23 モノづくりの名人でした!
「君、名前は?」
会議場に残った男の子に、俺はそう訊ねた。
「僕ですか? 僕はカイルと申します。この館の掃除係です」
カイルと名乗る男の子は、静かに一礼した。
掃除係か。
【神工】のスキルは活かせてないようだ。
「カイルか。君を、生産部門の長に任命したい」
「せ、生産部門?」
「物を作る仕事を、君に統括してもらいたいんだ」
「も、物作り? ……僕が?」
カイルは首を傾げた。
そしてアルネがすかさず口を挟む。
「で、殿下、さすがに……彼はまだ子供です。しかも何かを作ったりなんて」
カイルもうんうんと頷く。
「殿下のお命令なら、なんなりとお受けいたします。ですが……殿下が求めているようなものを、僕は作れないと思います。何か、物を作る技術を学んだわけでもありませんし」
「いや、すぐ作れるようになる……」
まるで占い師みたいな言い方だ。
でも、本当にカイルのスキルなら、すぐに作れるようになるはずだ。
「誰でもいい。鍛冶職人はいないか?」
俺が訊ねると、アルネは困惑しながらも答える。
「ジャックという名の総督府付きの職人が一人。老齢ですが、腕は確かです」
「よし、彼に鍛冶を教えてもらおう。案内してくれ」
アルネとカイルは互いに顔を見合わせる。
「ま、まあ、殿下は私の魔法の腕も見出したのだ。きっと、何かお考えがおありなのだろう。では、ジャックの元へ行こう」
「は、はい」
俺たちは、さっそく総督府の隣にある小さな小屋に向かった。
そこでは老人が一人、金づちを振るっていた。
武具だけじゃなく、鍬からつるはしまで、何でも作っているようだ。
【鍛冶屋】のスキルの持ち主。鍛冶が上達するスキルで、納得の手際だ。
「ジャック。忙しそうだな」
アルネが声を掛けると、ジャックと呼ばれた老人は見向きもせず、声だけ返す。
「ずっとこんな感じじゃ。今やこの街で金づちを振れるのは、ワシしかおらぬからな」
俺はそんなジャックに言う。
「すぐに鍛冶の腕に見込みのある者を連れてきます」
「悪いが、誰かに教える余裕はないのじゃ。ワシが腕を止めれば、この州の全ての仕事がストップしてしまう」
「承知しています。ですから今日は、すぐに助けになる者を連れてきたのです。カイル」
カイルは不安そうな顔をしながらも、ジャックに言う。
「か、カイルです。ジャックさん」
「カイル……昨年総督府に来た小童か。時間があればワシの持てる全てを教えてやりたいが、無理じゃ」
カイルはどうしようという顔で、俺を見た。
「カイル。ジャックさんの一挙一動を見ていてくれ。一時間もすれば、分かってくるはずだ」
俺が言うと、ジャックが笑い声をあげる。
「ははは! 見るだけなら簡単に思えるが、一時間で理解できるような簡単なものじゃない! まあよい。見て盗むのは、確かに必要じゃからな」
ジャックはそう言って、黙々と金づちを振る。
カイルはその様を真剣に見つめるのだった。




