出会い3
自転車を押しながら歩くこと数分、ふと真尋は疑問に思い彼女に尋ねた。
「けど、どうしてこんな田舎のバス停でバスなんて待ってたんですか?」
「さっきみたいにタメ口でいいわよ。なんだか違和感がすごくて。」
「えっと、流石に大分年上の人にタメ口はきついですよ。」
「さっきあれほどのことを言っておいてそんなこと気にするのね。」
「いや、それは、あの、気づかなかったからというか、なんというか。」
先程のことを思いだし、気まずくなっていると。まぁ、いいわ。彼女は言った。
「さっきの質問の答えだけど、私、今旅をしてるの。」
「旅…ですか?」
「そう。色んな所をまわってたくさんの景色をみて……そして心に刻み込むの。」
「どうして、またそんな事を?」
「……んー、まぁ…色々とね……」
彼女は苦笑いしながらそう答えた。しかし、それが真尋にはとても辛く、悲しいのを我慢しているように見えて、深く訊ねてはいけないと思わせるようだった。
「そんなことより、家までどのくらいかかりそうなの?」
「あっ!そうですね。あと2分かかるかどうかぐらいです!」
話をそらそうと、別の話題を出した彼女に便乗し、自分もこの暗い雰囲気を変えようと元気よくそう答えた。
「楽しみねー、一体どんな家なのかしら。」
「こんな田舎なんで、そこまで綺麗でもないですよ、少し広いくらいで。」
「そんなこと言っても、都会なんてそれこそなんの面白みもないわよ。だから少し楽しみ。」
はにかみながらそう答える彼女は、本当に綺麗で、真尋は思わず見とれてしまった。すると、急に黙ってしまったことを不思議に思い、彼女は真尋の顔を覗き込んだ。
「どうかした?急に黙り込んで。」
「いっ、いえ!なんでもないです。」
「そう?急に静かになったか、びっくりしちゃった。」
そう言ってクスクスと笑う彼女にまた見惚れてしまいそうで、なんとか頭を振って切り替えた。
「ところで、この辺りに何か凄い!って場所ある?」
彼女は思い出したかのように、尋ねた。
「あ、あぁ。ありますよ!とっておきの場所が!僕も唯一、ここに住んでて良かったって思えるくらい!」
真尋はそう答えた。