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R.I.P末期ギャン、異世界転生 ―死んで借金がチャラになった俺は、異世界で命(チップ)をタダで貰ったので今度こそ遊んで暮らす―  作者: 黒瀬雷牙


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1/5

プロローグ R.I.P

 とあるパチンコ屋に、俺はいた。

 

 明日への希望を、僅かな全財産に託して。


 ……頼む、もうあとがねぇんだ。


 p社に二万五千。

 a社に一万五千。

 m社に一万。

 クレカが八千。

 家賃が六万。


 頭の中で数字を並べるたび、呼吸が浅くなる。

 計算なんて、とっくに終わっている。

 俺の金は、パチンコ屋の会員カードの中の、この最後の五百円だけ。


 パチンコ台の貸し出しボタンを押す。


 反応はない。音も、光も、救いも。

 ハンドルを回す。

 強く。祈るみたいに。


 頼む。

 頼むよ。


 この五百円が、今日を、

 いや、人生を繋いでくれ。


 終わっちまう―――。


 保留が緑に変わった。

 一瞬、心臓が跳ねた。


 だが、明らかに外れると分かりきった演出が垂れ流され、台は淡々と外れを告げる。


 周りを見る。

 誰も俺を見ていない。

 誰も気にしていない。


 この店にいる全員が、自分の破滅で忙しい。


 五百円は、音もなく消えた。俺は立ち上がり、逃げるように店を出た。


 帰宅。


 ポストには、山のような督促状。

 赤、黄色、白。

 封筒の色だけが、やけに鮮やかだ。


「至急」

「最終通告」

「法的措置」


 全部、同じに見えた。


 靴も脱がずに、床に座り込む。

 部屋は静かだった。静かすぎて、耳鳴りがした。


 ふと、子供の頃を思い出す。


 日曜の朝。

 テレビの前。

 特撮ヒーローが叫んでいた。


「正義は必ず勝つ!」


 じゃあ、俺はなんだ?悪人か?


 俺は戦ってきた。


 でも、負け続けた。

 パチンコも、スロットも、

 競馬も、競輪も、競艇も、

 麻雀も、花札も、


 ……オンカジも、闇スロも。


 全部、負けた。


 勝った記憶はある。

 一晩で600万以上勝ったこともあった。

 一瞬の高揚も、確かにあった。


 でも残ったのは、数字と督促状と、誰にも言えない現実だけ。


 負けた。

 負けた。

 負け続けた。


 膝の上に、何かが落ちた。

 気づいて、初めて分かった。


 ――泣いていた。


 声も出ない。

 嗚咽もない。

 ただ、涙だけが勝手に流れる。


 俺は……

 俺は……


 何者にもなれなかった。


 ヒーローにも、

 悪役にも、

 勝者にも。


 ただ、末期のギャンブラーとして。


 本当に、完全に詰んだ。


 親に二回、借金を立て替えてもらった。

 親戚も、頭を下げて助けてくれた。


 なのに、またやっちまった。


 縁を切られた。


 当然だ。

 俺が裏切った。


 ダチなんて、とっくにいねえ。

 アイツも、アイツも、

 先輩も後輩も、元カノも。


 合わせりゃ、百万なんて軽く超えてる。


 信頼を、

 時間を、

 人生を。


 全部、賭け金にして溶かした。


 依存者の集まりも行ったさ。

 でも、ダメだった。

 行かなくなった。

 かわりにパチンコ屋に行った。


 ……死のう。


 もう無理だ。


 俺は窓に立つ。


 街の明かりが、やけに遠い。

 クラクションの音も、

 人の笑い声も、

 全部、別の世界の出来事みたいだった。


 はぁ。


 このまま死んで、借金チャラだ。


 ……チャラになっても、

 もうどうでもいいけどな。


 誰も悲しまない。

 誰も困らない。

 世界は、明日も普通に回る。


 そう思った。


 次の瞬間、

 足元の感覚が消えた。


 俺は、死んだ。


 痛みも、恐怖も、

 最後はよく覚えていない。


 ただ――

「やっと終わった」

 それだけだった。

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