魔術書を手にしたシロンは詠唱を開始します
「でんでんごろごろでんごろー。ごろごろピョンピョンウサ魔導書鑑定!」
「語呂が悪い!」
「……結果が出たウサ。これは!」
【歌ってしまう魔導書】
「と出たウサ」
「……はい?」
「石化する魔導書と出たウサ」
「専門家でお詳しいサルサさん、解説をお願いします」
「私に言われてもね……って誰が専門家よ! 自己肉体強化系魔法の類かしら」
「そんな! 俺はもっとこう、ファイアボール! とかウインドカッター! とか、ブラ
ックホール! とかとか中二病的な奴だとばかり思ってたわけですよ! それが何です
か! 石化する魔導書って。どうするんですか、これぇ……」
「お金は頂いたウサ。毎度ありウサ。良い買い物したウサ」
「試しに使ってみたらどう? ちなみに借金はゆっくり返してくれてもいいわよ」
「ぐぬぅ……どうやって使うんだろう?」
「魔導書はスクロールウサ。頁を開いてこれで印を押して読めば消えるウサ」
「買っちゃったんだし早く押しちゃいなさい」
「はぁい……シクシク。俺のダムドやハーロイーンやらがぁ……」
「お止めなさい」
渋々石化する魔導書とやらに俺の肉球スタンプを押しあてます。
そして……中を見ると、するすると文字が頭に入るではありませんか!
不思議!
えーと呪文は……「我が意をもって全てを防ぐ巨大な魔石と化せ。グレートマジックス
トーン?」
「ちょ、待つウサ! それ巨大化……」
「あっ」
その術が止めるまもなく発動。
何と俺は……巨大な犬石像になりました!
何処でだって? それは勿論鑑定ウサギの鑑定ハウスです。
巨大化するわけですから家は当然粉々です。
フィラデルフィアに新たな名物、巨大な犬魔石が爆誕しました!
「……ええっと、それじゃ私たちはこれで……」
「シロンちゃんすごぉーい! 竜より大きくなれるね! 今すぐ戦いに行こ!」
「ご主人、石化してるからどうみても戦えないニャ……」
「でも考えてみればこれって……私たちの盾になるんじゃない? 良かったわね。
うちのパーティーで最も不足してるのが盾だわ」
「それはいい考えニャ! 盾の隙間からホースで攻撃してやるニャ!」
「……」
俺は気付いてしまいました。
石化したら喋れなくない? どうすればいいの、これ?
戻し方分からないよ?
「シロン、そろそろ戻りなさい。学校へ行って鑑定するんでしょ」
「そうだった! 私たち、事件解決への協力で大学への入学費用免除らしいよ!」
「本当ニャ? やったニャ。ニャトルの最強剣を作ってやるニャ」
「あんた、どうやって剣使うのよ……」
「尻尾ののケンを強化するニャ。ニャゴハーッハッハッハ!」
「さっきホースで戦うって言わなかったかしら……」
「……」
うおおーーい! 置いてけぼりだよー! 主人公何も喋れないってどうなのさ!
でも、大学費用免除はやったね! 旅のついでだからそんなに長居はしてら
れないだろうなぁ。
「でも、特別生らしいからそんなに長くはいられないみたいだよ?」
「ふーん。まぁいいわ。少し学んだら、また違う町へと出発するんでしょ?」
「そうね。次はいよいよ召喚士の里、サモンビレッジだから」
「サモンビレッジって何ニャ?」
「召喚士が行きつく終着点と言われる場所ね。ここで認められれば上級召喚士
になれるってワケ」
「そんなのがあるニャ。でもご主人は駆け出しもいいところニャ」
「まぁ、行ってみないと分からないもんね。はーあ。結局私、あんたの旅にずっ
とついてくことになってるわね……」
「だってサルサがいないと不安なんだもん! ずっと一緒にいてね」
「借金回収もあるからしばらくは離れられないわね……ちょっとシロン! 早くし
なさい!」
「……」
俺は何てことをしてしまったんでしょう。
この石化は封印です!
でも、さっき使ったのはまだまだこの魔導書の初歩術なのです。
実はこのスクロール! 一つの魔導書で幾つか術を覚えられるよ
うでして。
この巨大化の奴は何となく名前からして大きくなれるのかなーと思って
使ったわけですよ。
決してウサギへの復讐心から使ったわけではありません。
「困ったウサ……店が粉々ウサ。どうしてくれるウサ!」
「ほら、最近の流行りは路面でやるらしいわよ? その方が集客率が
上がるって聞いたわ」
「あ、青空の上で鑑定って最高だと思うニャ」
「うん! 天気も良いし商売繁盛! やったね!」
「……」
「本当ウサ? 怪しいウサ。でも、お客さん早速来たウサ」
「おおい、何があったんだー?」
とやってる間にしゅるしゅると戻る巨大石化犬の俺。
良し、チャンスだ!
「さ、さぁ全力ダッシュで逃げ……じゃなかった大学に行きますよ
ご主人、サルサさんも!」
「そ、そうね。別に私は悪くないけど。急ぎましょ!」
「学校、楽しみだニャー!」
こうして俺たちはフィラデルフィア大学へ向かいました。
石化する魔導書。今後どのような活躍を見せるのか?
こうご期待!
「あんまり期待出来ない術だと思うわよ」
「そんなことありません! あんなに大金叩いて買ったんですよ?
神アイテムに決まってるじゃないですかもー」
「もーって……ちなみに当たりの魔導書ってね、凄いのになると隕石落としたり
するらしいのよ」
「め、メテオだと!? バカな。あれはテラですらMPが足りない代物だというのに!」
「誰よテラって」
「いや待てよ……双子の魔術師がプチメテオを使っていた。つまり俺とサルサさんが協力
し合えばプチメテオ位いける!?」
「いけるわけないじゃない。バカじゃないの」
「そもそも俺、魔術使えませんでした……」
「あんたはそんなことより異能力をもっと使いなさいよね」
「だってぇ。凄く魔珠消費するんだもの……くすん」
続くよ!