11 呼び出されました!
グロンに絡まれたあの日から半年が経ち、俺は八歳となった。
結局、エルゼとアーグの試合は大事にはならなかった。
エルゼの主である俺が騒がなかったので、ただの事故と処理されたようだ。
アーグは俺の騎士になったわけだしな。
まあ、グロンも自分に責任がいかないよう、何かしら手回しはしていたと思うけど。
あれに懲りたのか、今のところグロンは手を出してこない。
俺は比較的平和な日々を送っていたのだ。
新たに俺の騎士となったリベルとアーグは、フリッツの指導の下、弓の訓練に勤しんでいる。
一方のエルゼは、武術はある程度マスターし、聖属性外の魔法も学び始めているようだ。
俺?
大器晩成型だよ、きっと……畜生め。
今は宮殿の馬場で、皆、馬術の訓練中だ。
俺も慣れないなりに、頑張っている。
フリッツは俺の隣に馬を並ばせた。
「殿下、胸を張ってください。姿勢が乱れていては、上手く操れませんよ」
「お、おう……ううむ……」
体が小さいこともあるせいか視界が高く、なんだか怖い。
前世も乗馬の訓練なんてしてなかったから、なおさらだ。
「な、なかなか進みませんね」
エルゼとアーグも同様に苦戦しているようだ。
エルゼに関しては、今まで何もかも出来すぎただけに、初めて苦戦しているところを見た気がする。
まあエルゼはもう十分すごい……しかも、偉い。
時間があればこうして訓練。
普段はメイドとして、俺の身の回りの世話もしているのだから。
俺はほとんど何かを要求することはないが、それでも大変だろう。
エルゼを休ませるため、もう一人使用人が欲しいところだ。
さて、馬術の上達が早くなる【牧童】を持つリベルだが……
やはり別格だった。
俺の勧めでこの半年訓練を重ねたのだが、すでに大人顔負けの乗りこなしだ。
馬を駆り、次々と障害を飛び越えている。
リベルは自信満々な顔をして、馬でやってくる。
「殿下! いかがでしょうか!?」
「見事だったぞ、リベル。すごい上達ぶりじゃないか」
「これも殿下が勧めてくださったおかげです! まだ早いと父からは言われていたのですが、おかげさまで……」
リベルは恥ずかしそうに、馬場の外に目をやった。
同年代の女の子が、皆リベルを見て、きゃあきゃあと言っている。
「もてもてだな」
「いやあ……本当に殿下のおかげですよ!」
嬉しそうにリベルは言った。
いいなあ……
いや、子供に嫉妬するって俺……
俺は首をぶんぶんと横に振った。
それよりも、俺も自分に自信が持てた。
最初は半信半疑だったのだ。
でも、エルゼたちとの出会いで、俺のユニークスキルが見れる力は本物だと確信した。
すでに優秀なスキルを持つ四人が、俺の騎士になってくれたんだ。
この調子で仲間を増やしたいところだな……うん?
侍従の一人が、こちらに頭を下げていた。
俺が馬を降りて向かうと、侍従は顔を上げて言った。
「殿下。陛下がお呼びです」
「陛下、が?」
皇族といえど、子供は滅多に皇帝と会うことはない。
よっぽど愛されている子以外は、基本的に公的な場で遠くから眺めるのがほとんどだ。
大人になっても、皇位継承順位が下位の者は相手にされない。
俺は継承順位が下位の第十三皇子、
しかも無能ときた。
今まで、全く父と話したことないことからも、期待されてないことは明らかだ。
きっと、いいことではないな……
俺は侍従に案内されるまま、皇帝の間へと向かうのだった。




