19 武闘派でした!
「アルネ、さんでしょうか?」
こちらに顔を向けた女の子に訊ねてみる。
長いブロンドの髪を伸ばした、青い瞳の子……控えめに言っても美女だ。
着ている服はぼろで顔はまだ幼いが、【大聖女】に相応しい品格を感じさせる。
アルネは不思議そうな顔で答える。
「どちらのお子様で?」
「第十三皇子のリヒトと申します。この地の新たな総督として参りました」
「あなたが……」
一瞬、アルネは呆気に取られたような顔をする。
無理もない。このような子供が総督かと侮っているのだろう。
しかし、すぐに跪いた。
「し、失礼いたしました……私はアルネ・エルソール。先の総督ギュンターの娘です。……なっ?」
アルネは顔を上げると、俺の後方に目を奪われる。
「あ、あれは……? もしやドラゴン!?」
「はい。ここに来る途中で襲撃され……代官となる予定だったレリウスと従者を失いましたが、何とか倒したのです」
「た、倒したというのですか……あれは兵が百いても敵わなかったのに……」
「優秀な部下のおかげですよ」
俺はそう言って、隣に顔を向ける。
リベルもアーグもエルゼを見るから、アルネは首を傾げた。
まさかエルゼが戦ったとは思えないのだろう。
実際はバルドやフリッツの助けを借りながらだが、一番活躍したのはエルゼで間違いない。
「な、なるほど。ともかく心強い限りです。今、兵は五百もいない。市内はおろか、城壁の見張りすら不足しておりましたから」
アルネは表情を正すと、こう続ける。
「新たな総督のご着任をお祝いいたします。このアルネ、殿下のため命を懸け戦います」
「ありがとうございます、アルネさん」
「アルネで構いません、殿下」
「分かった……アルネは武人なのか?」
「はっ。幼少より、父から武技を教わっておりました。十でともに魔物との戦いに」
「そうか……魔法は? 特に聖魔法を学んだりは」
「魔法など、武骨な私にはできません。私にできることはただ剣を振るうことのみ。殿下のため、魔物を斬り捨てることのみです。そして必ずや、父の仇である魔物どもをこの手で」
そう言って、アルネは鞘を強く強く握った。
ううむ……武闘派だったか。
いきなり、あなたは剣より聖魔法を学んだほうがいいとは言いにくい。
同じく聖魔法のバフの持つフリッツに、やんわりと学ばせたいが……
「僕も必ず、この地の人々を守ることを誓います。どうか、力をお貸しください」
「もったいなきお言葉です」
俺はアルネに手を差し出そうとする。
しかし、突如鐘の音がけたたましく鳴り始めた。
「敵襲だ!! 敵襲ぅっ!! 南門の空から敵襲だ!!」
広場の塔から、そんな声が響く。
すかさずアルネが返した。
「数は!?」
「百……いや、二百! 二百だ!」
その言葉に、アルネは顔を真っ青にする。
「い、今、向かう!! 殿下は、どうか総督府内に身をお隠しください!」
アルネはそう言って、単身で南門へ向かった。
俺はエルゼやバルドに告げる。
「僕たちも行こう。バルドさん、もしよければお力をお借りできないでしょうか」
「ここまで来たのです。なんなりと」
「ありがとうございます。バルドさんと護衛の方々はこの広場で待機していただき、敵が市内に入った場合対処をお願いします」
「お任せあれ!」
バルドと護衛の兵を残し、俺たちはアルネの後を追うのだった。




