6 街で仲間探しをしました!
「よし……ようやく出れたぞ!」
宮廷の外に出ると、思わずそんな言葉が漏れた。
エルゼはそんな俺を見て、ぱちぱちと拍手した。
「おめでとうございます、殿下!」
純真な笑顔がまぶしい……
「は、恥ずかしいって。いや、確かに嬉しいんだけど」
思えば皇子として転生してから、俺は宮廷にこもりっきりだった。
たまに宮廷からどこかへ行くときは、必ず馬車での移動。
しかも、だいたいが聖堂で儀式に参加するなど、国家行事がほとんどだった。
所用が済めば即帰宅。
自由に街を散策なんて、前世以来だ。
その嬉しさが顔に出てしまったのだろう。
「まあ、これもエルゼのおかげだよ……本当にありがとうね」
「いえ、私は何も……ところで、まずはどちらへ? 商店はあちらにたくさんあるようですが」
エルゼは大通り沿いにある看板を見て言った。
商業区付近は多くの人で賑わっている。
人材探しにはうってつけだろう。
住宅区には人が少ないだろうし、皇族といえど人の家に断りなしに入るのは常識的に許されない。
「確かに商業区に行くのがよさそうだが……そういえば、エルゼには何も言ってなかったね。僕は仲間を探しにきたんだ」
「仲間探し、ですか! 楽しそうですね!」
「うん。宮殿と違って人も多そうだからね。どんなユニークスキル……いや、特技を持っている人がいるか楽しみだ」
エルゼは目を輝かせて頷いた。
まだ見ぬ仲間を探しに行くなんて、なんだか本当に子供の遊びみたいだな。
エルゼもそんな感じで捉えてくれたのだろう。
「それじゃあ、行こうか」
「はい!」
俺たちは商業区の通りを歩いていく。
通りには豪華な服飾品、珍しい食品や動物が並んでいた。
前世はもちろん、今の俺にも手の届きそうもない高価な品物ばかり。
「おお、さすが貴族相手に商売しているだけあるな……」
ハイブランドが並ぶ高級商店街に迷い込んだ気分だ。
道行く人は俺を見て、一礼していく。
だが少し通り過ぎると、「例の方じゃない?」など俺を揶揄するような声も聞こえてきた。
ううむ。やっぱり俺への評価はここでも悪いらしい……俺の話を聞いてくれる者がどれだけいるだろうか。
俺は早速、道行く人のユニークスキルを確認していく。
やはりというか、宮廷に出入りできる上級貴族と比べると、スキルは劣る。
だが、【剣神】に少し劣る【剣豪】や、【大賢者】の効果を弱めた【魔導師】など、なかなか光るものを持っている者もいるようだ。
あそこのおっさんは【神算】か。
計算がとてつもなく早くなるスキルだったな。
仲間になってくれれば、なかなか頼りになりそうだが……
とてもじゃないが、仲間になってもらう道筋が見えない。
大金を持って女性に声をかけていることから、裕福なのだろう。
「仲間になってよ!」と声を掛けても、子供のごっこ遊びと一蹴されてしまうのが目に見えている。
彼は駄目だ。
同じ年の子供か、いかにも落ち込んでいるような人を探そう。
だが、子供が子供だけで商業区に来るとも思えない……
なかなか見つからないな……うん?
俺はエルゼが足を止めていることに気が付く。
「うん? エルゼ、どうかした?」
「あっ! 申し訳ございません! ある音が耳に残ったもので」
「ある音?」
「聞こえませんか? あちらの方向から?」
エルゼは小路を指さして言った。
あれだけ綺麗な演奏をしたエルゼが聞きつけたのだ。
きっと素晴らしい音なのだろう。
「どれどれ? ……な、なんだこの音はっ!?」
思わず、声を上げてしまった。
小路から聞こえきたのは、ぶうぶうというやかましい音だったのだ。
笛の音なのは間違いないが、非常に下手くそだ。
エルゼも頷く。
「ちょっと、気になりまして……」
「そりゃ気になるよ……子供が特に何も考えず、吹いているのかな?」
俺がそんなことを呟くと、小路からやってきた二人の夫人が不快そうな顔でやってきた。
話し声が聞こえてくる。
「あそこの辺境伯の末っ子……なんて名前だったかしら? 学院を出たのに職にも就かず、毎日笛ばかり」
「しかも、もう一年も経っているのに、全然上達しないなんて……本当、どうかしてるわね」
どうもこの先には問題児がいるようだ。
しかも、職に就いてないという……これは、仲間になってくれるかもしれない。
「エルゼ……でかした! ちょっと見てこよう!」
「あ、ありがとうございます!」
俺たちは小路を進んでいくのだった。




