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戻って来て一気にフィラデルフィアへ! 

 ダンジョンから出て来た俺たちは、少しバテバテで、眠っているボルボパイセンの腹の

上にいます。

 

「無事、戻って来れたけど、疲れたわ……」

「これからどうするんだニャ?」

「フィラデルフィアに戻りましょう。俺たちにはまだやるべきことがあーる!」

「そうね。巨人を起こして道案内を頼みましょう」

「おや、もう起きたようですが……」

「んんー? ああ、戻って来ただべか。良く眠っただ。お腹空いただな」

「ボルボパイセン! なんか巻き込んですみませんでした! 俺たちフィラデルフィアま

で戻りたいんですが……」

「そうかそうか。それなら町の近くまで送ってってやるだ。一つ頼みがあるんだけどもいいだべか?」

「勿論です友よ。何をすれば良いのでしょうか?」


 俺たちをそっとテーブルに下ろすボルボパイセン。

 外に出て巨大な……リアカーのようなものを持ってきました。

 

「これに野菜を積むだよ。代わりにあれに入るだけチーズを入れてもらってるだ。おら

チーズが好きなんだが、自分じゃ作れなくてよ。だどもチーズだけじゃさすがに難しく

てよ。何か美味いもののおすすめを教えて欲しいだよ」

「……分かりました。このシロンにお任せください!」

「よっしゃ。早速野菜積むから待っててな」


 ――しばらくすると、とんでもない大きさの野菜をリヤカーに積んだボルボパイセンが

戻ってきます。

 俺たちをその野菜の一つに乗せると……出発です。

「レタスって柔らかいだけじゃなくて、暖かかったんですねぇ」

「ちょ、振動で挟まる! 挟まるわ! 野菜の何かに挟まるわ!」

「カボチャ硬い! ピーマン、ピーマンは何処ですか! 俺のピーマン!」

「いーやー! 人参が降って来るー! いーーやーー!」

「ニャゴハーッハッハッハッハ! 白菜の葉っぱの上は無敵ニャ! ……大きい虫が

こっちを見てるニャ……」

「おめえたち、野菜の上でも楽しそうにしてるだなー」


 いえ、全然楽しくありません。リアカーに積まれた野菜の上は酷い揺れ具合です。

 暖・防・流兄貴との旅が恋しいよー。

 しかし速い! さすがは巨人です。

 暖・防・流兄貴の百倍位の速さで移動できます。

 これを商売にした方が良いんじゃないの? とも思うくらいです。

 でもこの野菜、美味しそう……いい総菜パンが出来そうです。


 それから――グングン進むボルボパイセンに、我々はワイワイガヤガヤと話をしており

ました。

 陽気に歌を口ずさみながら進むボルボパイセン。

 巨人のリアカーに乗せられて旅が出来るなんて……まるで夢のようです。

 野菜に挟まれながらだけどな! 


 ――そして! 「この辺りでいいべさ」

「……チーン」

「も、もう二度とリアカーには乗らないわ」

「野菜圧縮死何て笑えないですぅ……」


 無事ではありませんが町に到着した我々を、入り口の兵士が迎え入れます。

 ここ、兵隊さんいたんだ! 

 どうやらボルボパイセンは町中には入れないようで、この場所で取引を行っているよう

です。

 これだけ大きな野菜であれば、それはそれは高く買い取ってくれるのでしょう。

 俺たちが門兵二人に近寄ると、シローネとクローネの話をします。


「あのー、俺たちジェイフ卿の依頼を終えて帰還してきたものなんですが……」

「うん? 犬が喋った? 最近忙しくて疲れてるのかな……ははは」

「おい。ジェイフ卿お気に入りの犬ってそれのことじゃないのか?」

「そういえばそんな噂が立ってたな。人語を理解する不思議犬で、小憎らしい顔が愛らしい

だのなんだの……確かに小憎らしい顔をしているな」

「だれがイケワンですか! 誰が! そんな褒めちぎっても天には昇らないんだから

ねっ!」

「イケワンって何だ? しかし本当に喋る犬だ。どうやって人語を覚えたんだ?」

「おいおい。召喚獣に決まってるだろ。お前本当に疲れてそうだな……こっちは俺が引き受

けるから、巨人の仕入れを担当してくれ」

「そっちの方が大変だろ……」


 仕事の押し付け合い!? 確かに我々の相手はとっても楽! でもボルボパイセンの依頼

をこなさなければ。


「おいニャトル、それに地雷さんや。ミネル・バビスチェに向かってボルボパイセンの口に

合いそうな食品を買って来ておくれ」

「そんな簡単に中に入れるニャ?」

「そこの兵士は恐らく要領重視だ。きっと入れるぞ。ということで俺たちが手続きをするの

で先に荷物を置きつつその巨人に渡すものがある二名を中に入れて欲しいんですが」

「ほう。そいつは仕事が早く片付きそうだな。分かった。猫は適当でいいだろう。お嬢ちゃ

んは……うむ、可愛いから適当でいいだろう、うん」

「適当だった! 門兵が適当で大丈夫なの!?」

「悪い奴は大体顔見れば分かるもんだ。どんな奴がやばいと思う?」

「んーと、魔王みたいな奴とか、勇者みたいな奴ですね?」

「ほう。中々見る目がある犬だな。悪い奴ってのはぶっ飛んで見た目が異なる奴と普通に紛

れてる奴だ。つまりどちらでもないお前たちはほぼ大丈夫なわけだ」

「ちょっとどういう意味かしら? 私たちがまるで危ない異常者みたいに見えるとでも?」

「サルサさん。俺たちはどう見てもアブノーマルな奴らです。普通がいません」

「そういうことだ。後は話し方と匂いだな。そっちの犬は経験を積めばいい門兵になれそう

だぞ?」

「俺は門兵になるつもりはありません! パン屋になるんです!」

「はっはっは。まぁ犬では門兵にはなれんか……よし、確認はとれた。どうやらヨウナお嬢

様が探していた奴らで間違いなさそうだな。お前たちはここで待機。ボルボの取引関連も全

て許可してやる」

「物分かりがいい兵士さんで助かりました。あなたとは仲良くなれそうですね……あっしは

シロンと申すしがない商犬でして……」

「兵士のキン・グレオだ。グレオと呼んでくれ。よろしくな」

「キン・グレオ……だと? マーの鏡! マーの鏡はありませんか!? いや、まさかそんな」

「うん? まぁいい。俺は少し休んでるからな」


 まさかの真実の鏡キャラと似たような名前だったとは。

 見た目は普通の兵士。そして普通は普通じゃない……とはまさにこのこと! 

 でもどうみても普通の兵士なのでそっとしておくことにしました。


 それからニャトルたちが持ってきたものをボルボパイセンに渡すと、小さすぎて味が分からな

いといわれましたが、バケツ一杯程度のハチミツ酒を飲み干すと、大層気に入ったようで、買っ

て帰ると喜び、別れを告げました。


 そして……「あーーーー! 本当にもう! 何処行ってたのシロンちゃん! サルサも! ずっ

と探してたんだからね! いなくなったかと思っちゃったよー……シロンちゃんもう離さないんだ

から!」

「むぎゅう……潰れるぅ! ご主人、ギブ! ギブなのです! なんか力強くなった? ぎゃーー!」

「愛の抱擁ね。良かったわねシロン。私は早く湯浴みをしたいわ……野菜の泥を落とさないと」

「ようやく全員集まったニャ?」

「お腹空きましたぁ……」

「ヨウナさんとクラマさんとカエサルさんは?」

「ジェイフさんにこっぴどく怒られてるよ? 馬車、壊しちゃったでしょ?」


 全員で後ろにいる地雷を見ます。

 地雷はさらにその後ろを見ました。

 犯人はアイツです! 


「わ、わたしはそのー、特に何もしてませんよぉ……?」

「それより! ニャトルちゃんがおかしくなってるんだけどどういうことシロンちゃん! 

シロンちゃんが贈り物したの? 結婚指輪の代わりなの?」

「ご主人が破滅呪文を唱え始めたニャ……」

「これ、前にもあったなー! こいつは進化を遂げた様です。その名も……ホースベーダー!」

「ニャゴハーッハッハッハ! ……何か変わってるニャ……かっこ悪くなったニャ」

「ニャースよ。ホースを使え!」

「ニャトルちゃんが私のいない間に進化……うぇーん! サルサぁ! どうして私を置い

てったの……」

「あんた、修行してたんでしょ? 少しは召喚術の基礎、覚えたの?」

「うん。みててね……どっちも居なかったからぶっつけ本番だけど!」


 そう告げると、ご主人は何かぶつぶついいながら俺とニャトルを撫でます。

 それをじっと見つめるキン・グレオ兵士。

 一体門前で何が始まるってんだい? 




「でーたー。そこで終わるなー」

「棒読みのサルサ。そなたのレベルが上がるには後七千六百五十二の経験が必要だ」

「変な名前にしないでよね。それに私のレベルアップはそんなに遠くないわよ」

「そういえば旅の途中でサルサさんのレベルアップを聞いてませんよ?」

「そこら中でシャキーンシャキーンなってたら、どれがどれだか分かりづらいでしょう? 

作者にも都合があるのよ」

「この作者、案外細かいようで面倒臭がりという変な性格ニャ」

「細かいところはやたらと細かいわよね」

「やめて! ナイフを刺すとライフが削れるから!」

「ちなみに今回のギャグは二点ね」

「全力で刺しに行ったニャ……さすが突っ込み担当ニャ」

「誰が突っ込み担当よ! そもそも私は湯浴みに行こうとしてたのよ? なんでそれを

途中で止めるわけ?」

「ご立腹はそこだったのか!? でもご主人に振ったのはサルサさんですよね?」

「えっ? それは、その……あれよ。サルサを放っておいたら可哀そうでしょ? 出番が

まったくなかったわけだし」

「ご主人は一人ボケタイプだから放っておくと危ないニャ……」

「ちなみに来週からはメンバーにカムバックです。約束通り学校には入れてもらうよ?」

「学校で何するニャ?」

「勉強、恋愛、友情! そして勝利!」

「最初の一つしか合ってないわ……学校は学ぶところよ」

「恋愛や友情を学んだっていいじゃないですかー! ということで、来週から! 転生し

たら召喚獣ウルフィでした。学園で悪役令嬢犬は最強スキル【犬】を行使し死亡フラグを

回避して王国を築き勇者を実況こき下ろしバズった魔王をザマァします。しかしレベルは

ダンジョンで上げてモンスター肉を食らったらチー牛でぶふぉりま……」

『長い!』


 また来週!

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