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シロンがワンと吠えりゃそーりゃサァサァサァ

「ワオーーーーーン!」

「お、おい! 見ろ! 面白犬じゃないぞ、あれ!」

「な、なに? あの大きいもふもふは……触りたい」

「審判! 替え玉だー!」

『皆様、お静かに、お静かに! 替え玉というのは召喚獣ではあり得ません! ルビニーラ選手ご本人かどうかの再確認を……マイクマイク、はい、黒百合様』

『何を言うておるんじゃ! どこからどうみてもシロンじゃろうが! あの憎ったらしい顔をよく見るのじゃ! にしても大きくなったのう……シロン、早く終わらせてもふもふさせるんじゃあぞー!』

「た、確かにあの顔。少し間が抜けている……」


 誰の顔が間抜けですって!? こうなったらもっと騒がしくして注目の的になってやろうじゃありませんか。習得技、騒音発動だわん! 


「ワオン!」

『あほいそーれサァサァサァ!』


 ん? 俺が吠えたら会場全ての皆さんが掛け声をかけた? これが騒音の影響でしょうか? 

 よしもう一回やってみよう。


「ワオン!」

『あほいそーれサァサァサァ!』

「はい、ワオン!」

『あほいそーれサァサァサァ!』

「もいっちょ、ワオン!」

『あほいそーれサァサァサァ!』

「って何回やってんのよ! いい加減にしなさい!」


 サルサさんのナイス突っ込みが飛んできました。

 これは魔珠を消費するようですが、俺の遠吠えが五倍くらい大きくなって周囲に響き渡り、周りを騒がせる技でしょうか。これは俺向きの技のようです! 

 ……でも終わった後は会場が静まりかえりました。


『シロンの奴、随分面白い能力を手に入れたようじゃのう……周囲強制型音波攻撃の類かのう?』

「あの、マイク返してもらっていいですか黒百合さん」


 静かになったのはいいんですが……正面に立っていたカインドさんという竜使いまでサァサァ言っていたような気がします。人間に効果が高い技なのかな。

 カインドさんはまだ竜を出していません。

 さぁ、来るか!? 


「気を取り直して……ラールル、ラールル、ラールルーラー」


 クールな声でつぶやくカインド。

 黒いマゲを結う長髪スタイルに杖を持ち、羽織りものも高そう。

 顔は普通ですが、竜使い、名誉もある彼はモテモテです。

 犬の俺とはモテるジャンルが違うところを見せてやりますわん! 

 ――呼び出された青い竜は超巨大な印象だったのですが……あれ? 

 自分の二倍くらいの大きさに見えます。

 相手の竜は首が長く、目は青いです。

 以前までの俺ならひっくり返って降伏ポーズをしていたかもしれません。

 でも、なぜだろう? あんまり怖く感じない? いえ、コワイデスよ? 

 ブレスとか、爪とか牙とか。しかし大きさは……そんなに負けてない! 


「場内が静まりかえったところでカインド選手も竜を出しました! 今大会では対戦相手が棄権の連続。さぞ暇をもて余していたことでしょう。カインド選手の助手はご本人の意向でおりません。相棒ブルースが人見知りだから……だそうです!」


 あいつはブルースって言うんですね。青いからですか? 

 これは俺とブルース、カインドとご主人の一騎打ちになりそうです。

 サルサさんは……あー! 俺が作ったポテチを食べてる! 

 おやつ用にピザミャンに預けておいたのに! 

 出すなって言っておいたのにー! 


「がんばれ―シローン。賞金を早く貢ぎなさいー」

「あんたー! お手付きしたのわざとだろー!」

「何のことかしら。ほら、もうすぐ始まるわよ」


 再びくるっとブルースの方を振り向きます。

 よし、ここは一つ目を見て睨みつけてやる。ガルルルー。

 ……あれ、そっぽ向かれた。

 もう一度目線の前に行って、ガルルルー。

 ……あれ、またそっぽ向かれた。

 

「……ブルースは人見知りなんだ。あまりやると最初から全力で襲われるよ、わんちゃん。君に一言伝えたかったんだ」

「なんですか!? これから戦うってときに!」

「……あのグルグルダンス、私も踊りたかった……今度教えて欲しい」

「今そんなこと言うんかーい! ていうかそれ死亡フラグ的なやつじゃないですかぁー!」

「それはないそれはない。私のブルースが負けるなんてあり得ないよ」

「ええっと、カインドさんでしたっけ。この子が怪我をしても恨むなよー!」

「えっ!?」

『さぁいよいよ始まりです! バトルオリンピア最終戦! ブルードラゴンのブルース対……ホワイトウルフの……』

「じゃから違う! ホワイトウルフィ、しかも神獣進化しおったんじゃ、あいつは」

『神獣? 白い神狼ですか……それならこのキャットマイルド、あえてこう呼ばせてもらいましょう! 白神狼(ハクシンロウ)のシロン! では……試合開始!』



「もう! そこで終わりにしちゃだめじゃない!」

「ちくせう、カインドの奴バカにしやがって……でも、竜、コワイデス」

「あんた、その体格で縮こまったらいじめられて悲しそうにする犬みたいになっちゃうでしょ。しっかりして!」

「それは確かに嫌です。シロンは可愛い犬でした。雨で長く散歩に行けない日はいつも悲しそうな声を上げて……シローーーン!」

「あんたのことじゃない」

「うっ……サルサさんには分からないんだい」

「あら。私は分かっていることが一つあるわ」

「なんですか?」

「あんたは絶対勝つ!」

「おー! 俺はシロン。竜なんかに、竜なんかにー! やっぱり竜、コワイデス」

「はぁ……でも、もう引っ張れないわよ? 次の話は本格バトル。高みの見物してるから思い切り暴れてきなさい!」

『思い出した! 俺のポテチ返してーー!」


 いよいよ目玉の本格バトル開始です。

 お楽しみくださいー! 

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