ようこそリヴァティベルへ!
ギルドの扉を開くわれら一同。といっても今日のメンバーは犬猫召魔地雷です。
後の二人は一足先に装備を整えに行きました。
「ようこそ! リヴァティベルへ! さぁさぁ受付へどうぞ! 見たところ魔術師かしら?
それとも召喚士様? それともそれとも戦士様ですか?」
「わわっ。近い、近い!」
「あら、ホワイトウルフ? それじゃ駆け出し召喚士かしら。なんだつまらないの」
「俺はハンディウルファイヤのシロンだ! そんじょそこらのホワイトウルフと一緒にされては
困るな!」
「まったく。見る目がないニャ。これだから素人は困るニャ」
「な、なななな。ホワイトウルフが喋った!? 信じられない! 着ぐるみですか?」
案内役っぽい人物が腰を抜かす。
ご主人は駆け出し召喚士には違いないが、つまらない呼ばわりされて黙っているシロンではないのです。
「私は駆け出しじゃないわ。ルビーは駆け出しだけど二匹召喚獣を出しっぱなしにできる逸材よ?
甘く見ないで欲しいわね」
サルサさんがそう告げると、周りにざわざわという声が聞こえ始める。
効いてるみたいよ? いいぞサルサさん!
「永続召喚の使い手ですか!? 凄い! 失礼しました! それにどっちも喋ってる……一体
どうなってるのかしら。報告は来ていないし……あ、申し遅れました。案内役のベンジャミンと
申します。お仕事、お探しですか?」
「まずは届け物依頼の終了報告。はいこれ。ショートの町の魔術師ギルドから親書よ」
「あら! 皆さまショートの町からいらっしゃったんですか? 依頼の達成報告はあちらで
お受けいたしますね!」
奥へ案内されると、お金を沢山処理している女性三人が目に入る。
随分と大金を数えているように見えるけど、あんなに堂々と大金を見せていて平気なのかな?
そう考えていたら、何も見えないところをこんこんと叩くベンジャミンさん。あれ、透明の壁?
ノックに気づいた店員一人がカウンターの一部分を指でなぞる。
「はいこれ。親書よ。受付の紙はこっち」
「はい確かに。こちらにサインを。 代金はギルドカードに入れておきますね」
「お願いするわ。もっと早くあちこちギルドカード払いできるようにならないの?」
「すみません。まだまだ時間がかかりそうで。受け入れてもらえないんですよ」
おお、キャッシュレス決済!? 異世界でも進行してるんですね!
いや、進行していないのか。これも世界共通なんですねわかります。
「あのー。召喚士ギルドの親書もこちらですか?」
「ええ。同じ場所でお願いしております」
「支払い場所は一つにまとめる。実に理にかなってるじゃないですか」
「あら。こちらのウルフィ? さんは賢いんですのね」
「シロンが賢い? お姉さん傑作! ……だニャ」
「微妙に普通の喋り方へ戻るのはやめろ」
ショートの町で受けた依頼などを終わらせると、リヴァティベルでの依頼書に目を通し始めるご主人。
サルサさんはベンジャミンさんにタコーザスの事を聞いてくれているようだ。
俺は暇なので、リヴァティベル内をぐるりと回ってみることにした。
すると……たれ耳の少女っぽいぬいぐるみに目が止まる。
はて、何だろう? 妖精をかたどったぬいぐるみかな?
それにしては随分とよくできています。二足歩行形態だし。
背丈は俺と大差ないくらいしかない。つまり足が短い。
ほっぺもぷにぷに。服は綺麗。髪はサラサラな黒色。ヒゲが三本ずつ。
お目目パッチリでなかなか可愛いぬいぐるみだ。うんうん。
「おいお前。どういうつもりちゃ。人を散々見て顔を触ってそのまま何も言わず行くつもりちゃ?」
「あれ。ニャトル何か言ったか?」
遠くにいるニャトル。あれ? おかしいな。今のニャトルの声っぽかったのに。
首を傾げながらご主人の許へ戻ろうとする俺。
しかし尻尾に激痛が走る!
「いだだだだーーー! 尻尾、尻尾ちぎれるぅ!」
「だから、何も言わずにいくつもりちゃ。失礼な奴ちゃ。こうしてやるちゃ」
「ニャじゃなくてちゃだった! ぬいぐるみじゃなかったー!」