伝説との対面
「なんで、こんな物が部屋の真ん中に置いてあるんだろ? 美術品って訳でも無さそうだけど……」
そう言って、みのりんが台座の上の水晶に、何気なく触れる。
すると、その水晶が淡い光を放ち、その上に人型のホログラムが浮かび上がった。
ただし、その姿は影で覆われており、人相どころか、体格や性別すら判断できない。
「え、ちょ、何やったんだよ、みのりん!」
驚いたようにカナが駆け寄って来るが、その表情は不安よりも、期待や興奮の色が強い。
むしろ、『そんな面白そうな事は、俺様にやらせてくれ!』とでも言いたげだ。
「いや、ただ水晶に触っただけだよ」
そんな、カナのテンションに苦笑しつつ、“どうどう”と宥めるみのりん。
一方、ラックとベイドは冷静に台座や水晶を観察していた。
「これは……随分と興味深いアイテムだね。元々ダンジョンに備わっていた古代の遺物なのか、あるいは伝説の商人が収集したレアアイテムなのか。どちらにしろ、相当な値が付きそうだ」
「ベイドさん、品定めも結構ですけど、今は、この人影について気にしましょうよ……」
呆れたようにツッコむラックだが、ベイドは気にする様子もなく、一人でブツブツと呟いている。
これは何を言っても聞かないなと思ったのか、諦めたように溜息を吐くラック。
そこで、気を取り直して、みのりんと同じように水晶に手を伸ばす。
水晶に触れる事で、また何かしらの反応が起きるのではないかと期待しての事だろう。
そして、実際に、その通りとなった。
『勇敢なる商人と、その仲間たち。ようこそ、私の、いや……私達の隠れ家へ』
「……喋った? 今、喋りましたよね、この人影!?」
「あー、うん、そだね」
未知との遭遇を果たしたと言わんばかりのラックとは対照的に、普段と変わらないテンションの、みのりん。
「なんだよ、ラック。これくらいでビビってんじゃねぇよ」
そして、カナに至っては、むしろ狼狽するラックを窘めている。
「いやいやいや! そりゃあ、こんな人影が急に喋り出したら驚きますって! お二人の肝が座ってるだけです!」
「うーん、これに関しては肝がどうとかじゃなくて慣れてるだけなんだけどね。ホログラムとか現実で見慣れてるし」
「だよなー。なんなら実物と変わらない質感まで再現してる奴もあるくらいだぜ。これは単純な映像だけだし、別に襲って来たりしねぇから心配すんなって」
「な、何を言ってるのか良く分かりませんが、ひとまず危険は無いという事ですね。……了解です」
「そもそも、敵意の有無くらい見れば分かるだろう。そんなだから君は剣士としても二流なんだ」
いつの間にか我に返っていたらしいベイドが、しれっと会話に加わり、いつものように嫌味を飛ばす。
「くっ、事実だから言い返せない……!」
「まぁまぁ、そんな事より、話の続きを聞いてみようよ。なんか空気を読んで待ってくれてるみたいだし」
みのりんの言うとおり、ホログラムの音声は一時停止状態になっているようだ。
おそらく、AIか何かで周囲の環境を認識しているのだろう。
みのりん達が口を閉じると、ホログラムは改めて音声を再生し始めた。




