口寄せって、恰好いいですよね?
『これは激しい攻防だぁー! 両陣営の召喚者、同士のデッドヒートが続いています! 傍観しているのは召喚獣のシロンと、ストーン選手側の助手だけ!』
どうも、シロンです。俺は今、バトルの真っ最中。
ニワトリを取り巻く攻防を傍観しています。
対戦相手の召喚者は、サルサさんたちの連携魔法に合わせて、強力な土魔法でそれを防ぎました。
その土台の上に乗って俺を見下ろそうとしていたニワトリに、さらなるサルサさんの魔法が飛来します。
それをさらに土魔法で防いで、さらにその上にニワトリが……。
繰り返したらあいつ、降りられないくらいの位置にまで行っちゃったんです。
「コケ……」
「お前あほだろ!」
『これはなんと! コッカトリスが降りられなくなっています! 作戦かあるいは失敗か。どちらにしろシロン選手、チャンスー!』
「全然チャンスじゃないよ! 俺だって攻撃届かないよ!」
「シロン。魔法が届かない位置まで行ったわ。あとは頼んだわよ」
「ゴーゴーシロンちゃーん!」
『ここで両陣営の魔法が止まりましたー!』
状況を悪くして丸投げ。
知ってますか? 戦いにおいて下と上、どっちが優位かを。
上なんですよね。
「コケッ」
「ふわわっ! このやろー!」
奴は土を足で削って俺へと降らせます。
そうなんです。上からは攻撃出来るんです。
下からは無理です。だって届かないもの。
「コケーー!」
調子に乗った奴はザクザクと俺へ土攻撃をしていきます。
さながら河原で上から石を投げるいじめっ子のソレですよ。
俺が攻撃範囲外であることを知ったサルサさんは、コッカトリスに向けじゃんじゃか魔法を飛ばしますが届きません。
「もういいわ! これでも食らいなさい! 集え、大気の熱よ。降り注ぐ炎となり我が仇敵を撃て! フレアフォール!」
「わっ。サルサ、それちょっと危ないよ!」
サルサさんは大魔法を詠唱しました。
それはリングの上に斜めに降り注ぐ炎の塊。
サルサさんは火、風、土魔法が得意なのですが、火を使っているのにはわけがあります。
俺もホノミィもモードは火なんですね。火には強い耐性があるらしいんです。
それで火ばっか使ってるんですけど、火って効果的ですけど狙いを定めるのが難しいんです。
だからね「俺を攻撃しないで下さいー!」
「いーやー! でもないかも。炎なら大歓迎! ルンルン」
「お前だけ燃えてくれてもいいよ? 降ってくる、降ってくる!」
コッカトリスには届かず、俺に直接降りかかります。
くそ、こうなったら……と異界召喚を行使しようとしたそのときです。
あっちの助手が初めて動きました。
幼女の時間です。
「口寄せ、外道丸」
「はい?」
空中に風神様のような姿の頭に一本角がある、狐目をした布衣娘が現れたんです。
そして、サルサさんの放った炎を打ち消しました。
なに、あれ?
ありですか? あれ。
『おーーっと! ここでなんと! ストーン選手の助手を務めている……これ、本名ですか? 第六天魔王さんが動きましたー! あれは召喚? 召喚が助手はちょっと困るんですが、資料によるとあれは口寄せ! 口寄せという術だそうです! セーフ!』
「いや、アウトだろー! 召喚と口寄せって何が違うの? 何も違わないよね? ていうかなんで俺を助けてるんですか!」
「コケー?」
「……今のは、フェアじゃないから」
「おい魔理。真面目にやれ。コッキーが二つの脳で悩んでるじゃないか」
「……でも、フェアじゃないから」
よく分からないけど助かりました。
クルッとサルサさんの方を振り向くと、サルサさんもクルッと首を横に向けました。
「シロンちゃーん! 大丈夫? ニャトルちゃんに代わる?」
「そうか、そうしましょう! 奴は空を飛びやがります。この状況でも戦えるはず!」
『これは、召喚チェンジのようです! この状況なら確かに召喚チェンジしやすい! これは明暗だー! というよりもストーン選手! 石化攻撃出来ない状況を自ら作ってどうするんだー!』
「ラールル、ラールル、ラールルーラー!」
「スー……ニャー……スー……ニャー」
『おーっとこれはニャトル選手。突然の登場にも関わらずうたた寝中です!』
「……燃え盛る大気よ。万物ありて彼の者の尻尾を燃やせ。リトルフレイム」
『助手のサルサ、召喚獣に対して小さい炎を放ちましたー!」
「ニャガーー!? 水、水ニャー! フー、フー……ニャ? もう出番ニャ?」
「コケー!」
「ニャガ。高みの見物されてるニャ。悔しいニャ。あいつを突き落としてニャトルがそっちでお昼寝ニャ。すー、にゃーー!」
ふぅ。突然のチェンジでしたが、ここからは少し見物です。
ニャトルのやつめ。爆睡してやがった。
空中に浮かんだニャトルを見て、コッカトリス……あいつはコッキーという名前らしいですが、首をかしげています。
それよりも口寄せされた奴です。
なんですか、あれは。意思を持つ人型のモンスターですか?
ふわふわと空中に浮いているように見えます。
悪魔とかそっちの類でしょうか。
でも、攻撃してきません。空中に浮かんだまま横向きになり、眠り始めました。戦力外!?
「あっ」
「コケーー!」
『なんと、ここでコッカトリスが動いた! 空中に浮かび上がったニャトル選手にジャンプして突撃爪攻撃だー! あの高さ、きっと空を飛ぶのでしょう!」
「ニャ?」
「コケ?」
「……あ、指示出してない」
「おいコッキーーーー!」
……コッカトリスのコッキー。
どうやら全然賢くないようです。
散々せり上がった土の上から、空に浮かんだニャトルに向けて急降下。
ニャトルはヒョイとかわすとコッキーは地面に激突して動かなくなりました。
その落ち方よ。
『これは大番狂わせだ! 試合はこれからというときに転落! 転落KOです! 勝者、ルビニーラ選手ー!』
「え? え? ニャトルちゃんがこれから戦うところなのに? 頑張ってコッカトリスちゃん! まだ戦えるよ! 続きをやろうよ!」
「あんたは鬼か! どう見ても再起不能よ!」
……あの。口寄せした人。出番が俺を救っただけなんですけど。
「ちょっと待って。二回戦すごく楽しそうな展開になりそうだったのに、あれでおしまいなの?」
「はい。戦闘は簡潔に。伸ばし過ぎずに。チャンチャンキーンで助さん角さん出して、もんどころをかざして平服させておしまいです。秒ですよ、秒。色気も何も必要ない!」
「もんどころって何かしら……それにしてもあの子、何者かしらね」
「第六天魔王とか呼ばれてましたけど、ほぼ出番がありませんでしたね。あとから出てくるのかな」
「作者のことだからきっとそうよ。勿体ぶっているんだわ」
「これでもう一勝すれば三位ですか。その次がドラゴン?」
「そうなるわね。まぁ私もまだまだ奥義は見せてないわよ」
「奥義? 奥義なんてあるんですか!? 新しい魔法少しだけ見せましたけど、あれは俺への攻撃ですよね?」
「ちょっとだけ手元が狂ったの。土魔法とは相性が悪いわね」
「ええ。それにしてもコッキー。石化のせの字も出せませんでしたね……」
「それはそうよ。石化したら本編進まないじゃない」
「攻撃手段って難しいなぁ……」
仰る通りです。漫画とは違うのだよ、シロン君!
ではまた来週ー!