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バトルオリンピアいよいよ開幕? なのです! 

 対戦表を見ると、初戦の相手は恰好良い名前が書いてありました。

 これは偽名でしょうか? 

 ウルフガング・シュナイダーと書いてあります。

 そして助手にはポコと書いてありました。

 バトルオリンピアは勝ち上がり戦らしく、トーナメント形式ですね。

 俺はシードで一番端からです。黒百合様が言っていたカインドっていう選手とは最終戦まで絶対当らないです。

 少しホッとしました。その前に負ければこっちのもん! 

 

「なんか強そうな名前の相手ね」

「どんな人なんだろう? 黒先生知ってる?」

「知らんのう。わし、人の名前覚えるの苦手なんじゃよなぁ」

「そもそも自分の名前をどうして覚えてないんですか」

「名など大した意味をもたんじゃろう。異名であればそれは何かをなした結果じゃからな。わっはっはっはー!」

「わっはっはっはー……って。この辺からして黒百合様は異常です……」


 そもそも俺がつけたのも名前なんだよなぁ。

 案外親を嫌ってたとか、そんな感じでしょうか? 

 高笑いする黒百合様に抱き上げられると、そのまま外で本を売る作業をしているピザミャンとアベニャンの手伝いをさせられます。


「よーしシロンよ。お主の力で沢山売るのだぞ。お主が考えた物語を沢山作ったんじゃからな!」

「えっ? まさか俺たちが製本していたのは俺からありったけ搾り取った情報で作った本なんですか!?」

「ん? そうじゃ。わしが気に入ったからのう。特にほれ、不思議でない国のアビスとか、死んでるーわーとか、良かったのう。それとなんじゃっけか。ペスト? とかいう細菌の話も良かったぞ。あとは、あれじゃ、ネズミが主体の……」

「そっちはダメー! ちくせう。少し変えておいてよかった……」


 そうなんです。面白い話を聞かせろという黒百合様やサンブック王のために、俺はちょいちょい前世からの記憶を捻じ曲げた物語を聞かせていました。こいつらはどうやらそれを商品として売りやがろうとしていたんですね。

 だったら権利は俺のものじゃないの? 

 と言いたいがうーん。関わりたくありません。

 

「さぁ。宣伝用の道具を出すのだ!」

「うぐぐ……仕方ありません。出でよ拡声器!」


 ぽとりと落ちる、学校でよく先生が使うやつ。

 町中は祭り状態なので、これだけ渡してその場を退散しました。

 本を一冊見ると、著、ウルフィのシロンとちゃんと書かれていました。

 ――そして翌朝。

 どうやら本はあっという間に売れたようで、ほくほく顔のピザミャンとアベニャンがお金を少し分けてくれました。

 でも、今日は大会当日なのでお金を使う時間はありません。

 

「預かっといてくれよ」

「仕方ないニャン。シロン用と書いた袋にいれてしまっておいてやるニャン」

「今日は大会ミャン。いっぱい稼げるといいミャン」

「お前ら大会中も売るつもりか! サンブック王が喜んでくれるならそれでいいけど」

「この便利道具はどうするニャン?」

「お前らにやるけど、もう手伝わないからな。俺は自分の修行に忙しいんだい。次の進化どうするか考えてるんだ」

「フェンリルになるとか言ってたミャン?」

「フミィってやつにそれは無理と言われたときに備えて違うのも考えてるの。段階がどうとか言ってくるし。ニャトルはおかしな進化してるし。うーん」

「だったら……でどうミャン?」

「ほう。それはなかなか面白い考えだ。覚えておく」

「シロンちゃーん。もう行くよー。早くー。最初はシロンちゃんもニャトルちゃんもしまっていかないといけないんだからー」

「はーい。今行きますー」


 ご主人は着付けのため違う部屋にいたので、扉が開くまで待っていました。

 今日のご主人はノーメイクではありません。

 普段一切メイクをしないご主人ですが、今日は完全メイクの超絶美少女をうたっていくのです。

 黒百合様の弟子、鮮烈なデビューの幕開け! そして当然それを飾るのはこの俺、シロン! 


「ルールル、ルルル、ルールルー」

「ろーとせいやーくー。はい、真面目な方!」

「うふふっ。ラールル、ラールル、ラールルーラー……」


 ご主人は片足立ちで両手を水平にしてそう唱えると、俺とニャトルが亜空間へと吸い込まれました。

 おかしな空間ですが快適です。


「久々に来たニャ」

「ここって時間の流れ早いんだろ?」

「それはご主人がバグらせていただけらしいニャ。黒百合様が元に戻したニャ。なんなら声も聞こえるニャ。こっちの声は聞こえないニャ」

「へー。お前詳しいな」

「逃げたらここに放り込まれたニャ……」

「お、おう。俺たちにドラゴンから逃げる術はないが、負けてしまえばいいのだよ。ふっふっふ」

「さすがシロンはずる賢いニャ。でも直ぐ負けたら黒百合の奴に縛り上げられるニャ……」

「うむ。そのため俺たちは決勝の一歩手前で負ける! いいな」

「そうするニャ。それで十分成果を出したことになるニャ!」


 ニャトルと二匹であくどい笑いを響かせます。

 ――いよいよ大会が始まるようで、外から賑やかな音が聴こえてきました。


「おお、今回は美少女が沢山いるぞー! がんばれー! やっぱり召喚士は美少女に限るぜー!」

「はぁーん。カインド様。しびれるぅー!」

「あっちの姉ちゃんも可愛いぞ。俺はあの姉ちゃんに賭けるぜ!」

「大会もいいけど買っちゃった本、面白そうなのよねぇ……」


 口々にいろんな声が聴こえます。

 俺としてはさっさと対戦相手を確認したいのですが、選手数名ずつのデモンストレーションが行われる予定なんです。

 俺とニャトル、格好よく飛び出してやりますよ! 



「良かったわねシロン。大活躍できそうじゃない」

「お家に帰りたい……俺は実は上がり性なんです!」

「なに、似つかわしくないこと言ってるの? あんた直ぐ目立つじゃない」

「目立ちたくてやってるんじゃないやい! しかも今回、ギャグパートが少ないです……」

「私としては大会開始まで行くと思ってたんだけどね」

「うっ……それはそう。途中のピザミャンたちの本売りシーンとかいるぅー?」

「何か考えがあるのよ、きっとそう」

「ううーん。怪しい……」

「でも、ようやく私も来週から出番が増えるのね! 思い切りかましてやるわ!」

「ダメですよサルサさん。最初からあんまり手の内見せたら。一生懸命考えてるんですからね!」

「いいじゃない。いきなりドカンが読者の好みでしょ?」

「ちっがーう! 読者様は、読者様は……じっくり物語を読みたい!」

「おかしいわね。いきなりバハムートが出てきてメガフレアで滅茶苦茶にするのが流行ってるって聞いたわよ?」

「シーッ。それ、作品のダメ出し食らってるやつだからー!」


 ……はい、来週もお楽しみに! 

 

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