20 初めての防衛戦でした!
城壁の下へ着くと、弓の弦音や雄たけびが聞こえてきた。
どうやら、すでに戦闘は始まっているらしい。
「皆、急ぐぞ!」
「はい!」
エルゼたちは頷き、俺の後ろに続く。
階段をどうにか上り終えると、防衛する兵たちが。
敵はガーゴイルという有翼の比較的弱いとされる魔物だった。
尻の針には石化させる毒、また血肉を喰らう牙を持っている魔物で、鷹ほどの大きさだ。それがだいたい二百近く、群れでこちらへ飛んできている。
「市内に入らせるな! 必ず食い止めるんだ!」
アルネの叫びに、おうという声が上がる。
民兵のようだが、故郷を守ろうという強い意思が感じられるな。
しかし何とも頼りない。
城壁上の兵はたったの三十人ほどで、皆、碌な装備を持ち合わせていない。短い槍ならまだいいほうで、鍬を持つ者もいた。
弓を持っている者は、せいぜい十五人。皆、向かってくるガーゴイルに全く当てられていない。訓練もあまりしていないようだ。
いくら弱いと評されるガーゴイルでも二百もいるのだ。これでは相手にはならないだろう。
「通すか! 一体も通さん!」
アルネは勇ましく声を上げ、矢を放つ。
だがその叫びも空しく、全く届かなかった。
「……弓はやはりだめだ! このアルネが剣でまとめて相手になろう!!」
と、矢の無駄になると思ったのか、諦めてしまった。指揮もさっきから「死守せよ!」の一点張りで、戦術も何もない。
これでは負けは見えている。
「時間がない……アーグ、お前の出番だ。弓兵をまとめ、指揮を取れ」
「わ、私がですか」
「ああ。あれじゃ、狙撃は無駄だ。敵の密集している場所に、一斉に攻撃させてくれ。斉射すれば、誰かは当てられる」
それらしいことを言ったが、実際はアーグの【弓聖】に味方への弓術のバフがあることを踏まえ、命じただけだ。
アーグは嬉しそうに頷く。
「光栄です……お任せください! 弓を持つ者は、集まれ!!」
早速、アーグは弓兵を集結させた。
リベルも弓を手に言う。
「殿下、私も援護いたします!」
「ああ、リベル。僕も加わる……だが、エルゼだけは一人で敵に狙いを定めてくれ」
エルゼは力強く頷く。
「お任せください、殿下」
そう一言いい残すと、エルゼは弓を手に胸壁に走った。
「お嬢ちゃん、危険だ!」
「まだ、届かない! やめとけ!」
周囲の民兵がそんなことを言う。
しかしエルゼは気にも留めず、弓を構え、矢を放った。
誰もが期待してない顔だった。
だがエルゼの矢は、ガーゴイルの首に突き刺さる。
ガーゴイルは悲鳴を上げると、一撃で墜落していくのだった。
見ていた誰もが、口を唖然とさせた。アルネは顎が外れそうになっている。
あんな子供が、あんな遠くの敵を倒すとは……皆、驚いているのだ。
だがエルゼはそんな反応も気にせず、マシンガンのように矢を撃ち続ける。
しかも一撃も外さず、正確にガーゴイルを落としていった。
周りが思わず目を奪われる中、アーグが叫んだ。
「何をしている! 俺たちも撃つぞ! 矢のない者は、投石の準備を頼む!」
……いかんいかん。俺もすっかり、エルゼに夢中だった。
俺も民兵たちと共に、矢を放つ。
自分も日々訓練しているせいか、アーグの【弓聖】のスキルのおかげかは分からないが、自分も二体ほど仕留めた。
ガーゴイルは俺たちの頑強な抵抗に、三十体ほど失うと撤退していった。
うむ、勝った。エルゼだけで、十体以上は倒していたよな……
「すっげえ……」
民兵の一人が、俺の心の中を代弁するかのように呟いた。
「ああ。しかも……勝った。勝てたんだ……あれだけの数に」
アルネは自分でも信じられないといった顔で、去っていくガーゴイルを見ていた。
「夢じゃない……勝利だ! 我らの勝利だ!」
アルネが叫ぶと、民兵たちは歓声を上げるのだった。




