15 関所を通りました!
俺たちはリーベルン属州へと向かっていた。
道中は特に襲撃もなく平和な日々を送っていた。
エルゼたちに【大戦士】のスキルを持つバルドから剣技を学ばせたりと。
しかしそれは、長城の内側だから。
今、俺の目の前にそびえる長城の一部、帝南関までの街道だったからだ。
この帝南関は帝国南方を守る要害で、ここを出ると南東六州のある地域に入る。
俺の任された、リーベルン属州に。
エルゼは帝南関の城壁を見上げ、額から汗を流す。
「高い……」
「初めてみましたが……これほどとは」
リベルも関の威容に息を呑んでいるようだ。
俺も驚いた。
城壁は二十メートルはあろう高さあったのだ。
日本なら、七、八階建ての建物になるだろうか。
フリッツは言う。
「ここで宿泊、物資を補給するのでしたね。私が買い付けは済ませておきますから、殿下たちはよろしければ城壁の上にでも。リーベルンが一望できるはずです」
「そうか。なら、そうさせてもらうとしよう」
俺はフリッツの勧めで、帝南関の城壁を上ることにした。
「な、長い……」
階段を上がる俺の口から、思わず言葉が漏れた。
エレベーターなどは当然ない。
馬に乗ってばかりで最近歩いていなかったので、なおさら疲れる。
だが、エルゼら三人は余裕の表情だ。
「殿下……もしよろしければ、私の背中に」
「だ、大丈夫だよ、エルゼ……もう少しだから」
まさか、女の子におぶってもらうわけにはいかない。
俺は皆に負けじと、息を切らしながら階段を上がり切った。
すると、俺たちの目の前に大平野が広がる。
「おお……広い」
どこまでも続く、森と草原。そして右側に目を移すと海が。
ここが俺が任された地リーベルン属州か。
自然豊かな場所だ。資源も豊富だろう。
だが、手前がやけに騒がしいことに気が付く。
視線を落とすと、そこには関の外側に立ち並ぶ集落が。テントや掘立小屋で埋め尽くされている。
そこに住まう人々の顔は、どことなく暗そうだった。
リベルもアーグも言葉を失う。
「あれは……人?」
「おそらく、難民だろう。住まいを失った人たちだ……安全な長城の中に行きたいんだ」
だが、お偉いさんがそれを許さないのだろう。
難民を迎えれば人手が増える一方、土地がなくなる。
最初の数年養うための備蓄があるわけでもない。
今、帝国各地は魔物に脅かされ、難民はどこにでもいるのだ。
彼らの生活を守るため、俺は頑張らないといけない。
俺は決意を新たにした。
翌日、俺たちは帝南関を出て、リーベルン属州の州都ファルスに向かうのだった。




