2 ユニークスキルがありました!
ユニークスキル?
なんだそれは?
俺の【神眼】がそのユニークスキルに当たるのだろうか。
……いや、ちょっと待て。
この模様も【神眼】も、俺は知っている。ちょうど前世にハマっていたゲームで。
『アルカナ・ワールド』──通称アルワナというシミュレーションゲームだ。
主人公は特別な力を持つユニークスキルを選択し、中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界で自由に生きていく。
【神眼】はそのアルワナにあったユニークスキルだ。
だがアルワナには難易度があり、一番難易度の高いインフェルノ以外、主人公はこの【神眼】がなくても他者のユニークスキルを見ることができた。
だから、あまり選択されることのなかったスキルだ。
「まさか……でも、それが本当なら」
俺は早速、部屋を出た。
扉の横に、見慣れた大男が立っている。
名前は知らないが、主に俺の部屋を警備してくれる兵士だ。
もし、俺のスキルが本物なら……
俺は槍を持つ兵士の手をよく見る。
この男のスキルが知りたい──
念じると、ぱっと光が浮かんだ。
これはケーキのような紋章……【パティシエ】か!
説明文も出てくる。
菓子作りが上手くなる、作った菓子が美味しくなる貴重な紋章だ。アルワナの説明と同じ。
もっと戦いに秀でた紋章を持っていたと思ったが、人は見かけによらないな。
一人で興奮していると、兵士はいつもの怖そうな顔を向けてくる。
「……何か?」
「ご、ごめんなさい! ただ、お名前を聞いてなかったなと!」
「私の名前ですか……? ボルヴィンと申します」
「ボルヴィンさんですね! その……お菓子とかって、作ったりします?」
「お菓子? 私がお菓子を……?」
兵士は不可解そうな顔で言った。
機嫌が悪そうに見えるが、彼はもともとこういう顔だ。
「す、すいません! ちょっと聞いただけです! それでは!」
俺は逃げるように、そのまま廊下を走った。
兵士として暮らしていれば、自炊する機会も少ないだろう。
そのユニークスキルを持っているからと言って、それが活かされるとは限らないわけだ。
なら、皇族や貴族ならどうだろうか?
俺は庭園に着くと、周囲を見渡す。
そこでは俺以外の皇族が剣や魔法の訓練をしていた。
まず目に留まったのは、第三皇子ジークフリート。
十五歳にして魔法と剣の腕は帝国最高クラスと名高い。
そんな彼のスキルは──【剣神】か!
【剣神】は剣術に恩恵のあるスキルだ。
剣技の威力や速度が向上し、成長が早くなる。同じような【剣士】の上位互換である。
あの剣の速さだ。納得のスキルだな……
お。あっちは第四皇子ヨハンだ。
今、空から大雨を魔法で降らした。
最高位魔法の使い手と名高いヨハンのスキルは【大賢者】。
膨大な魔力が扱えるようになるスキルだ。
魔法の威力、詠唱速度、成長にもバフがかかる。
こっちも合点がいくな……って。
ヨハンの水魔法が、ジークフリートの袖にかかってしまったようだ。
「おい、ヨハン! 何様のつもりだ!? ここは俺の訓練場所だぞ!?」
「兄上、ここは庭園です。剣の稽古ならいいかげん、別でやってくれませんかね? いくら女に気に入られたいからって」
「それならお前も、別で魔法を使えばいいだろう?」
「私は愛らしい花に水を与えているだけですので!」
二人は互いに詰め寄る。
今にも取っ組み合いになりそうな雰囲気に、周囲の側近たちが割って入った。いや、側近同士も喧嘩し始めたぞ。
険悪だな……
互いに優秀ゆえに対立するのだろう。
まあ、こっちは土俵にも上がれないけどね!
俺は他にも宮廷の者たちのスキルを調べていく。
【魔導師】、【大剣士】、【魔聖】……皇族と貴族には優秀なスキルを持った者が多いな。それも戦闘関連の。
対して、兵士やメイドたちは【農家】、【剣士】、【船員】など、アルワナでは平凡とされたスキルを持つものが多かった。珍しいのは、最初の【パティシエ】を持った兵士ぐらいか。
なるほど……アルワナでは、親のスキルが子供に遺伝することが多かった。
皇族と貴族の先祖はもともと優秀なスキルを持っており、それが子孫に受け継がれたのかもしれない。
とすると、ここはアルワナの世界?
アルワナは魔法もあれば、魔物もいた。
しかも、ゲームスタート時に世界はランダム生成される。
にわかには信じがたいが、可能性はありそうだな……
ともかく、これはありがたい。
優秀なスキルを持っているのにそれを活かせていない者がいるだろう。
彼らに仲間になってもらえば、たとえ辺境に飛ばされても何とかなるかもしれない。
そうと決まれば、早速人脈形成に勤しむとするか!
俺は人材を求め、宮殿をうろつくのだった。




