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(二)-7
「あら、そうなの? 残念ねぇ。せっかく木ノ本さんと会うために仕事休んで森丘まで出てきたのに」
「本当にすみません」
忠徳が再度頭を下げた。
その瞬間、美代のスマートフォンの音と振動でテーブルが鳴った。
美代は「ごめんなさい」と慌てながらスマホ画面を見た。メッセージアプリの『レイン』でメッセージが来ていた。相手は小学校から付き合いのある同級生の良子ちゃんからだった。
メッセージには「カケルの船が戻らないって」とだけあった。
美代はそれを見て急に立ち上がった。
「ごめん、母さん。私、先に帰る。母さんはこっちで用事あるんでしょう、ゆっくりしていって」
「なにかあったの?」
「船が戻ってこないの」
(続く)