やっぱ気になるじゃないですか
俺たちは鍛冶の親方たちにお礼を言って、初級鍛冶の場所を去った。
製作エリアであまり時間を取ると、他を回れなくなる。
そう考えて次に行くことも視野に入れたのですが、どうしても行きたい製作場所が二つありました。
それは……「魔工、魔付与製作。この二つはどうしても見てみたいです!」
「そうね。それは私の魔術にも関与する事だから行きましょう。ただし、その二つを見たら今度こそ
魔術エリアに行くわよ」
「もちろんです! そっちは俺も興味があるところなので」
サルサさんに連れられて、魔工授業初級の教室へ向かいました。
どうやらこちらの校舎はあいうえお順にきちんと振り分けられており、迷わないよう教室のところに
やたらとでかく【魔工初級】などと書かれた看板がありました。
これだけ科目が多いと間違えやすいからなのかな?
「まずは魔工ね。失礼しまーす」
「……」
「何か真剣に作っていますね」
「……! ……」
「こちらをちょっとだけ見て驚いた人がいるけど、気にせずそのまま作ってるわね……」
どうやら魔工とは、鍛冶などで製作したいわゆる製作用の道具……フライヤーとか包丁とか
を、魔術付与に適した形状に変化させる工程……つまり……地味! なやつでした。
しかしこの地味な作業が実はすごく大事。
単純に包丁を魔術付与して炎吹き出す包丁にしたとします。
これは調整が効かずに、言うなればアブリガツオを包丁一本でやろうとすると、カツオのこんがり焼きに
なってしまう。
この調整を行えるようにする機能を付けるのが魔工。
地味!
しかしこの地味なものこそ至高な職人技が光るが影が薄くて評価されないやつ。
無くなったら商品が終わるのに、理解されず給料が安いポジション!
歪んだ社会だと製作者がいなくなるところ!
「あの、給料は大丈夫ですか?」
「……!!!」
「あ……ショック受けてるわ、この人」
「……教師の……ローノだ。給料は……安い……」
「あふん。確信をついてしまいました……ってあれ、チャチャがいるぞ?」
「ようやく気付いたちゃ! 無視され続けたらどうしようと思ったちゃ!」
「それじゃそういうことで。次行きましょう」
「ちょっと待つちゃ! 魔工は大事ちゃ!」
「大事なのはわかりますよ? でも俺のワンハンドじゃ魔工は無理でしょう」
「犬が……喋った……」
「あ、それはもういいです」
「……そうか……」
暗そうな教員の影響もあって、魔工初級の教室にはチャチャ以外誰もいません。
先生はどうやら鍛冶用のハンマーの魔工を行っているようで、じっくり見てみる事にしました。
「このハンマーは魔工を行う事によってどうなるんですか?」
「……熱しながら叩けるようになる。調整が悪いと火力が強すぎたり、弱すぎたりして
使い物にならん……」
「それは便利ですね。毎回熱入れをする手間が省けると」
「……耐久付与を行う際の、別金属をハンマーから注ぎながら、金属合成も行えるようになる……」
「それも凄い! ……しかし地味だ……」
「……ああ。地味だが、必要だ……」
やはり縁の下の力持ち的な存在。
しかしこれは提携と発案次第で実にいいものが作れそうです。
「先生。もし俺が入学したら、提携してください。良い物が作れそうです」
「仕事の依頼……か。俺に依頼してくるものは……殆どいない。物によるが、いいだろう……」
「俺の名前はシロンです。ローノ先生、覚えておいてくださいね!」
「犬のシロン……わかった」
「犬じゃないです! 俺はウルフィ! ウルフィのシロンです!」
俺の事をまったく詮索しないこの先生。
ちょっと気に入りました!
「次は魔付与ね」
「さっさと行きましょう」
「ちゃちゃを置いていくなちゃ! 出番がないちゃ!」