なんと! 俺はついに召喚獣っぽくなりました
「ラーラル、ラーラル、ラーラルーラー」
「……?」
「ラーラル、ラーラル、ラーラルーラー!」
「……何してんの、あんた」
ご主人は片足立ちで両手を水平に広げ、フラフラしながら呟いています。
サルサさんの突っ込みもごもっともで。
一体何してるの?
「ら、ラーラルーラー!」
「だから何なのよそれ!」
「あれれ? おかしいよ? あってるよね?」
「私に聞かれても全然分からないわ」
皆で首を傾げていると、遠くから木の枝を持ったクラマさんがきます。
隠れてない! 明らかに不自然!
コホンと一つ咳ばらいをしてぼそりと呟きました。
木の枝は咳払いなどしません。いや、木の精霊といえばワンちゃんある?
「わしは木なんじゃが、ラールル、ラールル、ラールルーラーじゃ……」
「……」
「ら、ラールル、ラーラル、ラーラルーラー」
「ご主人、違うのです」
「ラールル、ラルーラ、ラーラララー」
「どんどんダメになっていくわね……」
「ご主人! パート毎に区切るのです! ルールル」
「ルールル」
「ルルル」
「ルルル」
「ルールルー」
「ルールルー」
「ロート製やーくーー」
「ロート製やーくーー」
『何やらせてんのよ!』
だってぇ、雰囲気似てるんだもん!
渋々改めてラールル、ラールル、ラールルーラーをパート毎に区切ってやらせると……。
よし! 無事に言わせることに成功しました。ナイスフォローだぞ俺!
これで一体何が……ってあれここドコー?
「ニャガ!? 召喚封印されたニャ!?」
「召喚封印? それって召喚獣が呼び出される前の場所ってことか?」
「そうニャ。ここは召喚世界ニャ。呼び出されたら何してても強制的に引っ張り出される
に違いないニャ」
「ご主人は毎回あのポーズで……待てよ。俺たちは歩かずに移動出来るってことじゃないのか?」
「そうニャ。ご主人の近くに呼び出されるニャ」
「ほう……つまりここが俺のマイホームってことだ! やったーい!」
「……シュボッ」
「あちちちち! 何でお前までいるんだよ!」
「いーやーー! 私召喚獣じゃないのに連れて来られた、いーーやーー!」
「どうやら持ち物の一部になってるみたいだニャ。装備したアイテムも持ち込めるニャ」
「つまり、何でも入れられるこの袋もか! これはいい。ここに豪邸を建ててくれよう」
ご主人に封印された世界。
それは何もないフワフワした空間のような場所です。
いえ正確には何もないわけじゃありません。
一応地面がありました。しかし地面に着地していません。
俺もニャトルもホノミィも浮いております。
元から浮いてるホノミィはどうでもいいんだけど。
「どうやって着地するの、これ?」
「知らないニャ」
「お前、それでも転生神とやらの遣いなのか!」
「ニャトルは転生神の遣いで召喚獣じゃないって言ってるニャー!」
「あーもーうるさーいーー、調べてるんだからちょっとは待ってよね!」
「お、ツンツンローグちくりん娘が何かしだしたぞたまには役にたてー」
「うるさいだけが取り柄の生物じゃ無かったニャ?」
「後で覚えてなさいよ帽子仮面ネコ……ふぅーん。此処、精霊界に近い感じかも。ここに
いる間は魔珠が回復出来るんじゃなぁーい? ゆっくりだけど」
「なんだと? つまりここにいればあんなものやこんなものも出し放題、ぐふふ……」
「いーやーー! きっと酷いアイテムを出すんだわ! いーやーー!」
「やっぱうるさいニャ……騒がしくて眠れそうにないニャ……とととニャニャニャ?」
「あれ、ニャトルだけいなくなった。呼び出されたのか?」
「そうじゃないのー? って私、あんたから離れてたら此処に置いてけぼり? いーやーー!」
別に置いてっても置いてかなくてもあんまり変わらない存在だと思うのですが。
それにしても魔珠回復場かぁ……俺の魔珠、自動で回復しなくなってたから、これは有難い!
「ああ! 引っ張られる! 何処かに引っ張られるぅーー!」
「いーーやーー! 全然休めてない。いーやーー!」
そして俺たちもニャトルに続いて召喚獣の休める世界から引きずり出されました……。
短い休み時間だったなぁ。
「あれ? 此処は何処? 私はだぁれ?」
「見たら分かるでしょ。宿屋よ」
「いつの間に宿屋まで戻ったんです?」
「それも見たら分かるでしょ。本当いいお湯だったわぁ」
「あの短時間で湯浴みを済ませたんですかサルサさん!」
「何言ってるのよ。結構な時間が経ってるわよ」
「つまりあの世界は時間経過が早いんですね。これじゃちっとも休憩気分になりません」
「ふうん。私は行ったことないから分からないわね。それよりも、出掛けるわよ」
「何処にですか?」
「寝惚けてるのかしら? 鑑定に行くに決まってるでしょ」
「あ、そうでした。せっかくのお宝……鑑定しないわけにはいきませんね。よぉし! で
は俺に付き従い、喋る言葉を真似してください!」
「嫌なんだけど」
「強制です。言わないとお宝は独り占めにします!」
「何でそうなるわけ?」
「口答え無用! 今から私は隊長だ!」
「はいはい。いいから行くわよ隊長」
「よろしい。では続けい! シロンは今日から隊長だ!」
『シロンは今日から隊長だ』
「母ちゃんたちには内緒だぜ!」
『……母ちゃんたちには内緒だぜ』
「おませなあの子も知ってるぜ!」
『……おませなあの子も知ってるぜ』
「のめりこめ!」
『のめりこめ!』
「のめりこめ!」
『のめりこめ!』
「あーちょっと君たち。少しいいかね」
「のめりこめ!」
「あんた何てことさせるのよ! 町の人に酷い顔されて通報されたじゃないの!」
「のめりこめ!」
「ま、まずいニャ。シロンが完全に壊れたニャ……」
「シロンウォーズ三月十六日発売!」
……続くよ! のめりこめ!