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五色の龍  作者:
1/2

プロローグ

その昔、この世界には五つの感情を掌った龍が存在した。

喜の龍は、人々に喜びと春の美しさを

怒の龍は、人々に怒りと夏の恵みを

哀の龍は、人々に悲しみと秋の彩りを

諦の龍は、人々に諦めと梅雨の煌めきを

恐の龍は、人々に恐れと冬の冷たさを


ある時、この世界の端で、小さな小さな黒いモヤが生まれた。それは人里に降りて陰に潜み、人間を襲った。

ただ人間を襲うだけならば、霊媒師や魔術師達が対処しただろう。だが、それは襲った人間を喰らうでもなく、弄ぶでもなく、飲み込んだ後に吐き出して去って行った。

それが飲み込んだのは、“感情”だった。

それは、ほんの少し大きくなっていた。

それからも、それは各地で人々の感情を食べ続けた。

食べ続けた

食べ続けた

食べ続けた

食べ続けて

食べ続けて

食べ続けて

食べ続けて

食べ続けて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

食べて

喰べて

食べて

食べて

食べて

喰べて

喰べて

喰べて

喰べて

喰べて

食べて

喰べて

喰べ続けた。


いつしかそれには知能がついた。

いつしかそれには魔力が宿った。

いつしかそれには人を操る力が宿った。

いつしかそれは自信の行動理由が分かった。

それは『人間の負の感情を取り込む』ことだった。

それは本能にも似たその行動理由で以前よりも多く人を食った。

いつしか人間達はそれを“魔王”と呼び、恐れた。


それは千年前のことであった。

魔王はいつものように人を食っていた。

その時、ふらりと目の前に一人の美しい女が現れた。

本能に従うままに、魔王はその女に襲いかかった。

だが、それは出来なかった。

女に触れる前に、何かに弾かれるように魔王の魔力は弾かれたからだ。

その女はこの世界を見守っていた五色の龍の一翼、“喜”の龍だった。

喜の龍が魔王の魔力を弾いたのを皮切りに、次々と他の感情の龍が現れ、魔王に攻撃を始めた。

“怒”の龍が紅蓮の炎で魔王の身を焼き

“哀”の龍が深い深い青の水で動きを止め

“諦”の龍が金色の稲妻でその身を刺し

“恐”の龍が全身を引き裂き、魔王の体を十に裂いた。

最後に、“喜”の龍が十に裂けた魔王の体を各地に分け、厳重な封印を施した。

全ての封印が終わると、五色の龍達は満身創痍の体で、散らばって行った。

『またいずれ何処かで』

そう約束を交わして。


これが、千年前に起こった話であり、五色の龍達の最後の目撃譚である。





「・・・ししょー」

「んー?なぁに?」

「これ、ほんとのお話なんですよね?」

「ええ、そうよ」

むー・・・と唇を尖らせて少女は唸る

「でも魔王のカケラなんて見たことないですよ?」

「そりゃあそうでしょう。」

おかしそうに師匠と呼ばれた女は笑う

「強い強い封印を何重にもかけて隠したのだもの。そう簡単には見つけられないわ」

「じゃあ!じゃあもし封印が解けちゃったら?」

少女のその言葉に、女はふっと微笑む

「その時は、あなたがやっつけてちょうだいな。そうしてくれれば、私も安心よ」

「私強く無いです・・・」

「あらあら拗ねちゃって」

女は少女を抱き抱えて膝に乗せる

「大丈夫よーあなたは私の自慢の弟子だもの。弱く無いわよー」

「なぐさめにしか聞こえません」

少女はブスッとしかめ面をして返す

「・・・それでも、慰めにしか聞こえなくても、私はあなたに託したい。」

パッと少女が振り向くと、真っ直ぐに女は少女の目を見つめる

「お願いできるかしら?」

その目には確かな威厳が宿っている

「・・・言われなくても」




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