登場! 占い師のお婆さん!?
占いの家前でブツブツ話をしていたら……お店の人と思われる方に怒られてしまいました。
しかし姿が見えません。声はしたんだけどなー。
「わ、わんわん」
「……あれ、誰もいないねえ。おかしいのう」
「み、見えないのに声が聴こえるわ……」
「うん? 何だいこの犬の上に乗ってるものは」
「私は火炎妖精のホノミィ! ホノミィちゃんて呼んで!」
「おや妖精憑きの犬とは珍しいねえ。どれ……占星術、ヒミツノザレゴト!」
へっ? 何もない空間から本当に声だけ聞こえたかと思えば……きらきらとした綺麗な粉が俺の体に
振りかけられてきます。
何? 何されてるの? どうしちゃったの?
「綺麗ー、燃える炎がパチパチしてるみたい」
「物騒だぞ! あ……喋ってしまった」
「今、喋ったのかえ? どういうことじゃ……星の占いが出来ぬじゃと?」
「あのー、正体をばらしたのでそちらも正体をばらしてもらえませんか?」
喋っちゃったので覚悟を決めてペラペラと喋ってみせます。
一体何なんでしょう?
「館の中に入ることを認めてやろう。面白い客じゃのう」
「はあ……館……」
「ぼろい家ね」
「しーっ。こういうのが雰囲気があっていいって人もいるのですよ」
「ふぅーん」
占いの館というか家に入ると……よくあるアレがあります。
そう、玉です。
いかにも何かが見えて来そうなでっかいビー玉です。
これに何かが映し出されるなんて、よくある話。
「あれー、誰もいないなー。お婆さん、お婆さんはいませんかー?」
「誰がお婆さんじゃ! 失礼な犬っころじゃのう」
「え? ええーー?」
何と、驚くべきことに……玉が置いてあるテーブルの下からよいしょっと上がって来たのは少女のような
外見をした、お婆ちゃん言葉の女の子でした!
黒髪を一本でまとめたポニーテールにエプロンを着用したその姿。
「ああ、お手伝いさんまでいたんですね、これは失礼……それで声の主は?」
「だからわしじゃと言っておる。しかし本当に犬が喋っておるのう」
「本当にあなたが? ではこの占いの家……館もあなたの所有物?」
「そうじゃ。わしは占い師のちーちゃんじゃ」
「え? 占い師のじーちゃん?」
「……てめぇ次間違えたらその眉間に二つ穴が開くぞ」
「こええ! こええし喋り方が婆さん口調じゃなくなった!」
「何を言うておる。わしは昔からこういう喋り方でのう」
「そ、そうですか。それではちーちゃんさん我々はこれで」
この人は関わってはいけないに違いありません。
こうみえても忙しいのです、直ぐに……「まぁ待て。お主、只者じゃあるまい。その成りで人語を
理解し、妖精までつれておる。お主に興味が沸いてのう」
「いえ、ただの犬ですワン」
「ホノミィは火炎妖精よ。ただの妖精と違うんだから!」
「おいばかやめろ。興味を引かせるようなこと言うな」
「忙しいと申したが……どこに行くのかえ?」
「これからローノ先生にお届け物なんです」
「ほう、ローノとはあの変わり者の教師のことかえ。ますます興味が沸くのう」
「あのー、占いにはあんまり興味が無いので」
「わしはただの占い師ではない」
「ええまぁ。見た目が幼女で喋り方が婆さんで怒ると殺し系の方が普通なわけありません」
「分かっておるのう。それでじゃ。ちょいとお主に仕事を頼めないかと思うてのう」
「仕事は今さっき終えたトコなので! 本当にもういいので!」
「どうしても嫌と申すなら……ふむ、そうじゃのう。ローノの下に案内を頼めるかのう」
「まぁ、それくらいなら構わないですけど……」
「いーやー! だってあんた迷子じゃない、いーやー!」
「はっ!? そうでした。俺は道に迷ってここへ辿り着いたんでした」
「……お主、存外顔の通り間が抜けておるようじゃな。よかろう。わしが学校まで案内してやる」
「案内出来るならローノ先生の下へ案内しなくても……」
「あやつは喋らんじゃろ? お主がローノへ届け物があると聞いてのう。あやつと取引出来る
なら都合が良いと思ったんじゃ」
「ローノ先生は確かに無口ですけど、普通に喋りますよ?」
「ふむ……どちらにしろほら、早よう行くぞ!」
と言って俺にまたがる幼女Aもといちーちゃん。
あの、慣れ慣れ過ぎやしませんか?
それに俺は幼女を乗せて走る乗り物じゃなく、妖精を乗せて歩く犬でもないんです。
召喚獣のウルフィ! そう、俺は召喚獣なんです!
と言ってやりたかったのですが、殺し系は怖いので仕方なくそのまま歩きます。
思ったより軽いのでどうにか運べそう……ああ、フェンリルにでもなれたらよかったのになぁ。
そうだ! 次の進化で俺はフェンリルを目指そう!
ウルフィからの究極進化! フェンリル! いいですね! これだ!
レベルは二つ上がったけど、次の進化まではまだありそう。
はぁ……レベル上げがしたいのです。
「ええっとちーちゃんさん。一つお尋ねしたいのですが」
「なんじゃあ? 乗り心地は悪ぅ無いぞ?」
「いえ、乗り心地の話じゃなくて、なかなかレベルが上がらず、進化しても強くなれなくて。
何か良い方法はありませんか?」
「ふむ? ふむふむふむ? なんじゃあ、知りたいことがあったんじゃのう。うむ、教えてやら
なくなもい。ローノの下へ着いたら色々教えてやらんこともないがのぅ」
「ちょっとよっと。何で私がいない間に変なトコ行ってるの?」
「俺に言われましても……道に迷ったんです」
「犬生という道に迷ってるんだわ。ホノミィのように燃えて生きればいいのに」
「お前と話してたら変なトコ行ったんだよ! どーしましょう。殺し系の人、コワイデス」
「でも、見た感じ幼女なら平気じゃないの?」
「こういう人に限ってとんでもなかったりするんですよ! はぁ、俺の学園生活がまた一歩
おかしくなりそうです」
「そもそも召喚獣が学園満喫なんて出来るわけないでしょ!」
「ふぇーい。しょぼんなのです。いいのです、俺にはある計画がありますから。スライムを退治
して思いついたのです!」
「へぇ……それは何?」
「来週へ続く!」
「ちょ、ここでそれなの!?」
……今度はシロンに取られました。