おら、死んじまっただ?
……ふああ。ふわふわする。
あーあ、絶対これ死んだあとだ。
だってこの感覚。最初にご主人と会った時と同じだし。
でも仕方ないか。あの状況なら。
あいつら強かったなー。今まで対峙した相手で一番強かったかも。
このまま先に進んでいればいずれ死んじゃっただろうし?
早いか遅いかの違いです。うんうん。
それにしても、あんまり痛くなかった。
「……みぃ」
「何でだろう……血はいっぱいでたのに。血があるって痛いはずだよね……」
うーん、考えてもよくわからないや。
それで俺、どうなったんだろう?
お墓に埋められたのかな。
そもそも召喚獣って死んだらどうなるんだろう?
封印に戻るんじゃないのかな?
わからないや。
それでも……「ふああ、何でこんなに眠いんだ……血がいっぱい抜けたからなのかなぁ」
「……。……深淵の神々による祝福により、汝新たなる姿を映し出さん。
我はうみみゃ。汝の想いを受け入れ、革新的種族へ導かん。革新進化でふみぃ」
「へ? ふみぃ?」
慌てて眠い目をごしごしして目を見開く。一瞬だけうみみゃが見えた気がした。
しかし再び景色が暗転して俺の意識は強烈な睡魔へと誘われた。
「うーん…t」
「シロンちゃん! シロンちゃん! しっかりして! シロンちゃん!」
ぽたぽたと何かが体にかかった気がした。
でも俺は眠い。ひたすらに眠い。
「なんで……治癒はしたのに赤いまんまよ。どうして? ルビー、召喚に戻せないの?」
「だめなの……! だめなの、できないの! どうしよう! どうしようシロンちゃん死んじゃう!
どうしよう!」
「落ち着いてくださいルビーさん。息はちゃんとしてます。それに、さっきより随分と表情が和らいだようです」
「お、おいシロン悪ふざけはやめるニャ。ニャトルを庇って死ぬなんて許さないニャ!」
「起きて欲しいサ。シロンを守れなければ侍の名折れサ」
「こんな傷で倒れるなんてだめな奴ちゃ。でも猫を庇うなんて男気があるちゃ。ちょっと見直した
ちゃ」
「ううーん。うるさいぞぉ愚民どもぉ。俺は天下を取る信長の化身……すやすや」
「こいつ、何言ってるにゃ?」
「何か、平気みたいね……心配して損したわよ」
「よかった……でもなんで赤色のこれ、取れないの?」
「……もしかしてシロンさん、レベルが上がってたから進化したのでは?」
『へ?』
「あーー! こいつずるっこしたニャ! ずるっこレベルアップしたに違いないニャ!」
「そういえばやたらとシャキーンしてましたね……」
「つまり、進化したお陰で生きながらえたって事?」
「何ちゃ。そんなポンポン進化する生物だったちゃ?」
皆少し怪訝そうな顔でシロンを覗き見る。
若干舌なめずりをしているシロン。美味しいものを食べてる夢でも見ているのだろうか。
「うーん苦しゅうないぞー。信長にパンを持ってくるのだー……うむぅ、金平糖パンでよいぞー」
「……寝ぼけながら命令してる……」
「金平糖パンって何よ。金平糖パンて。気になるじゃないの」
「うふふっ……本当に心配したんだからっ。帰ったら鑑定してみましょう」
「やれやれちゃ。それじゃ先にギルドへ行って報酬を受け取るちゃ」
こうして無事タコーザスの依頼を終えた一行。
報酬を受け取ると、宿へと戻っていくのであった。