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セルスの過去

 「俺が来た理由、アンタも分かってるんだろ。さっさと話を始めようぜ。」


 そうセルスが話を始めようとすると、アルノルトはおかしそうに小さく笑っている。


 「いや、いや。……ククっ……国王になってからというもの”アンタ”と呼ばれたことは無かったからね。おかしく思わないか、ウィンド」

 「はっ。おかしいと思うかに関しては肯定しかねますが、不敬罪で処罰を加えるべきかと」

 「君も冗談を言えるようになったんだねぇ」


 関心、関心、というようにアルノルトはうなずいているが当の本人は大剣を今にもセルスに向けそうだ。


 「セルス君。君の要望は何だい? 一応、君の口から聞いておきたくてね」

 

 アルノルトがそう聞くとセルスは間髪入れずに言った。


 「グランギルド長の逮捕状の撤廃。アンタならできるだろ、()()()


 セルスが厭味ったらしく言うとアルノルトも苦笑いで答える。


 「城を一部破壊したテロリストと交渉するのは本来はありえない……けど、こっち側に非があったのも確かだ。」


 含みのある発言をするとセルスは顔をしかめる。


 「だったらどうするんだよ」

 「ここはひとつ、君に()()をしようと思うんだ。もちろん報酬もある」


 そんな返答は考えていなったのかセルスは少し驚いたような表情を見せる。


 「依頼を受けてくれるなら逮捕状の撤廃を受け入れよう。もし、完遂したのならば望みのことをできる範囲ならばかなえよう」

 「……そこまでしてくれるってことはかなりきつい依頼なんだろ。まずは依頼内容を話してもらわなくちゃなんねぇよ」


 そう聞くとアルノルトは少し考えたようなそぶりを見せてからゆっくりと口を開いた。













 「魔王討伐を依頼したい」

 








 「なっ!!……」


 流石のセルスもこれには驚いた。2000年前、勇者アルバートが聖剣アスカロンにより打ち倒したとされる魔王アビスゲート。その討伐依頼という事は……


 「……復活したのか、魔王が」

 「話が早くて助かるよ」


 そう話した後にアルノルトは続けた。 


 「半年ほど前、ライン地方で出没する魔物の数が大幅に増えているという情報を得てね。そのような現象が今までにも起きたことは無いかと調べていたんだ。そうしたら一つの結論にたどり着いたんだ。魔王復活、というね」

 「その根拠は?」

 「2000年前の資料に乗っていたよ。魔王が出現する数か月前から北の地方の魔物の数が増えている、ということがね。まあ、2000年前には前例が無かったからあまり重要視されていなかったらしいよ。」

 「……」


 ライン地方は王都から向かって北に広がる地域であり以前から魔物の数が多いことからも有名だ。その理由は近くに旧魔王城があることに由来する。魔王が倒された後もその城に多くの魔力が残っているため魔物が集まりやすいのだ。


 この依頼は確かに危険だ。だが得られるものも確かにある。()()についての情報も得られるかもしれない。そんなことを考えているとアルノルトはせかすように聞いてくる。


 「どうだい、この依頼は確かに危険だが君()なら十分に達成できると思うよ」

 

 そう話すアルノルトの言葉に、ふと違和感を覚え聞き返す。


 「ん?……君達?」

 「ああ。そういえば言ってなかったね。魔王討伐に行くのは君の他にあと3人いるよ」

 「……は?…………」









 





 そのころ、村のギルドではゼナがグランに詰め寄っていた。


 「な!! ……馬鹿な。ありえない! あの事件の生存者がいないか、いたるところまで探したんだぞ! まさかそんなわけが……」


 狼狽えているゼナにグランは先ほどよりも静かな声で言う。


 「まぁ、騎士団が見つけられなくても仕方ないだろ。なんせ、あいつがいた場所は……”死の山”だからな。」

 「なに!?……」


 ”死の山”とは王国の中でライン地方の次に魔物が多い地帯として有名である。山の大きさ自体は一般的な山と変わらないのだが、魔物の数が異様に多いため魔物との遭遇率が異様に高いのだ。そして魔物の多い理由もまだ、定かではないことからそのような名前がついている。


 「"死の山"だと!?そんな危険なところで幼い子供が5年間も生きていけるわけがないだろう!」

 「だが、結果としてあいつは今、生きているだろう。……あいつを保護したとき、こう聞いたんだ。君はどこから来たんだい、って。そうしたら生気のない顔でなんて言ったと思う。"……地獄から"、こう言ったんだよ」

 「ッ!!……」


 これにはゼナも何も言えなかった。幼い子供が一人で生きていくことの苦しさは想像を絶するものだと想像できたからだ。

 そう考えていると、グランは時計を確認してから急かすように言った。


 「おっと、話をしすぎたな。人は少ないがここも冒険者ギルドなんでね。ほら、帰った帰った。」

 

 ゼナは扉を開けて外に出る寸前グランに聞いた。


 「お前は……お前はなんで私にこの話をしたんだ?」

 「あんたなら、あいつのことを理解してくれるような気がしたんだ。それだかだよ」


 そう聞いてゼナはギルドを後にしたのだった。


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