フィラデルフィアに到着なのです
退屈な船旅は三日程続いた。道中、チャチャさんに新しく雷混の腕輪を改良してもらった。
機能がグレードアップしたんじゃなくて、新しい効果が増えたよ! その名も雷混の腕輪ツー!
安直ですって? だって覚えやすいじゃないですかー!
道中はそれ以外にも釣りを楽しんだりするご主人たちを眺めていた。
シロンも釣りがしたい! とは思いませんでした。お魚はヌルヌルしてるのでちょっと苦手なのです。
しかしニャトルは違った。早く釣ってくれるようせかすニャトル。
こいつはやっぱり猫だな。
そして――――「港、港が見えますよ! ご主人!」
「やっと着いたね。遠かったー。あれがフィラデルフィアの町かぁ……どんなところなんだろう」
「きっと大きな大学や時計塔なんかがあるに違いないです!」
「あら、なんであんたそんな事知ってるの? 私話したっけ?」
「へ? 適当に言っただけなんですけど」
「大当たりよ。あそこは大きな学校、フィラデルバニアット大学とフィア=フィラーという
卒業生が立てた大きな時計を模した灯台があるの。ほら、ここから見えるでしょ?」
「ちょっとずつ、かすってたんですね。おおー、本当に大きな時計です!」
「学校は行ってみたいサ。剣を学ぶ学校とかもあるサ?」
「それはどうかしらね。私も学校には行った事がないの」
「地雷フィーさんもここは初めてですか?」
「初めてです! わくわくしますね!」
「わくわく地雷をぶちかましそうで怖いので、出来る限り大人しくしててください」
「なんでー!」
「さて、着いたらまた新しい冒険の始まりだね! うふふっ」
「うふふってあんた、いきなり冒険に出てどーすんのよ! まずは宿をとって食べ物を確保して情報収集。
それからギルドの依頼をこなす。冒険はそれからでしょ、まったくもう」
「えへへ……サルサがいるからその辺は大丈夫かなって」
ご主人は本当に鉄砲玉娘です。たいていのことは忘れていきそうなので、サルサさんがいないと
とても困ります。俺が人間だったらもう少ししっかりさせてやるんだけどな!
港に到着すると、ゴロウマルさんは直ぐに違う場所へ走り出した。
乗っていた謎のお爺さんに手を振って別れを告げる。
あの人はどこまで行くんだろう? いつか、また会うのかな?
ついに到着した新天地に足を踏み入れるシロン。ショートの町もなかなか大きかったけど、ここ
フィラデルフィアという町はもっと大きそう。
潮風が心地よく、空には……空には何か変な生物が飛んでいます。空を見るのはやめにします。
そして、到着してすぐのことでした。道中まったくでなかったクラーケンらしきものがザプゥーンと
直ぐ真後ろに現れたのです!
「うわああーーー! クラーケン、クラーケン出たー! 早く逃げましょう!」
「おいこら犬。誰がクラーケンだって? 見ての通りタコーザスだろ俺はよ」
「タコとか大嘘ついてます。いいから早く逃げましょう!」
「待てっておい。撤回しないと暴れるぞ?」
「すみませんでした! 撤回します! 立派なタコさん!」
「わかりゃいいってことよ。ほんでおめーら、ここ着いたばかりだろ? ってことはあれだ、通行料
まだ払ってないよな」
「通行料? そんなの必要ないでしょ」
「あるわ! 誰のお陰で無事航行できたと思ってんだ?」
「襲われたよ? サハギン二匹に」
「なんだと? ……ああ、あのぼんくらどもか。悪い、ありゃ管轄外だわ」
「それじゃ、そういうことで」
「ちょい待ち! 暴れるぞ!」
「あんた、結局暴れたいだけなんじゃ……」
「何言ってやがる。タコにはタコの流儀ってのがあるんだよ。お前らがこのまま行くってんなら
この港を大津波が襲う。それはお前らのせいだ。それが嫌なら……後はわかるな」
「では失礼して」
「おい待て、こら!」
変なのに絡まれた。どうしよう……こまっタコまった……。
と口に出すと世界が凍るので真剣に考える事にします!
無事に町へ入れるのかな?
「ちゃんちゃん」
「おい、後わかってるよな」