表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/50

第三十八話 中央広場の死闘、1:99の賭け

 僕はロキ。


 この革命戦争、僕はアケミさんのおかげでかなり儲けさせてもらった。


 そして、やっぱり面白い事になった。


 中央広場はもう処刑場じゃない。

 完全に戦場だ。


 悲鳴。

 血。

 焼けた石の匂い。


 でも僕は安全圏。

 人混みに紛れて観戦だ。


 イベルタも恐ろしく強い。嵐龍の牙を振るうたびに騎士が吹き飛ぶ。


 元々化け物じみた才能はあった。だけど、ギャンブル依存で装備にお金をかけなかった。いや、手に入れた武器すら、賭博資金のために売っていた。


 だからいま、アケミさんから()()()と言う形で、相応の武器を手にして、本来の実力になった。


 それでもやっぱり、格が違うのはアケミさんだ。

 騎士達を薙ぎ倒し、ついにアルベルトの眼前へ。


「くそババア!」


 アルベルトが短剣を振り下ろす。


 焦り。

 怒り。

 恐怖。


 全部が混ざった一撃。

 アケミさんは、半歩だけずれた。


 空振り。


 次の瞬間、カウンターの一閃。

 短剣を持っていたアルベルトの右腕が、宙を舞う。


 血飛沫が弧を描く。


「ぎゃあああぁぁあ!!」


「うるさい」


 冷たい声。


 アケミさんは苦しむアルベルトの顔面を、拳で殴りつけた。


 骨の砕ける音。


「う…うぁ……」


 地面に転がりながら、アルベルトが顔を上げる。


 その視界に映るのは、地獄の鬼。

 本気で怒ってる。


「ゆ、許してください!」


 とっさの命乞い。さっきまでの騎士様はどこへやら。


「アンタ、ゲイン達を殺したんだよな」


 静かな確認。


「お、俺1人じゃない!コルディもやった!!」


 ……ああ。最悪の答えだ。


「おかしいねぇ」


 アケミさんの声が、さらに低くなる。


「下層区の住民の話じゃ、女の子は退屈そうにあくびをしていただけ、らしいけど」


 僕が流した情報だ。見聞きした物ではなく、僕自身がこの目で見た真実。

 アルベルトの顔に、はっきりと焦りが浮かぶ。


「う、嘘だ!」


 失礼なやつだな、僕の情報を嘘扱いとは。


 アケミさんは、一瞬も迷わなかった。

 短剣が閃く。アルベルトの喉が裂ける。


 だが、深くない。

 致命傷じゃない。


 血が溢れ、泡立つ呼吸。


「嘘ばかりつくやつは、しゃべる必要ないだろ」


 アルベルトは、首と、切断された右肩から出血している。


 止まらない。

 止めてもらえない。


 騎士団の誰も助けに来ない。来られない。

 アケミさんが立っている限り。


 僕は思わず笑ってしまった。


 ああ、終わったな。


 アルベルト=ローキンス。


 名家の血。誇り高き騎士候補。

 その最期は、広場の石畳に転がるただの肉塊。


 でも、まだ死んでない。


 アケミさんは、わざと生かしてる。

 見せしめだ。上層区への宣戦布告。


 一方、ギャンはかなり削られている。


 肩で息をし、膝がわずかに震えている。

 剣を握る手も、もう余裕はない。


 一方――エタルドは当然無傷。


 鎧に傷一つない。

 呼吸も乱れていない。

 まるで稽古でもしているかのような冷静さ。


 このあとアケミさんが加勢にでも入らなきゃ、ギャンは死亡確定だ。


 感情論じゃない。

 純粋な戦力差。


 そしてもう一つの戦場。


 イベルタとアリシア。


 嵐龍の牙を握る姉と、利き手を潰されながらも立つ妹。


「優秀な騎士達を無傷で完封ですか、少しは腕を上げましたね、姉さん」


 アリシアの声は静かだ。

 血を流しながらも、表情は変わらない。


 あれがローキンス家の本質。

 痛みも恐怖も、外に出さない。


 アリシアはローキンス家で三番目に強い。


 王都にいる党首と、その長兄。


 殲鬼 シュレイド=ローキンス

 神殺し クラウド=ローキンス


 二つ名を持つその2人には及ばないが、少なくともエタルドは超えている。


 とはいえ今は利き手を潰されている。

 騎士を前に出して時間を稼ぎ、その間に脳震盪も回復したらしい。


 立ち姿が安定している。

 焦点も合っている。


 一方のイベルタは実力発揮。


 実力に見合った武器。

 おそらく、今日のイベルタは過去最高。


 だが相手は満身創痍とはいえアリシア。


 勝率は、6:4でアリシア。


 怪我があっても覆るほどの差はない。

 技量と戦闘IQでまだ上をいく。


 そして中央。


 ギャン対エタルド。


 あれは勝率1:99。

 いや、もっと低い。

 あの実力差で、よく耐えていると言っていい。


 この戦いの勝敗の行方は、僕でもまだわからない。

 革命が完成するか、ここで潰えるか。


 少なくとも一つだけ確かなのは、今日この広場で、エーテルディアの秩序は壊れ始めている。


 そして僕は、その最前列で観戦している。


 ああ、やっぱり。


 面白い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ