの頬は赤く、酔って瞳も潤んでいる。
二:「カクテルに酎ハイ?バカか、あいつは。天の奴なんか信用しやがって」
デ:「キツイ酒なのかい?」
二:「酎ハイはそーでもねぇけどカクテルは種類によっちゃあな。アクアは酒に弱そうだな。おいローディス、アクアの面倒みとけ。その様子じゃ寝ちまうかも――」
ア:「寝ないもん。ローディスとかくてる飲むのっ。えーとねぇ、なんとかぁミルクーってかくてる甘くておいしいの。ローディス、あっち行こう」
ぐいぐいとローディスの腕を引っぱるアクアに周りが苦笑し、ローディスが目で3人に「悪い」と告げて席を立つ。
ロ:「放ってて悪かった、だから、んなひっぱんな。つかアクア。おまえは俺と別席な。あっちに戻るのは駄目だ」
ア:「えーなんでぇ?」
ロ:「そのカクテルっつうのを飲むつもりだろうが。けど俺の見る限りじゃおまえ、ここらがギリの許容量だろ。これ以上はマジで寝ちまうぞ。それとも悪くすりゃ気持ち悪くなって吐くかもしんねぇし」
ア:「吐くなんてもったいないことできないー。食べ物も珍しいのがいっぱいですっごくおいしかったのっ」
ロ:「はいはい。だったら俺の言うこと聞いとけ」
むぅーとむくれた顔をするアクアはローディスを見上げる。
ア:「じゃあいまからわたしの側にちゃんといてくれる?」
とたんに二宮やヒュゥっと軽く口笛を吹く。
それを一瞬ちらりと見たローディスは目があった二宮にニと笑う。
ロ:「アクアが俺の言うこときいてくれんならな」
そのままアクアの肩を引き寄せ別席へ移動。
見送っていた二宮がうらやましそうに言う。
二:「いまからいちゃいちゃタイムだなぁー。アクアに言うこときかせて何するつもりだ、あいつ」
銀:「こんなに人がいて本番はしませんよ、さすがに。触って苛めるくらいでしょうね」
デ:「アクアはローディス相手だとあんなに甘えるんだね。あれじゃあ彼、めろめろになるはずだな」
くすくすとディアンが笑う。
銀:「かぁわいいこと言うでしょう?泣きながらローディスに自分のことが好きか尋ねたりするんですよ?」
二:「それを聞いてあいつも悪い気してねぇんだろうな。――それより、あっちのテーブルすげぇことになってんな。久ちゃんなんかピアーニーと意気投合してるし、あ、葵もいるじゃねぇか。なーんかすんげぇご機嫌だな、葵のやつ。……けど久ちゃん術札出して、あれ何やるつもりだ?……おーおー、萬矢の顔色変わってっし。ありゃあけっこうヤバイもんだなぁ」
二宮の言葉にアズロとディアンも目を向ける。
デ:「リリィ、なんだか目が据わってるね。なぜかドレス脱ごうとして――ラリマーに脱いでほしいと頼まれてるのかな?シスルとダスティが必死で止めてるけど。ああ、カルサイトがラリマーを引っ張っていったから大丈夫かな」
銀:「松本は要にお説教をくらってますねぇ。あ、ラリマーが今度は葵に」
瞬間、葵の「っにゃー」という叫びがあがる。
ラリマーに胸を鷲摑みされた模様。
顔色を変えて要が席を立つ。
二:「ラリマーってそっちの趣味か?あ、違ぇな。服の飾りが欲しいのか」
「ラリマーさん、くすぐったい……やっ、やぁー」と葵の叫び声。
それを見てやんやと手を叩くキュウとピアーニー。
銀:「女性同士の絡みを見るのもまた、いいですよねぇ」
二&デ「確かに」
男3人、酒を飲みつつディープな話を続行。
テーブルの上に空いたボトルが更に増えてゆく。