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143/159

初戦の相手はプレーリードッグという犬ではないやつでした

 そこからしばらくはご主人に封印されておりました。

 そして俺とニャトルは今真剣勝負をしているのです! 


「最初は」

「ニャー!」

「じゃなーい! グーだって言ってんだろ何回目だと思ってんだこれ!」

「ニャガ? グーだったニャ? シロンはパーしか出せないニャ?」

「そうそう、俺はパーだけ出すからお前はチョキを出せいいな」

「分かったニャ。もう一度いくニャ」

「最初は」

「ニャー!」

「お前ちょっと来い」

「ニャガガガ。口を引っ張るニャ!」

「もうさー。ホノミィが相槌してあげるからそれでやってよねー」

「よし分かった。いくぞ! 最初は」

「いーやー!}

「じゃんけんって進まないからポイ!」


 俺は華麗にパーを出しました。

 そしてニャトルはグーです。

 俺たちの前足でチョキは無理でした。

 つまりグーとパーしか出せないんですね。

 

「ニャガ……負けたニャガ……どうしてニャガ?」

「ふぁーっはっはっは! これで初戦はお前の出番ということだ。ニャトルよ」

「ほらほらー。もう始まるみたいよ。ホノミィだってゆっくり休みたいんだから」


 外からの熱気あふれる声に後押しされるように、ついに俺たちの召喚バトルが始まろうとしています。


『ご来場の皆様、お待たせしました! デモンストレーションで目立ちに目立ったあの召喚使い、ルビニーラ選手がシードで初の登場です! 対戦相手は初戦を秒殺で終わらせたマード商会の娘、マードラちゃんです。これは美少女対決だぁー! さぁ早速お二人には召喚獣一匹を召喚してもらいましょう!」

『ラールル、ラールル、ラールルーラー!』

「可愛いぞー! 最高だー!」

「私だって十年若いころはああだったのよ!」

「これだけでもチケット代安く感じるぜ……」


 ウルフガングシュナイダーとポコさん、どこにいったんですか? 

 そんな客の声援を浴びながら登場する……俺? 

 ちょっと! せっかくじゃんけんで勝ったのに何で俺なんですかご主人! 


「ここはニャトルの出番でしょう、ご主人!」

「う? だってあの子の召喚獣、じーっとシロンちゃんを見てたからきっと好きなんだろうなって。でも、頑張ってねシロンちゃん! ドラゴンとの戦闘前はちゃんと休ませるから!」

「それまで連戦させるつもりですか! 一度休んだだけじゃばてちまいますよ!」

「んー、それじゃ二戦前まで?」


 く……ご主人は俺を殺る気満々のようです。

 しかし俺らには算段がある。俺が二回活躍して三回目でニャトルが勝つ。

 それから負ければ問題ないわけです。

 俺がニャトルより一回活躍したことになるね! 


「仕方ありません。修行の成果、見せつけてやりますよ!」


 ぴょいとリングに昇ってブルブルと尻尾を振ります。

 頭の上には寝に入ったホノミィもいます。

 おい起きろ! 寝てるばやいか! 

 相手が呼び出したのは、デモンストレーションのときにいたあいつです。

 こちらをとても睨んでいます。

 近くで見ると結構つぶらな瞳です。

 そして俺と体格は五分五分。

 しかしあえて言いましょう。

 こいつは俺の相手になりませんね! 

 蹂躙して終わらせてやりますよ! ガルルルー。


「両者激しく睨み合いが続いています! 開始前から戦闘が始まっている模様です。今にも爆発しそうです! それでは……試合開始!」

「ウギャアオーーーウウ!」

「ふん。獣風情が。それで突進してるつもりか。遅い遅い……い?」


 開始地点は距離があったと思ったんです。

 そしてやつは二本足立ちでてこてこと歩いていやがったのでばかにしてたんですよ。

 そしたらですね? 「シロン、何やってんの! 加速準備してるのよ! 避けなさい!」

「あひぃ!?」

 

 バカにしていた俺の眼前まで迫り、左前足で薙ぎ払う攻撃をしてきやがりました! 

 サルサさんの声を聴いて、慌ててバックステップを踏んだ俺。

 元居た場所を奴の鋭い前爪が空を切っていました。

 こいつ、危ないじゃないですかー! 

 今の移動でホノミィは目を覚ましたようです。


「いーやー!? なんであんたが戦ってるの? いーやー!」

「ちくせう。こいつの反応が普通過ぎて辛い。また来る!」


 先ほどと同じように二足歩行でとてとてしてやがります。

 仕方ない……「出でよ。板式ネズミ捕り!」


 ボトリと俺の前にビックリアイテムが落ちてきました。

 これは何を隠そう、伝説の道具です。

 こんなものどこの家に行っても見かけません。

 税込み六百十四円でした。

 そしてこれの仕様用途、それは……「さぁ来い!」

「ウギャアオーーーウウ!」

 

 俺の挑発に乗った奴は、今度は俺が逃げまいと正面から再び来たのです。

 バチィーンといい音がして、やつは片足をピョンピョンしてやがります。

 やったぜ! さぁ追撃の時間だ。

「いまだ、いけホノミィ!」

「いーやー!」

「……おいそこはノリノリで攻撃するところだよ?」

「いーやー! あの爪で追い回されるのいーやー!」


 そうこうしている間に奴は伝説のネズミ捕りから離脱してるじゃありませんか! 

 俺の六百十四円が! 無駄に終わっただと? 

 少し距離を離して冷静に周囲を観察します。

 そう、こんなときこそサルサさん! サルサさんが追撃を! 


「がんばれーシローン」

「……あの。援助を」

「プレリンがピンチなの。助けてアイシャ!」

「はぁーいー! 燃え盛る業火よ。かの者を消炭にしろ! フレイムフューリー!」


 突如巨大な炎の塊を俺の方へ放り投げる相手側の助手! 

 ちょっとダメよそれ! 大きい! リングいっぱいだよ! 燃えるよ! 

 俺ごと燃えるよー! と思ったら、プレーリードッグのやつが上空に水を噴出したじゃありませんか! 俺は奴の背後にぴったりとくっつきました。

 ふう。難を逃れた……残り火がバラバラと落ちていく様を、俺とプレーリードッグは前足で額をぬぐう姿勢で凌ぎきりました。

 さぁ、戦闘再開だ! 



「なかなかやるじゃない。あの助手」

「サルサさんは一体何をなさってるんですか?」

「大会にいろんな賞があるのよ。その金額を確かめているの」

「ええと……それはつまりサボリ……」

「あら。初戦から私の手の内を見せてしまったら、後々対策されてしまうじゃない? 一回戦目くらいはあんたの実力でさっと突破しないと。あっちはもう魔術を見せちゃってるけど、あんたはまだ、あんまり使えないような道具を一つ出しただけでしょう? もっとすごいの出せるってこと、知ってるのよ?」

「うーん。俺もですね、少し温存をしながら戦いたいというかですね。経験値を積みたい!」

「そういえば進化目前よね。戦闘中に進化が入ったらどうなるのかしら?」

「そのときはそのときで考えてありますから。しかし真面目なパートだなぁ。もっとギャグをふんだんに入れたいんですけど」

「デモンストレーションであんなことやっておいてよく言うわ……ま、精々頑張りなさい。うふふふ……輝いた助手で賞……これだわぁ……」


 欲望渦巻くサルサさん。

 ではまた来週! 


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