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新章!? お散歩ウルフィちゃん

 木漏れ日の差すこの素晴らしき日に祝福を――。

 そんな素敵な言葉が聞こえてきそうなある日のこと。

 尻尾を振りながら陽気に歩く白い毛玉がいました。

 その毛玉の足は短く、体には奇妙な赤色模様も混じっています。

 その傍らには猫がいます。

 珍妙な仮面をつけたその猫は、大きな帽子を被り、隣の白い毛玉と足並みを揃えて歩いています。

 彼らの足取りは軽やかに、それでいて慎重に一歩ずつ前へ前へと運ばれているのでした。


「シーローンーーちゃーーん!」

「まずい、気づかれたぞ!」

「早く逃げるニャ! 捕まったら一巻の終わりニャ!」

「どーこーーだーー!」

「急げ。あっちの茂みに隠れるぞ」

「そうするニャ……へ、へ、へ、ヘプニャンゴロニャーダ!」

「独特なくしゃみしてる場合か! ……はわわ、来たー!」

「みーつーけーたー! 新しいお洋服、絶対着せるんだからね!」


 どうも、シロンです。

 大変ご無沙汰しております。

 我々が黒百合様に連れ去られてから二年の歳月が経過したようです。

 時が流れるのは早いものですね。

 あれからというもの、ご主人は修行に修行を重ね、今では立派なご主人になった……と言っておきましょう。

 そして我々二匹も立派な召喚獣になった……と言っておきましょう。


「捕まえた! んんー! 二人とも、日向ぼっこしてたでしょう。お日様のいい香りがするー!」

「鼻水をこすりつけるのは止めてほしいのです! せっかく毛づくろいしたのにー!」

「こ、こんな服絶対着ないニャ! ニャトルが女の子っていってもスカートを猫に着せるのはおかしいニャ!」

「う? じゃあズボンがいいの?」

「そういうことじゃないニャー!」


 ご主人の性格は相変わらず変わっていません。

 そして、この猫がアホ猫であることも変わりません。

 現在ご主人は暇なときに裁縫をするという趣味を持ちました。

 着せる対象は俺とニャトル、たまにローノ先生とホノミィにもです。


「えへへ。シロンちゃんには、ジャーン!」


 どぎつい赤色のリボンを広げて見せるご主人。

 目がキラキラしています。


「あのー。リボンは俺には似合わないかと……」

「尻尾につけるんだよ。待っててね」

「いえ待ちませんて! 尻尾にリボンなんてつけたらホノミィの奴に笑われますから!」

「ホノちゃんなら出かけたよ? ローノ先生と一緒に採取してくるって」

「ちっ。あの野郎、自分が巻き込まれないように逃げやがった……」

「ずるっこなやつニャ……それで黒百合のやつはどうしたニャ?」

「黒先生はサルサを連れて買い物に行ってるよー。アベニャンとピザミャンは城にいるけど」


 アベニャンとピザミャン。

 この二名は、これから連れ戻される城にいた、珍妙な新キャラペアです。

 姿はどっちも本に手足が生え、本の表紙に落書きが書いてあるような顔をしたやつらなんです。

 つまりギャグキャラってやつなので細かい説明は、今はいいわけですね。ふふん。


 そう、二年前……俺たちはここへ連れ去られました。

 黒百合様の力は偉大過ぎたんです。

 世界五本指に入る実力者。

 それはとんでもないやつだったわけで。

 そして気に入られた俺とニャトルは、びしばしとしごかれました。

 しかしレベルは互いに上がったものの、ここから先の進化は果たしていません。

 なぜかって? さぁー……もうじきじゃないですかね。

 良く分からないけど、きっとそう。

 そんな言葉が聞こえてきそうです。

 さて、俺たちの今いる場所から説明しましょう。


 黒百合様にさらわれた場所は、決して黒百合様の城ではありません。

 彼女の知人である、サンブックさんという逆さまに読んでもサンブックさんじゃない? っていう方のお城です。

 そしてこいつも名前の通り見た目が本です。

 いや、もう少し偉そうなヒゲが生えた本です。

 最初見たときは目を丸くしました。

 本がしゃべってるんですから。

 本がしゃべってるんですから! 

 大事なことなので二回言いました。

 普通、本はしゃべりませんよね。

 デイジー図書ですか? そうですか? と言いたくなりました。

 そしてアベニャンとピザミャンはお抱えの大臣というか変な奴らです。

 それ以外にもヘンテコなのは多くいるのですが、今は割愛しましょう。

 そんな変わった城からなぜ俺たちが離脱していたのか。

 この城、日当たりが悪いんですよ。本は日焼けしますからね。だからなんでしょうね。

 俺もニャトルもお日様がないと毛が潤わないんですよ。

 だから定期的に抜け出して毛づくろいしているんです。

 そして今回は着ぐるみをさせようとするご主人から逃げていました。

 これが全てです。

 そして……「ご主人、出立はいつですか?」

「んっとねー。三日後だよ?」

「もうそんなに立つのかニャ。いよいよこの城ともおさらばできるニャ。清々するニャ」

「そんなこといってー。ここのご飯、好きだったでしょ?」

「ニャガ。まぁまぁだったニャ。でも魚料理が少ないニャ」

「これだから猫は。ここのパンは最高だっただろうが。誰が作ったと思ってんだ!」

「少なくともシロンじゃないことは確かニャ……」

「俺も作ったやいー! しかし今ごろ置いてかれたって地雷は泣き叫んでるんだろうなぁ」

「あいつのことニャ。絶対探し回ってるニャ……恐ろしいニャ」

「ラフィーならきっとまた会えるよ! さ、城に戻ろ?」

『はぁ……会いたくない』

 

 そしてあんまり城に戻りたくない。

 それは常に思っていることです。

 なぜなら……この城で必ずやらないといけないことがあるからです。

 それはね……。




「ついに始まったのね。新しい章!」

「まぁ、この物語に章なんてないんですけどね。なんならサルサさん、まだいませんけどね!」

「何言ってるのかしら。私はいつでもいるわ。存在感という形でね!」

「上手いこと言った!? 最近出番が少なめで、若干アピってますね」

「仕方ないじゃない。登場人物、随分増えたもの。大分蹴散らしてやったわ!」

「そんなサルサさんもあの場所に残ろうとしていたような……」

「気のせいよ。これでも新しい魔術、いっぱい覚えたのよ?」

「しーっ! それは読者さんに秘密なんですから! ということで……」

『再びウルフィちゃんをよろしく!』

「ちょっと待って。再びって言ったわね、私たち」

「ええ。言いました」

「でも、一週間しか経ってないわよね」

「何言ってるんですか。二年経ちましたよ?」

「読者は一週間しか経ってないわよ?」

「二年後のウルフィちゃんもよろしくね!」


 無理やり、押し通したー! 

 ということで、二年後スタートです! 作者も驚きの二年後スタート! 

 続くよ! 

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