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ハラペーニャさん食っちまったニャー

「兄貴ぃーー! 大変だ、猫の野郎が浮かびあがったぜぃ!」

「なぁにぃー? ばっきゃろ、おめえ猫が空に浮くわけねえだろうが。良く見ろぃ!」

「すぅー、にゃー。ニャゴハーッハッハッハ! 野郎じゃないニャ。ニャトルは女の子ニャ!」

「あれ? 兄貴。猫と犬とまな板娘しかいやせんぜ!」


 確かにいません! ここには俺とニャース卿、炎ちくりんとまな板しか……。


「誰がまな板ですってー? そんなに私の魔術が見たいなら見せてあげるわ! ……燃え盛る大気の熱よ。

灰燼等しく裂傷となれ、万物を焦がす天来の炎! グランドフレイムクロス!」



 うおーー!? サルサさんの新魔法です! 周囲一帯に挟み込むよう炎が舞い上がり……。

 しかしどうみてもその方向にいるのはダメね……ニャース卿です。


「熱い、熱いニャー!」

「あのう、あっしと兄貴はこっち何ですが」

「なかなかにいい炎出すじゃねえかまな板姉ちゃん」

「……おーいサルサさんの担当は突っ込みですよー。ボケてどうするんですか。うちには突っ込み

担当がサルサさんしかいないんです」

「きゃー! いい炎! 湧き上がるわ! さぁ突撃するのよシロン! 一緒に! シュボッ」

「熱っ! 便乗ボケしてる場合か! あの炎は焼け死ぬから! 触っちゃだめな奴だから!」

「そ、そんな。私の中位魔法を避けたというの!?」

『全然避けてない!』


 奴らはとっくに俺の背後へと向かっておりました。

 小さくて見え辛いからね! 仕方ないよね! 

 俺らはボス部屋前でキャンプファイヤー舞い上がれ焼き猫をしているだけです。

 

「ちょ、今消すわ……空を舞う水泡よ、万物ありて大気から水を生成せん。ウォーターメイク!」


 消化活動はお手の物なサルサさん。しかしですよ? 


「疲れた。もういいもん。私ここで座るからね」

「いじけたニャ!? あんないじられ方して魔術失敗したらこうもなるニャ……」

「あのー、それよりですよ。奥のボス部屋が大変なことになってやがるんですが」


 奥に勝手に向かったのは地雷とハラペーニャです。

 そして、道中サルサさんたちを壁に引きずり込んだ奴と思われる、あの宝箱が十、いや

二十はいます。

 囲まれて女の子座りでこちらを半泣きで見ている地雷が俺の目に映ります。

 よし、やってしまえ! きもい宝箱共よ! 


「……ニャ? 壁しか見えないすー、ニャー」

「なんで天井の隅に挟まってんだよ!」

「使い方が良く分からないニャ……レベルアップのチャンスニャ?」

「もういい貴様らには任せておけん! 俺が出陣する!」

「いーやーー! 私は置いてってよぉ。いーーやーー!」

「いくぞ! 燃えよ! ウルフィ仮面!」

「……ださい」

「いじけながらでも突っ込むその精神! さすが! 炎を纏う! うおーー、今助けるぞ!」

「シロンさぁーん! 早く、早く木てぇー!」

「……ハラペーニャよ。今行く!」


 俺は一直線にハラペーニャが食おうとしているきもい宝箱の方へ向かいます。

 こいつ、何でもかんでも食べやがって! その中身、どう見てもお宝が入ってるよ! 


「んあ? こいつら食っちゃいけねえのか?」

「その中身、本物のお宝がいる奴が混じってます!」

「兄貴ぃ! 大変だ。あの犬、自らを燃やして敵陣に突撃を!」

「なぁにぃーー?」

『男気があるじゃねえかぁーー!』

「へ?」


 俺が突撃すると、俺の背後に回り込んでいた奴らが共に突撃しています。

 こいつら一体何なんだ? 仲間なの? 起き上がって仲間になりたそうにしているの? 


「はわわわわ。やめてぇー。食べても美味しくないですよぉ……」

「地雷は後回しでいい。くらえ! ファイヤー顔面ブロック!」


 燃え盛る顔面で頭突きを中身入りきもい宝箱にかましてやると、コロコロガッシャンと

中身をぶちまけ倒れました。


【シャキーン】


 レベルが上がったその瞬間、残りのきもい宝箱の動きが止まり、こちらを見ます。

 地雷は既に担がれて、胴上げひゃっほい状態です。いいなー。


 見ないで! こっちをじっと見ないで! 

 三、二、一、チーン。


「うわーー! 全部来た! 全部リンクした! おいホノミィなんとかしろ!」


 ダメです。燃え盛っています。燃えているときのあいつはメラメラでやがります。


「シロンさん、助けてぇー!」

「何で担がれたままなの!? ハラペーニャさん! さっき倒した箱以外は食べてもいいです!」

「いいのか? それじゃ頂きまーす」


 俺を追いかける奴らは、一匹、また一匹とハラペーニャに食されていきます。

 ようやく地上に降り立ったニャース卿という駄目猫もホースで参戦。

 そしてチョコボール共も何故か参戦して、敵の箱を排除し尽くしてやりました。


「良い勝負だったぜ」

「兄貴ぃ。いい汗かいた後は気持ちがいいですねぇ」

「全くニャ。これにて一見落着ニャ」

「ひぃふぅ疲れた。何で燃えながら追いかけ回されたんだ、俺」

「もう魔珠切れだわ。一歩も動きたくない」

「ひぃーん。スカート、少し破れましたぁ……」

『……』

「何で俺たちチョコボールと共に戦ってるんです?」

「昨日の敵は今日の友って言うじゃねえか。なぁ?」

「兄貴、その通り! 犬にしとくにゃ惜しい男気だったぜ」


 俺たちの間にひゅーんと妙な風が流れました。

 そもそもこいつら何なんですか? 


「あのー。あなたたちは一体? 俺たちダンジョンでお宝もって帰りたいだけなんですけど」

「おう。俺たちは掃除屋だ」

「へ? ボスじゃないの?」

「見ての通りこのダンジョンは宝のダンジョンだ。ボスはいねえが罠は多い。

慎重に進めば僅かな戦闘と罠でお宝が手に入るんだよ」

「つまり、罠を作動させなければ掃除屋のあなたたちも襲ってはこなかったと?」

「あたぼうよ。散々警告したのに全部作動させちまって。あの豊満娘には仕置きが

必要だろうよ」

「きつーいお灸を据えてやってください……そうだ、それよりお宝!」


 先ほど倒した一匹。そいつの中には明らかに宝が見えたのです。

 中を探ってみると、確かにきらめく宝石のようなものと、地図? それからあとは……

何だろう? 化粧道具? のようなものが入っていました。

 苦労したのにお宝はこれだけでしょうか。

 伝説の剣とか入ってないの? 入ってても装備出来ないけど。

 

「サルサさーん。こっちに来てお宝見て下さいよー」

「お宝? でも、本当に魔珠切れなのよ……」

「仕方ありませんね。ワンハンド! 魔珠が増えたのか、俺はまだまだいけそうです」

「シロンさん、助けてぇー!」

「すー、にゃー。ニャトルもまだ下に降りられないニャ」

「お前たち二名はやはり囮担当だ! 攻撃役に向いていない!」

「そんなぁー」

「ニャ! まだ使い方が分かってないだけニャ! 地雷と一緒にするニャ!」


 使い方が分かったところでバルーンのように打ちあがる猫に使い道などない。

 地雷はそもそも敵を増やしまくる能力者だ。

 いや待てよ? 地雷が釣り、ニャトルが挑発する。

 ニャトルを追いかけるが奴は空に浮かび……そのまま崖へ。

 敵を突き落とし、我らの完全勝利!? 


「これだぁー!」

「はいはい妄想は分かったから。お宝鑑定するわよー……はぁ」

「本当にだるそうですね……あ、合体解けた」

「……しゅぼっ」

「熱い、熱い! 毎回火を灯すの止めろ!」

「だってぇー。嫌っていったのにぃ」

「お前そもそもいーやー! しか言えないだろ!」

「いつか私だってもっと進化してやるんだからね!」

「ちょっと、静かにしなさいよね……ふーん。これ、宝の地図じゃないかしら。この宝石は

鑑定が必要ね。それよりもこれ……全然分からない。塗装道具?」

「おーいお前ら。まだ先に何かありそうだぞ。ハラペーニャ様はこの先入れないや」

「そもそも何でダンジョン作ったあんたがダンジョン攻略してるのよ……」

「一番突っ込んで欲しいところを最後に突っ込みましたね、サルサさん」

「はぁ……まぁいいわ。行きましょう。ラフィー、手を貸しなさい」

「えぇーん。いっぱい怒られましたぁ……」

「ふん。説教は豊満娘だからこれくらいで勘弁してやるか」

「兄貴はべっぴんに弱いからなぁ」

「そう言えば思い出したわ……誰がまな板娘ですってぇ!」

『ご勘弁をー!』


 チョコボールブラザーズ共はサルサさんのブチ切れ睨みと共に姿を消しました。

 あいつら、一体何しに来たんだろう? 

 怒声を挙げるサルサさんを落ち着かせ、俺たちは最奥部と思われる場所へ入ります。

 そこには……先ほどのお宝以外にももう一つ、立派な箱があるじゃないですか! 


「おおー、本物のお宝箱、あるじゃないですか!」

「わぁ。私が開けても……」

『ダメに決まってる!』

「何でですかぁ……」

「ここは大活躍のニャトルが開ける番ニャ?」

「地雷でなければ誰でもいい。さっさと開けて戻ったら、ご主人と合流しないと!」

「それじゃ任せたわよニャトル。中身の取り分は私が五、後は皆で分けていいわ」

『絶対おかしい!』

「皆さんで平等に分けましょうよぉ……」

「そうニャ! いいニャ? 開けるニャよ? オープンザトレニャー!」

「こいつ、決め台詞までニャ言葉でやがる……」


 ついに終えたザックザク宝箱ダンジョン。

 八割がた箱に襲われる酷いダンジョンでした。

 手に入れた真のお宝や如何に? 


「……終わると思ったわ」

「変なもの手に入れた後にまたお宝。これ、どうするんですか?」

「それよりあなた。このダンジョン、ギャグの要素が少ないのよ!」

「ダンジョンは大抵シュール何ですよ! 押すとタライが降ってくるとか

押すと穴が開いてひゅーんて落ちるとかはもうウケないんです!」

「やり方次第でしょ! あんたは出来る! やれば出来る子なんだから!」

「まぁ上手くやる方法はあります。例えばヒューンと落ちるシーンを多用します。

まず一発目、ヒューンという音と共に、いーやーー! と絶叫。そして第二弾。

ヒューンと落ちると共にいーーやーー……と遠ざかる絶叫音。そして第三弾。ヒュ

ーンと落ちる音と共にシュボッという効果音です。見てくださいこのリアリティに

描くキャラ個性と分かり易い状況ネタ!」

「それ、全部あんたじゃなくてホノミィじゃないの!」

「犬はただ、落ちるだけだ……アッー! とかウワァー! とかうひょー! 位の

ものです。そして! この描写を加えるとですよ? ストーリー進行しないんです

困ったワン」

「ダンジョンからの脱出が遠のいて延々とダンジョンネタを書くことになるわけね。

ふぅーん。それなら外に出たら当然、ギャグの話を作るって魂胆かしら?」

「ギクリ。ま、まぁ? そうなんですけど? そろそろお花見が? って時期じゃ

ないですか?」

「花見してる暇があったら書きなさい!」

「あふん……桜は年に一度の楽しみなのに……」


 また来週! 

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