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邪竜の町  作者: テルミン人形
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板橋道元(2日目 06:25) 蛇沼公園

「感じぬ……」

昨夜、この町が霧で覆われてから。私は独自に調査を開始していた。

町を覆っているこの霧。

これは自然現象ではない。


私は法術を使い、この霧の元凶がどこにあるか探ってみた。

結果は分からなかった。この現象は一筋縄ではいかない。

そこでやってきたのはここ。蛇沼公園。

地元では大蛇伝説で知られており、夜に近づこうとする者はまずいない。


水場は霊が集まるという。

確かにこの場所は私の法術でも一際強い反応を示していた。

いまあるのは痕跡のみ。

それもかなりデカいやつがここにいたらしい。


「これは人間の気ではない。だが、霊とも違う」

この場所にいると身体中がピリピリする。

遥か上から見下ろされているかのような重圧。

蛙は蛇には絶対勝てないという現実を突きつけられるかのような。


私は恐れている。

この先に立ち入れば命はないかもしれないと予感しているのだ。

「出たようだな」

背後から複数の気配を感じる。

昨日の夜から町中をうろついている奴らだ。

確認できたのは三体だった。


なんの芸もなく前のめりに突っ込んんでくるだけだ。

私は杖にしていた錫杖を持ち替えると、そのまま正面に突いた。

しかし、それだけではまだ足りない。

突きの体勢から錫杖を回転させ、上段から振り下ろす。

重い手ごたえ。

まずは一体!!


「メム!! アアァーーー」

一体目が崩れても敵の勢いは留まることを知らない。

「全く。休む暇もくれんのかっ」

だが動きは単調。

これならば余計な小細工は不要。

型通りの丁寧な打撃技だけで事足りる。


今度は連続の突きから中段参の構え。腰を落とし重心を固定、踏み込みの隙を突きのモーションでキャンセル。そこから陸から弐拾壱までの打撃技混成接続。

「滅!!」

敵は避ける暇さえ与えられず、ただ攻撃を受け続けるだけだった。


二体の敵が30メートル先まで同時に吹っ飛ぶ。

「こいつらは一体なんなんだ」

戦ってみて分かった。まるで死体が動き回っているような。生身の人間にある気の動きというものが全く感じられない。


考えを巡らせながら私は倒れている敵に触れてみた。

皮膚には血色がなく、とても冷たい。

今さっきまで動いていたのに。


「気休めかもしれんが」

懐から札を取り出して敵に貼り付ける。

除霊に使う札が有効か分からんが。見たところ変化はない。

「効かんか。清めたまえ。静まりたまえ。浄霊!!」

除霊の所作を終える。


これ以上ここにいても進展はないだろう。

確か昨日は祭りがあった。タイミングが良すぎはしないか?

その辺りを当たってみるとしよう。

「蛇は龍のなりそこない……か」


さっき動き回っていた死体。鱗のようなものがあった。

それにこの町に伝わる龍信仰。

起源もなにも分からず、いつしか人々の間に根付いた神。

仏に仕える私ですら知らないのだ。

いったいなにを祭っているのだこの町は?


考えすぎであって欲しい。

「これを祓うのは骨が折れそうだな」

そう言って苦笑しつつ私は蛇沼公園を後にした。

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