ザックザクお宝ダンジョンなのです
俺たちは現在、お宝が眠っていると噂のダンジョン前にいます。
中に足を踏み入れて本当に驚きました。
いえそれより前に、中に入れたのはボルボパイセンを除く六名です。
ボルボパイセンは大きすぎるので、「おらここで待ってるだよ」と戦力外通達を自らし
ました。
彼がいればどれほど楽だったか……そう思うと悔やんでなりません。
このダンジョンは魔族との取引で造られたダンジョン。
取引をした上で願いを込めて踊ると誘われる不思議な場所です。
そしてダンジョン自体ランダムに変わるんですね。
今回はお宝ザクザクダンジョンに行く予定がザクザクお宝ダンジョンへと向かったわけです。
どんなダンジョンか気になりますよねぇ?
もうザックザク。ザッッッックザクです。
何がだって? それはもちろんザックザクなんですよ。お宝が。
「……また、ザックザクだわ……」
「ザックザクですぅ」
「ニャゴハーッハッハッハ……ザクザクニャ……」
「何でこんな魅力的じゃないダンジョンに来てるわけぇ? いーやーー!」
「この風景に見飽きました……」
周囲には大量の宝箱やら宝石やらがあるんですよ。
……全部ザックザクのバラバラだけどな!
「ちくせう、バラバラ粉々の宝石たちじゃ売り物には……いや待てよ。貴金属ならバラバ
ラザクザクでも価値があるのでは!?」
「あんなでかいもの、持って帰れるのあんた」
「うっ……伊達にお宝を謳ってないですね、規模が大きい。宝石は……傷物の宝石にお金を
払う酔狂な奴はいないかぁ……」
何だったら道までザックリいかれてやがります。
そしてここはダンジョン。当然魔物も出て来るんですよ!
「また出たわ! ほら早く倒しなさいシロン!」
「くらえ、吸血だー!」
「チュウー」
出てくるのは大抵頭がザクザクな形をしたネズミです。
こいつらがお宝をざっくりやってる犯人、いやいや犯ネズミなのでしょうか。
そしてですよ。
魔物を倒せば当然お宝が出るじゃないですか。
出ますよね? 出るんです。魔の珠がね!
ザックリタマデールですよこれは!
「何で出るのが毎回ザックリ割れてる魔珠なのよ! もう!」
「ザックリタマタマ、マタマデール?」
「……しゅぼっ!」
「あっつーー! おまっ、ちょ、本気で燃やしたな! 頭頂部が燃え尽きるから止め
ろ下さい!」
「いいわよもっと燃やしなさいホノミィ。それに何で魔珠がマタマなのよ。マジュで
しょ!」
「遊んでる場合じゃないニャ。ハラペーニャがどんどん進んでいくニャ。どうするニャ?」
「下から読んでもマタマなのです。あつつつ! おいやめろ。大丈夫だ魔族なんか
放っておいても。それよりも、ククク。こんな雑魚い魔物ならいい経験値稼ぎだぜー!」
「ニャガ! ニャトルだって稼ぐニャ! もうじきスーパーニャトルになるニャ!」
「お前そんなこと言ってると職業またそんなのになるぞ!」
「まずいニャか? スーパーケンシニャトルニャ!」
「おいやめろ。鳥が多く住んでそうな山の方の作品が想像が創造でアナザーヘブンするだ
ろ!」
「一体何の話してんのよ、あんたら……燃え盛る大気の熱よ。万物を焼き尽くしそれ
らの身を滅ぼせ! フレイムウィップ!」
『チュー』
ばっさりと大量のネズミ共を駆逐するサルサさん。
やってくれる! あの、俺の経験値……。
「こうして勇者サルサは魔王ネズミ共をザックザク薙ぎ払い伝説になりました。おしまい
おしまい」
「誰が勇者よ誰が! この世界の勇者はこんなにも勤勉じゃないわよ!」
「何と勇者がいるのですか!? こいつはおっでれーた……」
と考えている間に次から次へとネズミがボコボコ湧いてきます。
現在はまだザックザクお宝ダンジョンの入り口。
これは埒があきません。
「仕方ない……こうなったら! 出でよ、殺鼠剤!」
ごとりと落ちる音とともに、周囲に丸団子がばらまかれる。
よっしゃー召喚成功です!
「何ニャ? これ何ニャ?」
「ふっふっふ。本来はネコイラズと読むものなのだよニャトル君」
「ネコイラズって何ニャ?」
「猫はネズミを捕まえるのが上手い。しかし! その猫が役に立たない場合に用いる究極
の……毒だ!」
「ニャガ!? ここ、こいつ何時の間に毒攻撃なんて覚えたニャ……危ない奴ニャ」
「フッフッフ。決して口にすることなかれ。こいつは……」
「チューー!」
夢中になって食べ始めた。いいぞいいぞーー……ってあれちっともコロっといかないで
す。
チューと叫びながらぱったりいくはずなのに、何故だ!
それどころか……どんどんネズミ共が集まって来ます!
そんなに集まったら殺鼠剤直ぐなくなっちゃうよ! ここはバーゲン会場ですかコノヤ
ロー!
「皆さんに提案があります」
「何よ。これで楽に勝てるんでしょ。良かったわね。これだけ倒せば経験値ザックザクで」
「多分経験値を与えたかもしれないので、走りませんか?」
「わぁ、ちょっと美味しそう……」
「それ食べたらあかんやつや! いや、食べて動けなくなる地雷を置いて行こうそうしよ
う」
「やだなぁシロンさんってば。さすがに食べませんよぉ。床に落ちたものなんて」
「ちょ、早くしないと食べ終わる! 早く、早く行って! いーやー!」
「見てる見てる見てる! 俺が餌を出したと勘違いしてちらちら見てるぅー!
絶対来るよ、絶対あいつらこっち来るよ!? ネズまっしぐらだよ? 」
「何で猫まっしぐらみたいに言ってるニャ? これは……まずいニャーー!」
俺たちは猛ダッシュで走りました。
背後には数百は現れたであろうネズミの軍勢。
どうする、どうなる!?
「結局走ったニャ。そしてニャトルのレベルがまだ上がってないニャ」
「だってお前、ぼーっと見てただけだろ?」
「違うニャ! ちょっと毛づくろいしてる間にネズミが倒されてたニャ!」
「ちょっとあんた! 全然効いてないじゃない! 何だったのよあの餌!」
「違うんですサルサさん。あいつらはですね……」
「一体何だったんですかぁ……」
「スーパーラット! 奴らはスーパーラットだったんです!」
「それ、ニャトルと同じ発想ニャ……」
「ご利用は容量用法を守り、スーパーラットにご注意下さい」
「自分で全部ばらまいたんニャローがっ!」
続くよ!