辺境伯の依頼
辺境伯邸でお食事を頂いた俺たちご一行。
質素だと聞いていたのですが、素材の味わいが実に楽しめました。
ふっふっふ、こう見えても前世の国は世界最高峰の食へのこだわりがない国。
あらゆる料理を堪能できる数少ない国なので、こういった質素なものも実は多くあるんですよ!
だからこそなのか……どうにも足りないものを感じます。
贅沢いうなって? そういうことではありません。
食事を入れている器の方に違和感を感じるのです。
俺が前足で餌入れをかつかつやっていると、勘違いしたのかご主人が
追加で食べ物をとってくれました。
違うんです! 気になるのよこれが!
でも今はあまり話せる雰囲気ではありません。かなり真面目な話をしている
ようなのです。俺と……魚を夢中で食べてるニャトルは放置され、会食から
会議のように変貌しております。
「ギルド所属なら知ってるかもしれんが、最近フィラデルフィアも治安が荒れていてな。
私兵だけでは手に余るようになってきた。それでギルドへ大量依頼を
追加しているところだが……ギルドも人手不足のようで困っておるんだ」
「大学から優秀そうなのを引っ張ってきたらどうかしら?」
「そいつは難しいな。ギルド登録で認定されんだろう?」
「どうかしらね。リバティベルでの登録ってそんなに難しいのかしら」
「それに相手は盗賊なんかも混じってる。下手すりゃ命を落とすかもしれんのに
学生をギルド所属にするのは気が引けるからな……うちの娘程の腕前を持つやつもそうはおらんだろうし」
「父上、買いかぶりですよ。それと私もサルサさんの言う通り、学生の力を使うのは
ありだと思っています」
「しかしなぁ……」
ううむ、話を聞いてると口出ししたくなる。
少しだけ……提案してみようかな!
「あのー、ちょっとだけ提案してもいいでしょうか?」
「おお、シロン君。ウルフ……ウルフィだったな……である身でも、何かいい考えがあるのか?」
「シロンちゃんは凄いんですよ! きっと面白い事考えてくれるはずです!」
「まぁ……それと同じくらいくだらない事も考えるわね」
「ニャハハ。シロンが提案とは片腹痛いニャ……イタタタ! 尻尾を踏むニャ!」
「ボードを二つ用意して、学生専用の依頼とそうじゃない依頼を、リバティベルでボード事に分けてみては
どうですか? 勿論学生に任せていいかどうかの判別がつけられる人がいないと
できませんけど。それと例えば学割みたいな制度をつけて、生徒側へ利点があることも
説くんです。報酬もお金ってだけじゃなくて色々な形があるかなーと……あれ?」
ジェイフ卿は突然立ち上がり、怖い顔をして俺の前まで来ます。
はわわわ……やらかしてしまったのでしょうか!?
「いい案だ。ギルドに学生専用の依頼を設ける?
しかも学生への授業料割引制度? 功労者には表彰をしてもいいな。
こいつはいい。学生に金で雇われて仕事をさせるってのが本分に反すると思ったが、そうか、免除してやるって
手があったな。直ぐに手配しよう。依頼の選別は娘に任せるとして……うむ、そうだな。
決めたぞ。シロン君。学生となり、依頼第一号をこなしてもらいたい。
これは辺境伯ジェイフによる直接の依頼。発案者自らお手本になってくれんかね?」
「ええ!? でも俺はフィラデルフィア大学の学生じゃないですよ?」
「うむ。その件だが……君たちをフィラデルフィアの学生に任命する。
報酬は入学費用の負担と、長期滞在許可証。それに辺境伯へいつでも会える印もやろう」
「最後のはあんまり、いらないかなー……」
「うん? これをつけてるだけで、門番が私の許まで案内してくれる。遠慮せず
毎日来てくれても構わんからな」
なんか無理やり変なものを渡されました……会いに行く度にお鬚チクチク攻撃をされそうで
嫌なんですけど……。
「依頼内容は何ですニャ?」
「次号へ続く!」
「こいついっつも引っ張るニャ!」
「何だそんなに尻尾を引っ張って欲しいのか?」
「ニャー? やめるニャ! フシャー!」
「引っかかれた! けど続くよ!」