表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/24

13 任地へ赴くことにしました!

「ということで、僕はリーベルン総督に任命された」

「あ、あの辺境の!?」


 アーグは驚愕するような顔で言った。

 リベルも口を開けて唖然としているが、エルゼはよくわからないといった顔だ。


 フリッツに関しては特に驚く様子もなく、聞いていた。


 俺は詳細を説明する。


「代官にはベーロン公爵の騎士レリウスが任命された。彼はもう任地に赴くらしいが、僕はどうするかと訊ねてきた」


 リベルが言う。


「殿下。かの地は代々勇将が総督を務めてきた地域です。とても名誉なお役目かと存じます。ですが……まだ殿下はお若い。ここは……」

「代官に任せましょう! 直接、赴かれる必要はないはずです!」


 アーグはリベルに同調するように、必死そうな顔でいった。


 その言葉通り、その地の総督だからといって、必ず任地にいる必要はない。

 多くの貴族がそうだが、部下に統治を任せ、自分は帝都で過ごす者も多い。そうでなくても、国家行事で帝都に滞在することは多々ある。


 だが、領主にしろ総督にしろ、最初は必ず任地の民衆に顔を見せる。

 これは慣例で、挨拶のようなものだ。


 また、自分の領地が危機に陥っているのに、帝都でのほほんとしている者はいない。


 貴族なら領地を失って収入源が絶えるだけでなく、爵位が有名無実となってしまう。

 怠慢が知られれば皇帝から爵位の没収もあり得るのだ。

 何より、土地を失った家という烙印が、末代までついて回る。


 総督も同じ。


 領地を失ったと知られれば、失敗した皇子として名が知られる。

 過去、任された地が魔物によって占領された第一皇子が、廃嫡された例もある。


 だから、まずは行かざるを得ない……いや、僕の名誉は二の次だ。


 前の総督が死んで、現地の民衆は混乱しているはずだ。


 僕が行くことで、さらに失望する可能性もあり得る。

 無能の皇子が来た。

 皇帝は我らを見捨てたのだと。


 レリウス代官がどんな男かによっては、任せるのも視野に入れるべきか。


 俺はもともとグロンに近しかったアーグに訊ねる。


「アーグ……レリウスがどんな男か知っているか?」

「れ、レリウスですか……彼はもともと、亜人の奴隷貿易で財を成した帝都の商人の子です。ベーロン公爵領の奴隷貿易は、彼に一任されていて……騎士の身分も金で買ったとか」

「商売上手だと……だが、政治の経験はゼロか」


 彼のユニークスキルを見たが、【弁術士】。

 商人の子だけあって、交渉が上手いのだろう。

 民衆に何かを訴える力はありそうだが……


 ベーロン公爵が彼を代官にした理由がいまいち分からない。


 また、金のあるレリウスが辺境に行きたがるだろうか。

 彼はまったく絶望している顔ではなかった。


 俺を失墜させるという目的の他に、まだ何かありそうだな……金とか。


 もともと辺境は、豊かな地域で仕事に就けなかった者が向かう場所だ。

 また、エルゼのような亜人が流されることも多い。


 奴隷商が亜人の多い辺境の代官に……あやしい匂いが、ぷんぷんするぞ。


 この国では奴隷貿易は合法だ。

 もちろん奴隷だからと何をしてもいいわけではない。傷を付けてはいけないなど、衣食住を与えるなどの法律もある。


 しかし奴隷商や奴隷の主人はそんなこと守らない。酷使することや稼ぐことしか頭にないのだ。


 俺だけ終わるならまだしも、そこに住んでいる人々が食い物にされるのは許せないな。


 ──俺が止めなければ。


「皆、聞いてくれ……俺はリーベルンに赴こうと思う」

「ほ、本気で仰っているのですか!?」


 アーグはたまらずそう聞き返してきた。


 俺は頷く。


「本気だ。だが、皆には強制しない。かの地は先月、総督率いる州軍が全滅……文字通り、一人残らず魔物に殺された地域だ。到着するのも分からない危険な旅になるだろう」


 フリッツはともかく、エルゼ、リベル、アーグはまだ子供だ。危険な目に遭わせたくない。

 いや、俺も子供だが……


 しかしエルゼは迷いのない顔で言った。


「私はお供いたします。殿下のお傍以外、私の居場所はありません」


 その言葉に、リベルははっとした顔をする。


「わ、私も! 騎士として、殿下にお仕えすると誓ったのです! 私もお供いたします!!」


 即答できないのは、アーグだ。


 俺は助け船を出す。


「リベルとアーグは、父の許可も必要だろう。ここですぐに決断してもらわなくてもいい」

「私はお留守、というわけにはいかないのですかね?」


 フリッツはおどけた調子で言った。


 本当に行きたくない……のかもしれないが、これはアーグが断りやすいようにしているのだろう。

 

「い、いやいや! フリッツ先生は絶対来てもらいますよ!」


 リベルが慌てた様子で訴えた。フリッツは「えー」と面倒くさそうに言うだけだ。


 そんな中、アーグは決心したような顔で口を開く。


「殿下……私もご一緒させてください! この命、殿下に救っていただいたのです。ここで逃げては、私はもう男ではない!」


 リベルはよく言ったと言わんばかりに、アーグの背中を叩いた。


 フリッツもそれに続くように呟く。


「ふむ。教え子が皆行くと言っているのに、私だけ残るわけには行きませんね。私も行きます」

「皆、すまない……ありがとう」


 こうして俺たちは、辺境の地リーベルン属州に赴くことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ランキング参加中です。気に入って頂けたら是非ぽちっと応援お願いします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ