作戦決行! 密猟者退治開始!
「準備はいいか、みんな!」
しかし返事は無かった。当然です。シロンは一人別行動。現在は穴の開いた小樽の中です。
そこら中に樽が置いてあり、樽の中で独り言を呟いたわけです。まさにX。
既に作戦は始まっています。緊張するぅー!
暫くして、喧噪が聞こえてきました。遠いですがシロンは耳がよく聞こえるのです。
これはウルフィの能力なのか!?
「ちっ、いきなり封鎖しやがって。聞いてねえぞ」
「さすがに密漁がばれてきたんじゃないっすかねえ。そろそろ足を洗った方が……」
「ばかいってんじゃねえ! こんなボロい商売他にあるか? 海のものは俺たちのもの。
そうだろ?」
「へへ、ちげぇねぇ。あの巨大タコ野郎が邪魔でいまいちよくとれねえが、取っちまえば
高く売れるからな」
「それに密漁なんて後ろめたいいわれをされる覚えもねえな。なんで国なんぞに偉そうに
禁止されにゃならんのよ。世界のものはみんな平等だろうがよ」
「一部の利権者が牛耳って贅沢を貪ってるだけの世の中っすもんね。
生まれが悪いってだけでゴミみたいな扱いしかされねえ」
「そうだぜ、俺たちゃ義賊ってわけよ。それじゃ今日もがっぽりいくぜ。南には
タコ野郎が見える。北から漁を開始するぞ」
うーん。聞かなければよかったなぁ。いくつかは納得いく部分もあるけど
全然ダメな部分もある。
けれど話し合いで解決できる内容じゃなさそうだ。
やっぱりきっちりこらしめて、真面目に働くように誘導してやらないと。
生まれた瞬間から皆平等なら、争いなんて起こりませんもんね。
でもそれは、海を荒らしていい理由にはなりません!
海で暮らす方たちの事を少しは考えさせてやるとしましょう。
「ぐわーーー! 何だこれは。ねばねばする! くせぇ!」
「がぁっ! 足に何か絡みついて取れない。そしてくせぇ!」
「目に何か入りやがった! 目が辛い! そしてくせぇ!」
「おい落ち着け! しかりし……ギャー、なんだこの網は!」
お、早速始まったようです。中さんの罠が炸裂しているようだ。
そしてくせぇ! が気になるところですが、一体何の罠を貼ったのか。
そろそろ出てもいいかな。といっても俺は人型じゃないから、犬が一匹転がり込んだ程度に
しか思われない気もします。
小樽をかぶったまま前進です。
樽には目の穴が開いていて、足が出るアレな樽です。
これ、一度やってみたかったんです! 俺は見事樽を演じきってみせる!
「くそ、罠を設置してやがるとは。港の管理人の仕業か? 先に行くぞボケ共!」
「おめえらもちゃんと罠ほどいて後から来いよ!」
「ちょ、置いてかないでくれよ! くせぇ!」
「待ってくれーー! くせぇ!」
「なんなんだ、この罠は。これも売れるんじゃねーか? ……しかしくせぇ!」
ふむふむ。罠に引っかかった奴が三人。置いて行って走っていくやつが一、二……七人かな。
全部で十人の密猟者か。これはなかなかの団体さん。
三人も退治できるとはお手柄ですね。
「閃光の如き電よ。万物を貫く雷撃となれ! コボルト!」
「何? ぐわぁーー! ……」
「閃光の如き電よ。万物を貫く雷撃となれ! コボルト!」
「お、おい! しっかり……」
「閃光の如き電よ。万物を貫く雷撃となれ! コボルト!」
「くせぇ! ……」
【シャキーン】
【シャキーン】
よし、これで三人退治し終わりました。レベルも二つあがったよ!
人型は経験値が多いのかな?
先に進んだ七人を追いかけなければ……うん?
「くさい! これは、まるでドリアンの匂い!」