異世界パン作り第一歩だのろー
宿屋に戻って来た俺たちご一向様。助さん、角さん。たまにはゆるりと休みなさい。
そう言ってくれるご主人に期待して見てみるが、抱きあげられてもふもふされただけだった。
違う! そうじゃないよー!
「ご主人! 降ろしてください! これからシロンは大切な約束が!」
「あら! シロンちゃん、レベル上げね!?」
「違いまーす! 今帰って来たばかりでしょう? 戦いから離れてください。戦士にも休息は必要なのです。
さぁヴィーヴィルさん。やるとしましょう。やるのろー!」
「のろー。何するのろー」
「ずこーっ。覚えてないんですね……」
「シロンがまたおかしなことを始めるつもりニャ。ニャトルは草臥れたから寝るとするニャ」
「お前はだーってなさい。というかお前、宝石鑑定してもらっただけだろ! その宝石加工して
装飾品にするんじゃなかったのか?」
「えー、やってもー、いいよー。ジャーゴン、するー?」
「ちょっと待ちなさい。どうせならルビー、あんたの戦力強化用に使いなさいよ」
「ニャ!? それはニャトルのニャ!」
「あんた、それどうやって使うつもりなの?」
「首につけて飾るニャ」
「それで?」
「おしまいニャ」
「……キラキラしたのって、モンスターに狙われるのよねぇ……」
「ニャ!?」
「なるほど、こいつぁーデコイになりそうです。ぜひ首にくくりつけてやりましょう!」
「にゃ、にゃっぱりやめようかニゃー……」
「この宝石については私たちでやっておくから。シロンは美味しい物作ってくれるんでしょ」
「そうでした! それではそちらはお任せします。調理場を借りに行きましょう、ヴィーヴィルさん!」
「行くのろー」
「あーー、待ってくださぁーい! 料理なら私も手伝いますー!」
勝手についてくる地雷フィーさん。なぜだろう、ついてくるというフレーズを聞くだけで地雷を
踏んづけた気分になります。
「いいけどさ。自爆はしないでね! ご主人、銀貨を少しもらいますよー。お金を渡さないと小麦も
くれないと思うので!」
「うん! 何ができるか楽しみにしてるね! うふふっ」
銀貨を首から巻いた袋に入れてもらい、部屋を後にする。
といっても調理場なんてすぐそこだけどね!
おばちゃんがいたので、小麦を買わせてもらった。案外よさげな小麦だぞ?
「ではヴィーヴィルさん、お願いします!」
「のろー。こんな感じのろー?」
小麦を引く道具……石臼になってもらいました! 少し調整して……と。
これでごりごりひき潰すわけです。レッツトライ!
石臼くらい召喚できないのかって? こんな大きい質量のもの、絶対召喚できません。
ようやく召喚できるもののコツがわかってきたのです。
それは……またのお楽しみ!
それでは早速石臼を引きます!
下に粉が出てくるので、ちゃんと回収できるようにしておくね!
「地雷フィーさん。石臼ヴィーヴィルさんをしっかりおさえていてくださいね。いくぜワンハンド!」
ごりごりーと削れていき……ついに、ついにー! 小麦粉が出来ていきます。
「面白いですー! 私も回してみたいですー!」
「ええ!? ちょっと、抑えててくださいよ!」
じっとしていられない地雷フィーさん。仕方ない、回すのを交代しよう。
「大体わかったのろ。抑えて無くても平気のろー」
「凄い! 一家に一台ヴィーヴィルさん! 今後も一つよろしくね!」
「任せるのろー」
やはりここは……出、地雷フィーさん、求、ヴィーヴィルさんや!
変なキノコや奇天烈な猫を出してもいい。
そーいやコテコテ弁キノコ、どこいったんや? まぁいいか、コテコテだし。
「よーし、順調に小麦粉ができています! うまくやってくださいよ、地雷フィーさん!」
びびりながらも地雷フィーさんに気合を入れるシロンでした。