必殺技の出番なのです!
怒れるブルースは空を飛びました。
ならば俺も……ネガティブ浮遊の開始です!
「あー、後ろめたい。後ろめたいよー」
会場は両方飛んで大盛り上がりなのに、なんでしょう。この背徳感。
空を飛ぶことが悪くて悪くて仕方のないことのように感じます。
「いっけー、シロンちゃーん! ドラゴンやっつけろー!」
「それ、負けるフラグのやつだから! いくぞブルース!」
「グオオオオオオ!」
ブルースの羽ばたきが徐々に強くなり、闘技場に突風を生みました!
すごいです、グルグルと見えるような風ですよ何あれ!
洗濯物がすごく乾きそう! しかも五つ!?
『これはなんて強力なトルネードだーー! 会場の皆さん、大切なものが吹き飛ばされないよう気を付けて下さいねー!』
「ああ、買ったばかりの私の本がーー!」
「私のもーー! ちょっと! まだ読んでないのに!」
「本ー、本はいりませんですかミャンー?」
「今なら飛ばされた人は十%引きだニャン」
あいつら、こんな時にブルースの技を利用して商売してるぅー!
暴風を見てホノミィの奴が騒ぎ立て始めました。
「ちょっと、どーすんのよあんな強い風起こされてたら火使えないわよ!」
「確かにかき消されちゃうかも。ここは一つ新たな俺の能力を実権してみるか……」
暴風を避け背徳感に包まれながら、未知数の能力、ソールイーターを試してみることにしました。
なぜマーニの方じゃないか。それはお月様が出ていないからです。
きっとソールイーターは太陽にちなんだ技に違いないのです!
「いくぞブルース! ソールイーター発動だぁーー!」
といつものように魔珠を消費する感覚が……あり過ぎて俺は真っ逆さまに落下しそうになりました。
これは魔珠を大量消費したためでしょうか。
ですが、俺にはもっとびっくりすることが起こっていました。
『こ、これは……シロン選手の全身が……まるで卵の黄身をぬりたくったかのように真っ黄色です!』
おいなんていう表現してるのさ!
でもそうなんです。金色とまでは言わないのですが、まるで燃え滾る太陽のような色に全身の毛色が変貌したのです!
そしてみなぎる力……これはまさに太陽そのもの。
ソールイーター。太陽を食らうもの、ですか。
自身が太陽と同等程度の能力を有するんでしょうか?
よく分かりませんが、落下して地面付近だったので、試しに地面を蹴ってみました。
「ひょえっ!?」
『シロン選手飛ん……ええーーーっ! どこまで飛ぶんですかシロン選手ー!』
「うそ。何あの跳躍。信じらんない」
俺は軽くピョンとジャンプする程度だと思ったんですよ。
そしたらですよ? 雲にまで届きました。
空の上は涼しくて心地いいですね。
でもね、こんなに飛んだら着地すると足の骨、折れません?
「うそおーーー! はっ!? こんなときこそ浮遊……ああ、後ろめたい……」
「いーやーー! どんだけ飛んでんのよバカバカ! でもあんたのこの状態いいかも。燃えちゃう? 一緒に燃えて攻撃しちゃう?」
「よし、やってみるか!」
「シュボッ!」
「よーしって熱い! 熱い!」
あれぇー。太陽なのに熱いんですけど。
燃えてるわけじゃないのかな。
力だけ暴走してるのかも。
だとしたらまずいです! 魔珠が切れたら違う意味で燃え尽きる!?
「どうしよ! もうあれだ、当たる。 当たるえーと投げ当たる!? ええっと体から当たる! 当るから……必殺、丸くなってボーン!」
「いーやー! 技名ふわっとしてるいーやーーー!」
「グオオ……?」
俺は丸まって体当たりすることにしました。
だってとっさに浮かばないんだもん!
この状態で何が出来るのかも分からないんだもん!
しかし……これが当たりだったようです!
すごい勢いで俺の丸まってボーンを食らったブルースは、ひゅるひゅると落下していくじゃありませんか!
そして俺もひゅるひゅると落下していくじゃありませんか!
「目が回ったぁー」
「私もーー」
「ブルース! なんという攻撃力。あれは終末の炎か!? あのブルースが一撃で!」
「シロンちゃーん! そのまま落ちたら場外だよーーー!」
「ふぇっ!? とどまれれれれーーーああ、罪悪感で目が回って後ろめたい……」
どうにか気合で空中をキープ。ぐらぐらしながら闘技場舞台まで戻れました。
落下したブルースも……起き上がってきます!
ちくせうさすがドラゴン。
俺の渾身の丸くなってボーンでも倒せないなんて。
だが、効果は抜群だったようです。
「よし来いー第二ラウンドだー、目が回るぅー……」
「グルオオオオオオ!」
「ブルース! ダメだ! それ以上はよせ! 審判、私の負けだ」
『な、なんと!? カインド選手、本気ですか?』
「ああ本気だ。これ以上ブルースを戦わせたくない。十分だ」
えーっと目が回っているのでよく分かりません。
どうなっているのでしょう? 世界はメリーゴーランドで満たされている……。
『勝者、ルビニーラ選手と召喚獣シロン! 驚きです。あのカインド選手が敗北を宣言しました!』
「もうダメだわん……あれ、小さくなった?」
魔珠を使い果たしたせいなのか。
それともソールイーターの後遺症なのか。
俺は元の小型ウルフィに戻っていました。
そうそう、この愛くるしい大きさこそシロンなのです。
でも、本当に勝っちゃったー!?
「……何あの技。信じられないんだけど」
「見てましたかサルサさん! あれがソールイーターというやつらしいです!」
「上手く使えてなかったわよね。魔珠を消費して魔珠を体に取り巻くような技かしら。あの黄色い卵の黄身のような色のオーラ。飛ばせるんじゃない?」
「卵の黄身じゃないやい。黄金色ですから! あれこそ太陽の力なんです。よく分からないけど、きっとそう!」
「ふーん。別にいいけど。案外ホノミィが役に立ってたわね」
「そういえばあいつも進化したんでしょうか?」
「契約者の能力が上がったから強くなったんでしょ。それにしてもカインドはなぜブルースを止めたのかしらね」
「竜ってもしかして……変身するんですか?」
「そういえば! そんな竜がいるって聞いたことあるわ。あのまま戦ってたら変身してすごいことになってたのかも!」
「くっ……でも俺は勝った! 勝ちました! 竜に!」
「なんて技で倒したの?」
「……丸くなってボーン」
ううーん、ふわっとした名前!
ジャジャン拳よりふわっとしてる!
本日は一話のみの更新となります。
現在新作プロットを進行中!