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実話ネタ

ネトゲのツレは、今も妻。

作者: ぎぎ

ノンフィクションです。

現実です。


「事実は小説より奇なり」大抵の人が聞いたことがあるフレーズだ。

 現実の世界で実際に起こる出来事は、空想によって書かれた小説よりもかえって不思議であるという意味のことわざである。


 ここでは私の身に起きた……いや、起こした?事件というか妻との出会いの話である。


「リア充爆散しろ」「ノロケかよ」と思い我慢出来なそうなら、ここでお帰り願いたい。


 タイトルだけ見れば「ネトゲでいつも遊ぶツレとオフ会で意気投合して、恋人になって結婚しただけだろ?」ってなりますよね。

 実際、そういうカップル結構いますからね。


 私と妻は違いました、オフ会に参加したことないですし。

 本当にあったことを誰かに話しても理解して貰えないと思い「リアルでも息があったので付き合いはじめた」と周囲には話しています。


 初めてリアルで会った、その日の1場面を描写すると皆さん「は?」ってなります。



※※※

 暑い夏の夜、時折吹く海からの風が気持ち良い。目を開いているが何も映していない、絶望感を強くにじませた瞳をしている彼女。

 私はそんな彼女の胸を触った、いや揉んだ。

※※※



 言いましたか?「は?」って。

 あぁ、これは確実に痴漢行為です。絶対にやってはいけません。


「ちょっ、おまっ!?」「お巡りさんここです」

「痴漢野郎と結婚!」「まさか『魅了』スキル」


 色々言いたいことはあるでしょう。ここからはネトゲでの出会いから始まります。

 ノロケや軽いウツがあります。「お前キモイ」「妄想乙」とか言いたいだけの人はブラウザバックしてください。


「ここまで読んだら続きが気になる」あなたは、下にスクロールしてください。



























 十数年前、私は親戚の会社で見習いという準社畜をしておりました。多少睡眠時間はあったので「準」が丁度よいでしょう。


 なんと言っても「お給料」がスゴイ!時給に換算すると『1時間175円』あの『横島忠◯君』よりも安い!

 ナイスバディの上司もいないのに!


 仕事もきつく、ややウツになり、私はネトゲの世界に現実逃避しました。ちょうど誰でも知ってる『最終幻想オンライン』が発売されたのです。


 ネトゲを始めるも右も左も分からない私。まして先行発売していたコンシューマ機版のプレイヤーは雲の上の存在。


 うまく楽しめずソロでうろうろ。否定的な思考になっていた私は、他プレイヤーに話し掛けられずゲームがつらくなっていました。


 そんな私に転機が訪れます。のちに妻となる彼女のアバターに出会います。


 特定の魔物素材を集めていた彼女は、見るから初心者の私に声を掛けてきました。

 高レベルジョブで雑魚を乱獲していたので、私のレベリングの邪魔になっていないかの確認でした。


 彼女の気づかいに感謝し、優しく見えた先輩プレイヤーに初心者の心得た方がいい事を聞いてみました。


 快く質問に答えてくれる彼女。会話しながらも狩りは私の獲物以外をガンガン狩っていました。

 私に絡むアクティブな魔物もサッとフォロー。

 彼女はキラキラ輝いて見えました。


 しかも彼女、「数日は素材集めするからその間色々レクチャーしてあげる」とまで。

 フレンド登録し沢山のことを教わり、あっという間に数日は過ぎ去り彼女は本拠地に帰りました。


 彼女のような優しいプレイヤーになると決意し、睡眠時間を削ってのめり込みました。

 だんだん仲間を増やして楽しくプレイ出来るようになるまで、大した時間はかかりませんでした。


 彼女とのレベル差は埋まり、一緒に遊ぶことも増えあっというまに月日は4年は過ぎたでしょうか。4年間の途中で、彼女に癒された私は仕事を辞め、実家を継ぎました。


 体調も戻りネトゲに使える時間も増えました。ビバ農業スローライフ!自然は厳しいですが!


 その間に会話があれば、交流は深まりプライベートな話も多くするようになりました。

 出身地や食事の好みから学生時代の話まで、ゲームを進めず2時間も会話だけしてログアウトなんてこともありました。


 そのうち性別などまで知り、下ネタOKなメンバーだけでくだらない話もするようになった。。彼女の勤め先はセクハラ社員がいて回避するのが大変だという愚痴を聴いたりする事も。


 彼女はリアルで女性で胸もまあまああるなどと言った時は喜んだのですが、何年も付き合ってる彼氏がいるという絶望も頂きました。

 ごちそうさまです。


 すでに恋心があった私は当然、気持ちを封印。彼氏さんとの結婚報告を待とう、そんな胸の痛みにたえながら……将来ジジイになり「あの頃はあんな失恋もあったな」なんて甘酸っぱい思い出にひたるのも良いだろうと。



 また転機が訪れます。


 出会ってから5年目の夏でした。


 ある日彼女に話し掛けるも、素っ気ない返事しか返ってこない。いつも明るくテンポの良い返しをする彼女らしくない反応だった。

 「ああ」「うん」「なんでもない」ばかり。


 そんな生返事しかしない彼女。今までの習慣でただログインしているだけに見えた。

 そんな日々が過ぎていき、ある日彼女はゲーム内の中でも特に綺麗で大きな滝の前にいた。

 私はこの時その場所に向かい、彼女にいったい何があったのか問う事を今回で最後にしようと考えていた。。

 

 ただ滝の前に並んだ2人のアバター。彼女は黙ったまま立っている、私も隣に立って黙っている。


 この時を私は驚いていた。自分の脳内補正なのは分かる。彼女のアバターの周りは暗くみえ、肩をおとしてみえた。

 人間の脳はすごいなと思いつつ、ここまで恋心を拗らせた私、超キモイとも思った。


 数時間がたち、深夜になり彼女はポツポツ話し始めた。最初は「明日仕事でしょ寝なよ」と彼女らしい返し。

 まぁいなくなれの意味もあっただろう。


 私もなるべくいつもの調子で返す。

「居たいから一緒にいるだけだし」私も感情を隠しながら。


「もう2時だよ」「眠くないし」「ねなよ」を何度も繰り返した。

 午前4時になる頃、耐えきれなくなったのか「彼氏に捨てられた」とこぼした。


 少しだけ安心した「どこかで乱暴された」ではなかった。


 そのあとは「死にたい」「親より先には死ねない」や、淡白で芸術家肌の元彼の愚痴をしばらく聴いた。


「新しい事したいから別れよう」って何言ってんだ。会ったら、ぜってー鼻骨折れるまで殴ると決めた。顔しらんが。


 少しだけスッキリしたらしく、またしても私の心配。「明日約束あるんでしょ、起きれなくなるよ」なんて言ってくる。


 そんな彼女に引き際を感じた私は、メッセージ機能を使い携帯の電話番号とメアドを送りつけた。

「死にたくなったら連絡しろよ。さすがにもう寝るわ」とログアウトする事にした。


 次の日、男友達にお土産をもらうためだけに遠い空港にいた。用事はすぐ済み、メールをみると「もう大丈夫」と返信があった。


「ならば大丈夫な顔を見せて欲しい」と返せば、あっさり近くの大きな駅で待ち合わせになった。

 拍子抜けな私、でも彼女に会える。嬉しい。


 後々、理由を聞いてみたら「隠しきれる、もう心配されないですむだろ」だった。


 会ってみて、すごくびっくりした。病弱だったから入退院繰り返していたと聞いていたので、背は低めで痩せすぎくらいの体型を想像しいてた。


 背、私と大差ないじゃん。私は背が低いからヒール履かれたら抜かれるね?

 むっちりワガママボディじゃんか、「まあまあな胸」え?Gよりありそうだよ?そびえたってるじゃんか。


 なんで捨てたの元彼??目鼻パッチリエキゾチック美人さんじゃん。元彼あたまおかしい。

 遠目でこんだけ美人だってわかんだよ??


 近づき「リアルでは初めまして」と挨拶し合う。驚愕したよ、「隠し通せるつもり」な彼女。


 まず目の下のクマクマクマァー、初めて見る濃さ、もはやアザ。

 髪、ブラシはしたがバッサバッサ潤い0。

 肩、「ヤマネーーー!」と、叫びたくなるほど落ちた肩と猫背。


 全然全然隠せてない!初対面でもわかるわ!



 男友達にただ会っただけの私に、デートぽいコースに誘う彼女。余裕もあるんだよってポーズ、バレバレです。会話は確かに以前の話し方、テンポ、ただ声に感情がない。


 私を見る目、霧が掛かったような濁った瞳。何も映して無いのがわかる。

 「仮面の様な笑顔」実際に見ることがあるなんて……。


 一見楽しそうに振る舞う彼女。まるで中身はからっぽで糸で操られたようにデートらしさを演じている。


 じくじくとした心の痛みに耐えながら、夜の帳も降り物語の始まりより前のワンシーンへと戻る。


 デートらしき事が終わり、夏の日差しは完全に落ち、真っ暗である。

 海風気持ち良いベンチに座る私と彼女。


「もう大丈夫。心配要らないよ」を繰り返す彼女。私を見つめるが霧が掛かったように私を見ていない。


 たびたび肩?首?が凝っている様な仕草をしていた彼女に私は肩を揉むよと提案。彼女も余程辛いのかすんなり応じる。

 ベンチの後ろにまわり、肩に触れた私。


 涙を堪えたよ?


 成人男性、力仕事男子の感じた手応えは……

「鉄塊」

 全く沈まない親指。おかしいだろ……


 かなり力を入れて揉む。普通の人なら「痛いわ、バカッ!」と言われる位に力を入れてみた。

 反応がない。うめき声ひとつ無い。痛覚が完全に麻痺しているに違いない。


 人体は、痛みを感じなくなるほど、凝り固まることが出来るなんて初めて知った。


 彼女の後ろに立っていて良かった、歪んだ私の顔を見られないで済む。目をぎゅっとつぶり、涙を我慢するしかなかった。



 私が限界だった。彼女は「死」の方しか向いてなかった。邪魔者な私を退け、もしも両親がいなければ、すぐにでも自殺しかねなかった。


 私は、焦っていた。終電までに彼女をどうにかできるのか?時間がない。次の機会は無い。

「隠し通した。安心したはず。もう会う必要はない」と彼女の中で結論を出されているはず。


 恐らく今日で何か決められないと終わる。この場にいない彼女の心を引きずり出さねば、何かの拍子に彼女はいなくなってしまう可能性ある。

 ネトゲとはいえ長い付き合いだ、それは分かっていた。


 タイムリミットからの焦りといままでの気持ちから、私は「斜め上の選択肢」を選んだ、いや、それが名案だと確信してしまったのだ。


 バカな私は焦る思考に流され、平坦な「無感情」より、瞬間的な「怒り」はきっとエネルギーがあり、一時でも彼女本来の感情が前に出るはずと彼女の胸を揉む事を決めた。

 ほんとバカ。


 思い切りビンタされてこいつ痴漢ですと通報される覚悟。

「あんだけ心配してたのは、捨てられた女につけこむつもりだった。ゲス野郎め!」となれば私は大成功。

 しばらくは怒りと憎しみに支配され、勢いに任せ母親か友人にここまでの顛末を話してしまうはずだ。彼女を癒やすのはそちらにまかせる。


 私は自分の未来はすべて捨てる事にした。それだけ彼女に過去の私は癒された。たくさん楽しい思いをさせてもらった。今の私は全部彼女にもらったものだ、返す時が来ただけ。

 



 私は彼女の胸を触った、いやしっかり揉んだ。彼女にちゃんと認識させるため。

 

 ビクッと跳ねる彼女。当然だ、今日初めて会った男に胸を揉まれたのだから。心臓止まるほど驚いただろう。

 良し、狙った方向に動いた。


 ビクッとした彼女は私の手を身動ぎして避けるだけで「胸じゃなく肩を揉んでよ」と言った。ビンタは?怒んないの?あるぇ??


「あ、はい」と肩揉みを再開する私。後ろに立っているから彼女の表情が分からない。わからない。


 結局110番はしなかった?なんで?失敗した?


 そのあとはしばらく肩を揉み、終電になってしまうので帰ることに。

 肩揉みをやめ彼女の顔を恐る恐る見ると、目に生気がある。

 ますます分からなくなる私。痴漢ですよ私。通報しないの?


 駅へ並んで歩き出す。すぐ横にいる彼女の手を握ってみる。


 なんにも言われない。振り払われない。繋いだまま。駅に着き「じゃあね」「バイバイ」と普通の友人の様に別れた。


 帰りの電車の中、頭の中に疑問符を大量生産した私は、彼女の行動を「危ないヤツ、今抵抗するのはヤバい。別れてから通報すれば安全」という考えに至ったんだろうと結論づけた。

 下車した駅にも自宅にもお巡りさんはいなかった。



 次の週末、何故か普通にデート。私の住む街まで新幹線で来た彼女。改札口で待っていた私は彼女の服装に驚いた。


 胸の谷間に視線が固定されかねないキャミソール。

 膝上10センチの黒いフェイクレザー製ミニスカート。

 長い足は網目が特大サイズの黒い網タイツ&ハイヒール。


「あるぇ?私、ロックオンされてる!?」と、おののいた。

 記憶力が良いとは聞いていたが、ネトゲで雑談や下ネタでちょこっと話しただけだよね?

 彼女がエサを前にした雌のカマキリに見えた。


 このあとは、自宅で今までの思いを告白し恋人となり繋がった。で、月日は過ぎ、彼女は妊娠、結婚し出産した。順番、間違ってないよ。さきにできちゃったの。


 初めてリアルで会った日の事を彼女に聞くと「胸に触られた瞬間、電気が体を走り、頭にかかっていたモヤが消え、目が覚めた」と自身に起きた現象は説明してくれた。


 だが、「目が覚めた」後から恋人になるまでの1週間の『感情の動き』や『何を考えていたか』などを、現在までに数回聞いてみたことがあるのだが教えてくれない。


 それを聞くと彼女は毎回決まった行動をとる。

 私を引っ張り寄せ、抱きすくめ耳元でゾッとする妖艶な色気の声で、「ナ・イ・ショ」とささやき、ベッドに引きずり込まれる。


 この1週間の彼女の気持ち、誰か予想できませんかね?



「ネトゲのツレは、13年経った今も妻で2児の母」でした。




 ここまではノロケと体験を書いてみたいが半分ずつでした。

 ここからは、この体験から読んでる皆さんに伝えたい事です。


 「俺は1人だ」なんて言ってるあなた、無人島じゃないんですから誰かしかあなたを見てます。性別や年齢は色々でしょうが、辛そうにしてるあなたを心配してる人、必ずいます。

 「仕事ツラいのに後輩がうざい」その後輩、実はあなたを心配してるだけかもしれませんよ?しつこく絡むのはどんな声を掛けたらいいのか分からないだけかもしれません。


 先輩のあなたはちょっと顔をあげて、後輩に「愚痴を聞いてくれないか」というのもいいかもしれません。

 後輩のあなたは少しだけ勇気を出して「心配なんです」とストレートに言いましょう。余裕の無くなっている先輩は、回りくどい言い方の本質に気づく余裕もありません。


 何も話さず黙りこみうずくまる友人に、あれこれ声を掛けて話を聞き出そうとするのもいいですが、一緒に黙って同じ時間を静かに共有するのも1つの方法です。

 必死なあなたの気持ちは声にしなくとも届くこともありますよ。


 「ソシャゲでログインする度クエストにしつこく誘われる」それ、あなたの生存確認出来て喜んでるプレイヤーかもしれませんよ?

 「仕事つらい」と漏らしたあなたの無事を、喜び過ぎて加減が分からなくなっているのかも。


 ベンチで泣いてる知人がいたら、隣に座ってあなたは空でも眺めていてください。誰でもひとりぼっちで泣くのはつらいです。

 居てくれただけで救われる事もありますよ。


 見返り無く行動しろとは言ってません。私がそうしたように、救われた人はあなたが辛い時に助けにきます。

 情けは人のためならずです。かけた情けはあなたに返ってきます。


 あなたの助けたい気持ちが届いて、お嫁さんや旦那さんが出来るかもしれないですね。一生涯の親友の可能性もありますね。

 なにしろ、ここに実例があるのですから。世界は何が起きるかわかりませんよ。


 最後に、「手を差しのべる事をためらうな」を締めの言葉にしたいと思います。



 あ、手を出して他人の胸を揉んではいけません。犯罪です。




 読了ありがとうございました。


 感想や彼女の気持ちの予想を頂けると嬉しいです。


「誰も話す相手がいない」という方は、私にメッセージしてくれても良いですよ。『斜め上』な返事になる可能性も高いですが……。

 あなたが救われる程の言葉は返せませんが、愚痴やつらさを聴くだけなら出来ます。守秘義務は当然守ります。


 あ、お金が無くて……とかは無理です。私もありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやぁ、まるで小説のようなエッセイでした。 最初から最後まで面白かったです(この感想はありなのか? 最後の締めもよかったですね。 「救いの手を伸ばすことをためらうな」 強烈なメッセージと共…
[良い点] おお!好きなタイプのエッセイです。 探せばまだまだ眠ってるんだろうなぁ。 [気になる点] 時給175円!? 1日16時間、月25日働いて月給7万円!? ココから税金引かれたら、、、 [一言…
[良い点] 見ちゃいました(/▽゜\)チラッ ぎぎさん!とーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっても!素敵なお話しをありがとうございます。(>_<) 尊敬します!…
2021/05/03 19:11 退会済み
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