地水船って何ですか?
「スピーゴラァスピーゴラァ」
「……うーん。寝苦しい」
「スピーゴラァスピーゴラァ」
「はっ!? 寝苦しいと思ったらお前のせいか、キノコ! こいついつも
寝てるな。何しにきたんだろー?」
「スピー……わいは勇者になるんや……ゴラァ」
このキノコ、とんでもない野望を持ってました。
確か冒険がどうのとかいってたのに船には乗らないようだし、このまま
置いて行っていいのでしょうか?
「シロンちゃーん……もうちょっと寝てようよー……」
「ご主人は相変わらず朝が弱いですね。パン屋さんは早起きなんですよ! ブルルルルー」
「ニャフーニャ……朝っぱらからうるさいニャ。ニャトルはもうひと眠りするニャ……」
「そういえばカエサルさんとチャチャ、それにサルサさんに、地雷フィーさんは?」
「朝早くから出かけたよぉ……おやすみぃ……」
そう言ってまた眠るご主人。仕方ない、もう少し休んで英気を養うとしますか。
――――「ちょっとあんたたち! いつまで寝てるのよ! 人がせっかく船手配してきたってのに!」
「うーん、後五分……」
「シロン! あんたが一番寝坊助ね!」
「……何か凄く心外な事を言われたようなぁ……おはようございます……ふああ」
「うふふ。シロンちゃんたら」
「まったく困ったやつニャ」
あれ、おかしいな。俺が真っ先に起きたはずなのに! 解せぬぅ!
寝ぼけた目をこすると、全員宿屋に戻ってました。
ルビーご一行様は完全に寝起きです。ぐぬぅ。
「サルサさん、船の手配ってここは港町じゃないですよね?」
「当たり前でしょ。地水船の手配をしたのよ」
「地水船? 何ですかその奇天烈そうな名前の船は」
「そっか、あんた見たことないんだったわね。地上と水場を走れる船よ。
定期的にこの町から出てるの。いい速度が出るのよ。ギルドに所属していないと
乗れないけどね」
「むぅ、そうするとカエサルさんは乗れない……?」
「平気サ。剣士ギルドに登録してきたサ。怖がられたサ……」
「そ、そうね。少しだけ引かれてたわね。気にしちゃだめよカエサル」
「そうするサ。剣の腕は認めてもらえたサ」
「チャチャさんと地雷フィーさんは?」
「買い出しよ。長旅になるもの。チャチャは便利な収納道具をもってるし、ラフィーは
ああ見えて面白い術が使えるのよ」
「自爆術でしょう。メガブフォンテとか使うに違いありません」
「何よその物騒な名前。あの子は天候を変える術が使えるの。貴重なのよ」
「ええ!? 地雷フィーさんが天候を変える? またまたー、はっはっは。
あれ……本当なんですか?」
「本当よ。だからあの子がいて助かる事もあるのよ。一応、多分、もしかしたら……」
「全然自信ないんですね。でも地雷麦粉は高く売れましたよ。魔物がなぜか寄ってくる粉に
なりましたけど」
「……やっぱ恐ろしい子ね」
「恐ろしい子です」
サルサさんと二人、ふぅーとため息をつく。
始まっていない旅なのに、違う意味で終わりが見えそうです!
宿屋を出る身支度を整えると、長らくお世話になった宿屋の女将さんに礼を告げた。
ここのごはん、美味しかったです!
そして我々はいよいよ新天地へ。ヴィーヴィルさんにゴラァンタを託して。
「のろも後から行くかもしれないのろー。ここの生活に飽きたら向かうのろー」
「その時は歓迎しますよヴィーヴィルさん!」
別れは惜しまない。きっと……いや間違いなくまた近いうちに会える予感がします。
既に俺とヴィーヴィルさんはマブダチなのです。
「そういえばニャトル。後でハラペーニャ呼び出してくれよ。パンで手名付けるから」
「そういえばそんな奴いたニャ。すっかり忘れてたニャ」
この後の道中きっと、魔族の力も必要! 準備は万全にしておくものなのです。