事件の真相に迫るのです
「おいニャトル。準備はいいようだな」
「ふん。当然ニャ。それよりこの恰好何か意味あるニャ?」
俺にクロマさん。ニャトルにコゲクロさんを影に入れた俺たち。
これから案内を受けて、怪しい奴らがいるという場所に連れていかれやがります。
怖いよー。嫌だよー。
しかし俺はその怖さを紛らわすため、ある物を異界召喚で呼び出したのです。
「そいつはな……伝統的なコソ泥アイテム。身に着けたらどう見ても怪しいのに身に着けてしまう
不思議道具。風呂敷というとんでもないアイテムだ!」
「ニャガ!? 風呂敷……変な名前ニャ」
「うむ! その名前の由来は諸説ある! だがあえて言おう! 風呂に纏わりそう以外どうでも
いいと!」
「本当にどうでもいいニャ……」
「おいお前ら。さっさと歩け」
「はい……」
宿から外に出ても真っ暗なんです。怖いよー。
しかしニャトルには見えているのか、ニャトルが先頭を進みます。
時折怖い笑い声が聞こえてくるんです。
ウキョキョだのウキャキャだの。確実に嫌がらせです。精神を追い込んでくるぅ!
しばらく左や前や右と、見えない洞窟をドンドンしながら進む気分で歩くと……「おいここだ。
止まってそのまま待ってな。明かりをつけるはずだぜ」とコゲクロさんが言ってます。
明かり、着くの? だったら最初からランタンでも出せばよかったよ! ちくせう。
それだとばれちゃうかぁ……うん? 本当に誰か来たようです。
あれは、人? どうやら集団ですね。うわぁ……ツルツル頭にいかにもって傷跡がついてる。
あれじゃピカっと光る頭技は放てそうにないや。磨かれてないし。
え? 違う? はい。ちゃんと確認します。
傷頭さん以外にも七人くらい人がいます。こいつら全員悪い奴に違いありません。
だってどこかしらに傷があるんですもの。刀傷みたいなのが。
しかも一つ二つじゃありません。いっぱいです。
全員悪そうーーな顔してます。仲間の印なのか、紫の手ぬぐいみたいなのをどこかに巻いてますね。
「これで全部か」
「ああ。後はシローネだな」
「うん? 誰かいるような気配がするぜ……誰だ! そこにいるのは!」
うそぉ!? かなり離れてるのに気付かれた!? どどど、どうしよう。
明かりをこっちに照らしてくる! まずい、見つかった!?
「ニャー」
「ワン」
「何だ犬と猫か。ほれほれ、こっち来い。餌やるぞ」
「そんな事してねえで、さっさと確認しろ」
「わーったよ……間違いねえ。一致する。気の毒だねえ。精神支配ってのは」
「まぁ、家督争いで殺し合いになるよりはいいんだろ。ったく。ぽんぽんガキ作りやがって。
後先考えて作れって話だ。こっちは儲かるからいいけどよ」
「ここなら幸せに暮らせるだろ。妙な争いに巻き込まれずな。学校つったってどうせ終わっても
後目は継げねえんだ。ここで楽しく影たちと暮らせ」
そう言い残して去っていく怖いおじさんたち……残されていたのは、男の子二人、女の子二人。
よかった、人身売買とかの類じゃ無さそうだ。でも精神支配とか物騒な事言ってたなぁ。
「おいニャトル。どうだ? あいつらどっかいったか?」
「行ったみたいニャ。どう見てもニャトルたちが勝てる相手じゃないニャ」
「おいお前ら。あいつら倒さなくてもいいのか?」
「俺たちなら倒せると思うぞ。相手じゃないな」
「うーん。見るからに悪者だけど、その人たちに危害は加えて無いようだったし……証拠も
無く攻撃するのは良くないと思うのです。彼らを確認してみましょう」
「無駄だと思うぞ。ここに連れてこられた奴はみんな、ポカーンとして動かないんだ。
宿屋のあいつと同じように」
「それでもです。他のクロネ族の方たちに、彼らを宿屋まで運ぶようお願い出来ませんか?」
「いいけどよ。お前ら物好きだなぁ」
「ここで捨ててくわけにもいかないでしょう。そもそも暗くて俺にはよくわからないんですから」
「そんじゃ俺とコゲクロで運ぶわ。二匹運ぶのはやり辛いけど、出来ないわけじゃない」
「まじですか!? 便利だ……」
俺とニャトルから飛び出た彼らは、横たわってる人たちの影に入り込む。
成程、そうやって運ぶんですね……影の手に引っ張られて……首根っこ掴まれてずりずりと
……お洋服、破れないかなぁ?
「ニャトル、あいつらの特徴覚えたか?」
「ハゲ頭だったニャ」
「それから?」
「傷顔だったニャ」
「それでそれで?」
「傷兄貴だったニャ」
「……お前、目良くても全然見えて無いな!」
「ニャガ!? そういうシロンはちゃんと見てたニャガ?」
「当たり前だ! 何せあいつらは……紫の手ぬぐいを付けてた! あいつらは紫巾の乱を起こす
つもりだ! きっと首謀者は大賢良師張角に違いない!」
「ニャ!? 犯人までわかったニャ?」
「いや、全然違うし適当だけど」
「ニャガ……期待したニャトルが馬鹿だったニャ」
「まぁニャトルは馬鹿なわけだが……」
「おいお前ら……本当に良く喋るが、喋ってる場合じゃなくなったぜ」
え? どういうことでしょう?
「おいおい。本当に犬と猫が喋ってるぜ。あれと同じか? 少しおかしいと思って、離れて
様子を見てたらよ……」
「こいつはまずいな。召喚獣じゃねえか? こいつら」
「喋る召喚獣なんて聞いた事ねえぞ」
ま、まずいですぅ!
犬猫のふりしてやり過ごそうとしてたのに!
こいつはピンチです!
囲まれた!