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2.招かれたパーティーで。








 ――それから数日後。

 リターナとダイスは、王城へと招かれていた。

 その理由というのはやはり、貧困街の少年を養子としたことについて。国王であるダンは、比較的リターナに対して寛容ではあった。

 されども、今回に至ってはやりすぎだと指摘したのである。


 もっともそれは、名目上でのことだったが。



「……して、リターナ。聡明なキミのことだ、理由があるのだろう?」



 謁見の間にて。

 他に衛兵などもいない場で、優しく国王は語り掛けた。



「えぇ、国王陛下。理由は当然にございます」



 それに対して、いつになく恭しい態度で答えるリターナ。隣にいるダイスは、さすがに緊張した面持ちで様子を見ていた。

 そんな少年に対しても、国王は目を細めて笑いかける。


「ダイスと言ったか。緊張せずとも良い」

「いいえ。一国の主たる御仁を前にして緊張しないほど、ボクは大人ではございません。どうか、言葉数少ないことをお許しください」

「はっはっは! ずいぶんと出来た少年ではないか!」



 ダイスの答えに、ダンは大声で笑った。

 そして玉座より少年のもとへと歩み寄り、その頭を撫でる。



「どうやら、見つけ出したようだな?」

「…………はい」



 国王は静かに、リターナへと訊ねた。

 それに小さく頷いて、彼女は一つ息をつく。



「本題に入らせていただきます」



 そして、ゆっくりと語り始めた。







「――やあ。まさか、本当に来るとはね」

「せっかくお招きいただきましたから。今日は楽しませていただきます」

「…………ふん。つまらない」



 さらに、数日後のことである。

 リターナとダイスは、伯爵家主催のパーティーに招かれた。

 そこで出迎えたのは当然、シオンだ。彼は二人を認めると、やはり小馬鹿にしたように笑ってみせる。しかし意にも介さない聖女に、シオンは唇を噛んだ。



「ところで、今日はどのような風の吹き回しですか?」



 そんな彼に問いかけるリターナ。

 するとシオンは、一つ鼻で笑ってこう言うのだった。



「あの日、ボクを馬鹿にしたことを後悔させてやろうと思ってね」

「あら? ずいぶんと根に持つのですね」

「ふん……。そうやって、笑っていられるのも今のうちだ」



 売り言葉に買い言葉。

 シオンは最後に捨て台詞を吐くと、去っていった。

 彼が見えなくなってから、リターナは小さな声でダイスに話しかける。



「緊張してる?」



 すると、少年は首を左右に振った。



「いいえ。リターナさんに教えていただいたこと、しっかりとやれば大丈夫だって、分かっていますから」

「そう、良かった」



 言って彼は確かめるように、リターナにこう訊ねる。



「いいんですね?」――と。



 聖女はそれに、小さく微笑んで答えるのだった。




「えぇ、もちろん。だから、それまでは――」




 少年の手を取って。



「一緒に、パーティーを楽しみましょう!」









 それからしばらくして、優雅な曲が流れ始めた頃。

 踊り場では、リターナとダイスが見事なダンスを披露していた。他にも多くの者たちが踊っているものの、二人のそれは独特ながら美しい。

 それを二階から見下ろすシオンは、忌々し気に唇を噛んだ。



「くっ……。小生意気なガキが」



 彼の算段では、ここで二人が無様を晒すはずだった。

 しかし蓋を開けてみれば、そこには大勢から喝采を浴びるリターナたち。シオンにとっては、そのことが不愉快極まりなかった。

 だから、一つ使用人に指示を出す。



「よろしいのですか?」

「あぁ、許す。だから――」



 青年は、口角を歪めてこう言った。




「徹底的に、潰してやれ」――と。



 


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「なろうらしくない小説(性癖)」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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