知れ犬走ってチキチキバンバンレース!? なのです
「いよいよ始まるっちゃ、知れ犬走ってチキチキバンバンレース! ちゃちゃは司会の
ちゃちゃちゃ!」
「あんたね。語尾と名前が全部ちゃだから分かりづらいのよ。どっちかを改めなさいよね。そして私が司会のサルサよ。ギャラは金貨四枚。前払いでね」
「ガメツイちゃ……」
「それよりも! 司会なんだからさっさと状況説明しないと怒られるわよ」
「そうだったちゃ。今回のレース。学校中をぐるっと張り巡らされたレース場を走り、一早くゴールと描かれた場所まで先に戻って来た方の勝ちちゃ。途中には様々な障害物があるちゃ。そして勝った方には学校から特別な褒賞がでるちゃ!」
「ただの召喚獣対決からえらい方向に走ったわね……シロン、必ず勝つのよー!」
「それではレースの参加者を発表するちゃ! 第一のコース、あれは妖精!? はたまた精霊!? 速すぎて良く見えないちゃ! レジェンドフェアリーのフェリちゃん!」
「……! ……! ……!?」
「喋らないわね……いえ、喋る妖精の方が珍しいのよね」
「続いて第二のコース! 生意気な口を叩いたら右に出る者はいない!? 変な恰好で戻ってきたうっさい猫ちゃ! ニャトル!」
「ニャース卿と呼ぶニャ。この無礼者め! ニャゴハーッハッハッハッハ!」
「確かにどんどん面白い恰好になるわね、あの猫」
「第三のコース! 透明がかった馬ちゃ。ただそれだけで早くなったと思うなよ? 雰囲気先行のケルピー、ケルちゃん!」
「ヒヒーーーーーン!」
「……ええっと。どう考えても馬が有利よね、これ」
「第四のコース! ……何ちゃ!? 一匹だけおかしいちゃ! 何かにまたがってるちゃ! シロン、卑怯ちゃ!」
「クックック。俺がただレースに参加するとでも? このシロンの能力をもってすればレースなんてほほい
のほいだ!」
「それを言うならよよいのよいでしょ」
「ちょちょいのちょいちゃ!」
「あいつずるっこしてるニャ! ずっこいニャ! 変な乗り物乗ってるニャ!」
クックック。こんなこともあろうかと俺が異界召喚したもの……それは!
「こいつが伝説の乗り物、スケートボード! これさえあれば勝利は確実! 結構魔珠を使いました」
「いーやー! 嫌な予感しかしない、いーやー!」
「第五のコース! 空を飛ぶのは反則ちゃ! 地上を走る美魔女のちーちゃん!」
「黒百合様と呼んでも良いぞ。ただし呼び捨てにすることは許さんからな!」
『えっ』
「第六のコース! 走る突撃娘! その性格は天然危険生物ちゃ! 空気を読まない美少女、ルビニーラ!」
「……何で召喚主二人も参加してるわけ?」
「シロンちゃーん! ニャトルちゃーん! やっほー!」
「ご主人……相手にとって不足無し!」
「あの主人、絶対おかしいニャ……」
「ヒヒーン……」
「……!? ……? ……??」
「第七のコース! 目立たない教師ローノ! 無言過ぎて誰も……」
『参加すんな!』
「さすがに召喚獣バトルに関係ないので却下されたちゃ。他にもタダノゴリラさんと物体浮遊マギナ六十二号が参加予定だったちゃ」
「色々おかしいわよね? 物体浮遊マギナって何? 何処から出てきたの?」
「さてそれでは目玉コースの説明を少しするちゃ。まずは直進! 走って走って走り抜けると穴くぐりがあるちゃ」
「へぇ。そうすると馬が一強ってわけじゃ無さそうね」
「その穴をくぐると今度は火の砂場があるちゃ」
「うんうん。えっ?」
「さらにその次は氷の柱が沢山立っている滑る場所があるちゃ」
「えーっと……少し心配になってきたわ」
「そこから先はお楽しみちゃ!」
「ルビー、無事に帰って来るのよ!」
「空を飛び続けるのは禁止ちゃ! ジャンプするのは平気ちゃ! 能力も危険過ぎなければ使って良しちゃ。さぁ準備は良いちゃ? よーい……流星矢ちゃ!」
ちゃちゃの矢が俺たちのいた場所へ一斉に降り注ぎます!
それ合図じゃないから! 攻撃してるだけだからぁー!
「各選手一斉に飛び出したちゃ! 少し出遅れたのはシロンちゃ!」
「だって突っ込みいれてたもの。性分よね、仕方無いわ」
「先頭は予想通りケルちゃん! 速い、速いちゃー!」
「一直線に走るなら馬よ。当然でしょ? それにしても二番手がおかしいわ」
「ニャゴハーッハッハッハ! ぶち抜いてやるニャー!」
「ちゃ!? ニャトル選手、猛追を見せてるちゃ。あの猫あんなに早かったちゃ?」
「違うわ。ホースが馬に巻き付いてるもの」
「これはずるい! 開始前の仕込みちゃ! でも反則じゃないちゃ! それに続くようにフェリちゃん、そして黒百合様が続き、後方にシロンとルビー選手がいるちゃ!」
「そもそも何でルビーとあの人が参加してるわけ? 召喚チキチキ猛レースじゃないじゃない!」
「知らないちゃ。しかしシロンのヘンテコな乗り物は何ちゃ?」
「さぁ……なかなか便利そうな乗り物よね。でも、シロンが何度も落ちて
転んで少し可哀そうに見えて来たわ」
く、くそ……こんなはずでは! 人だった頃なら上に乗ってほいほいーって漕ぐだけでシャーっと進んで快適なのに!
脚か! 俺の脚が短いからかー!
だが、まだ魔珠はあります。考えろ、考えろー……。
「シロンちゃーーん! それ、私が乗りたいーーー!」
「そうだ! ご主人が俺を抱えてこいつに乗ってください!」
「うん! 行っくよーーシロンちゃーん!」
「おー! なのです!」
「何と! ここで召喚主と召喚獣コンビで移動を始めたちゃー! これはアリなのちゃ? あーりーなーのーちゃー! ちゃ!」
俺は負けない! このレースに勝って、そして……どうなる?
「それで始まっちゃったわけなんだけど。変なレース」
「そうですね……どうしてこうなったんでしょう?」
「あんたのせいじゃない? あんたが道に迷わなければこうはならなかったわよ」
「ですがサルサさん。俺には分かるんです。あの人……今後絶対着いて来ますよ?」
「そろそろ離脱しそうな仲間が多いじゃない?」
「不吉です! でも、それはそう」
「ということで私が一抜けかしらねー……」
「ダメです! ……ってもしかして少しいじけてます?」
「……何のことかしら」
サルサさんは抜けませんのでご安心を。
続くよ!