やったぜ六人パーティ
「ここ……は?」
「あーーー、やっちまったやっちまった。巻き込まれたー!」
「はい?」
「……確実に初心者ダンジョンじゃないわね」
「あらあら、大丈夫かしら」
「これはもしかして……ニャトルのせいニャ?」
ダンジョンと言えば聞こえはいいが、ここはどうみても。
猫。
そう、たった一言でいうなら猫っぽいダンジョン。
「お前、ニャをつけたな! ニャ初心者ダンジョンだぞ、ここは」
「ニャ初心者ダンジョンって何? 何が違うの? 何なの?」
「知らないわよ! そんなダンジョン聞いたことないわ!」
「やだ、ちょっと可愛いかも。こういうダンジョンなら怖くないかも?」
「楽しそう! ねぇねぇ早くいこー!」
「待ってくださいご主人どう考えても危険ですって!」
「あーー、一緒に連れてかれたからハラペーニャ様帰れないぞ、突破しないと」
「ふむ。つまり今の構成は獣猫腹魔魔召ですな成程」
「腹ってなんだ。ハラペーニャ様は魔族だぞ」
「魔族と魔術師って名前被るんですよねー。何かいい言い回し考えるまでは腹にします」
「ハラペーニャ様は喰魔だからな。喰う事が専門だ。モンスターも喰うぞ」
「なんですと? 俺は食べても美味しくないです! ついでに言うと美味しいものを
いつか作れるようになります!」
「ホワイトウルフなんてまずくて食えないぜ。それよりさっさとここ、クリアするぞ」
「喰魔ってどんなことができるの? 私興味ある!」
「ん? 喰魔ってのはな……」
どうやらハラペーニャ曰く喰魔というのは、喰ったものをエネルギーに変えて
放出したり、その喰ったものによって色んなものを生み出したりする魔族らしい。
面白そうだけど食べつくされたら食費がやばいね!
「へぇ。そこまで自分の事を話す魔族は初めてかも。本当だったらだけど」
「疑りぶかいやつだな。ハラペーニャ様は嘘なんてつかないぞ」
「どうかしら。魔族をそう簡単に人族が信用できないのは知ってるでしょ?」
「知らないぜ。ハラペーニャ様は天涯孤独だからな」
「まぁ今は信用してもいいんじゃないですか? この先五人だと不安ですし」
「そうね。それじゃいってみよー! おー!」
「あんたは本当能天気ね……シロン、ニャトル。出来る限り前行ってよね!
私らが先に倒れたら戦えないでしょ?」
「それはそうなんですが、凄いモンスターとか出たらどうしよう……」
一歩ずつかみしめて進みたいよー……と思っていたらずんずん進む
奴が一人いた。ハラペーニャである。
「さっさと行って帰るぞー。どうせ大したダンジョンじゃないぜ?」
そう言いながら大股で歩いていく。ダンジョンというだけあって岩っぽい外壁……といいたかったけど
外壁は毛で覆われている。
地面ももふもふふわふわしており、なかなかの毛並みだ。
心なしか眠りを誘うようなこのもふ触りが歩くと少々癖になる。
「ハラペーニャさんだけずんずん進んでるけど、今のところモンスターみたいなのはいないですね」
「初心者ダンジョンにくるはずだったから、変なのが出るよりはいいわね。このまま何事もなく
突破して、もう一度入りなおしたいところだけど……」
「あのー、あれがモンスターじゃないですか?」
猫の落書きみたいなひょろっひょろのモンスター? が目の前にいた。
「ニァガ!」
「ニャ」
「ニァガ!」
「ニャ!」
「おいばかやめろ。挑発してどうする! あれはきっとニャって必死に言ってるんだよ!]
「ニァガ!」
謎のヒョロ型猫もどきが襲ってきた!
「まずいです。何の準備もしていないのにニャトルが挑発しました!」
「おかしいニャ! なんでハラペーニャはあれを無視して進んでるニャ?」
「食べ物に見えないんじゃないか? どう見てもヒョロッヒョロだし」
「あいつも使えない奴だったニャ! よーしシロン行けニャ!」
「えー。あんなのとどう戦えっていうんだ!」
「ニァガッ!」
ヒョロ猫はヒョロヒョロと走って爪で襲いかかってきた! ……フラフラ何ですけど。
「ていっ」
「ニャガッ!?」
「えいっ」
「ニャガガッ……」
「おなか空いててろくに動けないって感じね……」
「も、もしかしてあいつ自身が腹減ってるとろくなダンジョンが出来ないんじゃ……」
「それだ! だからあんなにヒョロヒョロのモンスターなんだわ!」
「それってつまり、お宝や経験は期待できないってこと?」
「このパーティはほぼ地雷しかいない気がしてきたよ……」
このまま進むときっと、宝箱までヒョロいに違いない。
そしてあっという間にハラペーニャだけ見えなくなった。