出会い2
少女は血相を変えて、僕に尋ねてきた。
「ねぇ君!今何時?」
「えーっと、17時30分くらいだけど……」
そう答えると少女は絶望したような表情を浮かべ、呟く。
「そんな……3時間も待ったのに……」
その言葉を聞いて彼女の気持ちを悟った。
(ただでさえ、こんな何も無いところで3時間も待ったのに、やっと時間になったと思ったら、まさか乗り遅れるなんて、普通に辛いな。)
彼女の置かれた状況に同情してしまったからなのか、思わず言ってしまった。
「えっとー、もし良かったら家来る?多分あと7時間以上待たないと行けないと思うんだけど。」
「え?」
そう言った僕に対し、彼女は訝しむような、こちらの考えを読み取ろうとするような、そんな眼差しをむけ、そう答えた。
「さすがにこんなところに1人座っていても暇だし、何より、ここはいい人ばかりだから大丈夫だとは思うけど、小学生がこんなところにいたら危ないと思うし。」
「そ、そうは言うけど、見ず知らずの人にそんな簡単について行くのは、それこそ危な……え?ちょっと待って、今なんて言った?」
彼女は戸惑う素振りを見せ、困惑しているように思われたが、何かに気づいた途端、こちらをじっと見てきた。
「え?ここにいても暇ですし、危ない目にあうかもしれないって言いましたけど……」
「いや、その後小学生がどうとかって言わなかった?」
「え?うん。この辺はあまり小中学生も、高校生も居ないから、なおのこと危ないなーって。」
そう言って彼女を見ると、顔を真っ赤にしてプルプル震え出した。その様子を見て、僕は理解してしまった。
「もしかして実は中学生とか?」
この言葉が決め手となり、彼女は勢いよく立ち上がり言った。
「これでも成人してますから!!」
僕は唖然とした。
「え?…………………………嘘でしょ!?だってこんな小さいし!服装だって!どっからどうみたって少し背伸びした子どもにしか見えないって!」
思わず叫んでしまった。それと同時に彼女の地雷を思いっきり踏んでしまうどころか、地雷のあるところにヘッドスライディングしてしまったのだと悟った。間違いなく怒っていると思った僕は、そーっと彼女の様子を伺った。
「……ぐすんっ、そんなの知らないわよ……」
すると今にも泣き出しそうな顔をした彼女が俯いてたっていた。それを見て凄まじいほどの罪悪感を感じた僕は、何とか慰めようと彼女に再び話しかけた。
「あ、あの!な、泣かないで!えーっと、そ、そう!きっと小さい方がいいって言ってくれる人もいますよ!それに小さかったら、近所のおばちゃんから飴だって貰えるよ!」
とても焦っていたからか、彼女の傷口に塩を塗っていることに、この時の僕は気が付かなかった。
「うるさーーーーーーーーい!!そんなのあんたに関係ないでしょ!それに何!?私はロリコンと付き合ってろとでも言うの!?そんなのろくな男がいるわけないじゃない!なんで、今会ったばかりの男にそんなこと言われないといけないのよ!」
すごく怒られた。捲し立てるように一方的に言われたため、僕はよく理解出来ずに惚けてしまった。
「それにわたしがどうしようが、私の勝手でしょ!あなたにとやかく言われる筋合いはないわ!」
そう言い切ると彼女は興奮していたためか、息が荒くなっていた。その様子を見て、申し訳ないことをしたと思った。
「すみません……色々失礼なことを言ってしまって。」
僕の申し訳なさそうな表情を見て、彼女は罪悪感がわいてしまったようで、先程とは打って変わってあたふたし始めた。
「え!?いや、その、こちらこそ大人気なく怒鳴って申し訳ないって言うか、その、子どもの言葉を真に受けて怒ってしまって……ごめんなさい。」
相手がまだ子供なのだということを思い出し。彼女は謝ってきた。
「いや、こちらこそ。今思うととんでもないこと言ってたなって思いますし……」
なんだか気まずい雰囲気になって困っていると、彼女は思い出したかのように尋ねてきた。
「そう言えば、さっきはなんて言ってたっけ?」
「あー、家に来ないかって言う話です。次にバスが来るのは夜ですし。近くに寄れる所もありませんから。」
すると彼女は申し訳なさそうに「良ければ寄らせて貰ってもいいかしら?」と尋ねてきたので。僕は
「はい!もちろん!」
そう答えたのだった。