ショートの町
「おーい着いたぞ」
ぐっすり眠ってたらショートの町に着いたみたい。
サルサさんと交代しながら走ったのかな。
なんか隣に変な帽子があるけど気にしない。
「ご主人、起きてください。ショートの町に着いたようですよ」
「もうちょっとー、ふわふわー……」
「いたたっ 毛を引っ張らないで! 抜けたら大変です!」
寝ぼけてるご主人の膝をコツコツと叩いて起こした。
まだ寝ぼけているようだ。
頼れる護衛のサルサさんは見当たらない。どこにいったんだろう?
「あれぇ? 着いたの!? 何も起きなかったのー?
シロンちゃんとニャトルちゃんの戦闘が見れなかった!」
「平和に越したことはありません。ニャトルって誰でしたっけ?」
「もう忘れてるニャ! 信じられない記憶力ニャ……」
「やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだね。同情するよ」
「君が呼んだんだろー! はぁ、どうすればいいんだこれから」
「ニャトルちゃんも私の契約獣だから、一緒に冒険するんだよ!
それよりサルサはどこ? もう先に行っちゃった? お金渡さないと」
「冒険? 冒険てどこに行くの? ニャトルは進化神様の元に帰りたいニャ。
絶対怒られる……」
「進化神? なぁにそれ? きっとギルドで聞けばわかるかな?
とりあえずギルドまで行ってみよー! おー!」
「こうなったらギルドに辿り着くまでご主人はダメだ。覚えておくように」
「この子、あれな子なのね。わかったニャ、もうなる様になれにゃ」
ずんずんと進んで行くご主人にずりずりとつき従う俺とニャトル。
どう見ても引きずられているがまるで気付いていない猪突猛進っぷり。
「速い、速い! もっとゆっくり!」
「ゆっくりしてられないわ! 急ぐわよシロンちゃん、ニャトルちゃん!」
「これ以上はさすがに。足が辛いです」
「ちょっと乗っかるニャ。行けシロン!」
「ふぎゃっ おいばかやめろ。俺は移動用じゃない」
「おお、これでも進んで行く。よし、今日から私のポジションはここニャ!」
「おーし、それならまたおたまじゃくしを……そうすると俺に降ってくるんだった」
「二人とも、着いたよー! あら、仲がいいのね! うふふっ」
『ちっともよくない!』
にっこり微笑んだご主人は建物に入っていった。
ギルドかー。定番の新人いびりとかあるのかなー。
「ようこそ召喚ギルドへ。初めてご登録の方ですか?」
「はい! シフォン村から来たルビニーラです。契約召喚獣がいるので手続きを
お願いします!」
「あら、可愛い召喚獣ね。こちらはケットシープかしら?」
「えーっと二匹ともよくわからなくて。新種かも知れないの! 調べてもらって
いいですか?」
「かしこまりました。それではこちらの台の上に乗せてくれますか?」
「自分じゃ登れないよー。ご主人上げて」
「ふん、情けない奴ニャ。私は自分で登れるよーだ」
「二足歩行はずるいと思うのよ。ご主人ー、ハーリーアーップ!」
「はいはい……それじゃお願いします!」
「今……喋りませんでしたか? 私の気のせいかしら」
「シロンちゃんもニャトルちゃんも喋りますよ?」
「嘘……喋れる召喚獣なんて信じられないわ。しかもどちらも登録外です!」
「ウルフィ? ニャコン? 聞いたことありませんね。どちらも新種と認定します!
強さは……どちらもスライムと同程度なのでカッパークラスですね。
ギルドの説明を聞いていかれますか?」
「はーいお願いします!」
「では……」
受付の話によると、ギルドでは召喚士のクラスと召喚獣のクラスは別々らしい。
召喚獣にはカッパー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、シデンという
クラス付けがあるらしい。クラスアップには試験が必要。
俺は召喚士じゃないのでそっちは聞いていなかった。
一年に何度か、各クラスの召喚獣を持ち入り競わせる大会が、この国のプリンという町で
開かれているらしく、それを聞いたご主人の目に炎が灯ったのを見た。
大会で勝てばお金が一杯手に入るのかな?
そうすれば美味しいパンにもめぐりあえるのかな。
しかし俺とニャトルは最弱に違いない。このまま出場すれば瞬殺されるだろう。
まずはコツコツ依頼をこなして強くならねば!
「早速依頼を受けていかれますか?」
「もちろん! 受けます! 討伐依頼を! ドラゴン!」
「いえー、さすがに受けれませんし、死んじゃいますよー?」
「えー!? ダメですかー?」
「ご主人は俺たちを殺るつもりだ。気をつけなニャトル」
「ひどいニャ! 血祭もいいとこニャ! カーニバル禁止!」
危険だ! サルサさんを無理やりにでもパーティに勧誘しようと決めた。
このままじゃ全滅は時間の問題。ギルド加入数秒で死地に追いやられる所だったよ。
「まずはこの、カッパーラビットからでしょうね。三匹を二体分で六匹討伐してきて
いただけますか?」
「わかりましたー。その前に一応宿屋を取りたいんですけど、近くにありませんか?」
「あるわよー。全く、あんたエルエ置き去りにしてギルドへ行く? 困ってたわよ」
「あー、サルサ! どこ行ってたの?」
「あんたがそれを言うのか!? はぁ……」
「おおー、救いの女神サルサ様! どうか、どうか俺たちを見捨てずついてきてください!」
「た、頼む……じゃなかったお願いしますにゃ。この通りにゃ……」
「な、なによ突然。まぁいいわ。護衛報告は終わったし。とりあえず宿屋に行きましょ。
それからエルエはもう帰ったからね。よろしく言っといてくれって」
「あー、ついうっかり! えへへ……まずかったなぁ」
「もう慣れてるわよ、あいつも。しばらく会う事はないのに、全くもう」
「ごめんなさーい! 手紙でも書きますから!」
「そうね。ちゃんと稼いでお礼のお金も送っておきなさいよ?」
「うん。ちゃんとするよ! さて、宿屋へ出発ー!」
バタバタしたけどどうにかサルサさんがついて来てくれることになった。よかったー。
俺とニャトル……二匹の戦いが始まろうとしていた。