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第二話。予想外すぎる突然の来訪者。

「あ、そうだ。とんでもねえことって言えばだ」

「なによ突然?」

 ブランドラ親子とゴーレムたちを家に行くように手で促しながら、不可解な話題の振り方を尋ねる。みんな家に入り切れる大きさなのが幸いだよね。

 

「ここに、町騎士団から何人か調査に来るって話だぜ」

 町騎士団、町を守る騎士と魔法使い混合の騎士団のこと。

 って! なんてことをなにげなく言うのよもうっ!

「え? ちょっと、どうして? あたしもうちのみんなも、なんにも悪いことしてないっ」

 

「お前、世間からここがなんて言われてるか知ってるか?」

「え? なにって? 話が見えないんだけどっ?」

 動揺するあまり、声に力が入りっぱなしになっちゃってるっ。

 

「全てを冬にしようとする何者かが、領域を拡大するために戦力を整えている場所。そう思われてるんだよ」

 

「……なんでよ? わっけわかんない。どうしたらそうなるの?」

 頭がついていかない。

 

「いつのまにか出来上がってたよくわかんない、常に雪が降ってる領域からドラゴン出て来たら、お前、どう思う?」

「そりゃ……怖い、よ。って、もしかしてブランドラ見たってだけでそんな話が広まったのっ?!」

「そういうことだよ」

「な?!」

 

「お前を知らねえ奴からすれば、たっけー雪の壁はあるわ、その先じゃあ常に雪が降ってるわドラゴンそん中入って行くわ、妙な作り話が出来上がってもおかしくねえ」

 

「で、その信義を確かめるために町騎士団が、何人かここに向かってる、ってことなのね?」

「ああ」

 納得できない。納得はできないけど、どうしてそんなことになってるのかの理由はわかった。

 

「ってことは、今日ここで。あたしたちの身の潔白を証明しないといけないってことよね?」

「そうだな」

「あぁ! 体がムズムズするっ! 動揺と緊張でっ!」

 

 なんでああ言う人達って、すれ違うだけでも緊張するんだろう、早くいなくなってほしいって思うよね。

 

「別に緊張することねえだろ、なんにもわりいことしてねえんだから」

「あんたに常人の感覚ってもんはないのっ」

「ひでえ言われようだな……。で、さ」

「なに? 改まって?」

 

「あのたっけー雪の壁だ、壊すのにも一苦労だろうぜ」

「なによ、急に?」

「だから、こっちから迎えてやるんだよ。そうすりゃシュネー、覚悟もできるだろ?」

「……そうだね。それが一番いいか。って、覚悟とかいやな言い方しないでよ」

 

 話が急展開すぎるっ!

 

「で? いつごろ来そうなの?」

 なんとか冷静を装いたいけど、鼓動が強く そして早く鳴り始めてる。

「今朝父ちゃんから話を聞いたんだけど、特に現状危険もないわけだし後回しだろうから、夕方ぐらいじゃねえかってさ」

 

 まずい、おちつかないと……おちつかないと……。

「おい、聞いてるか? 目が変な方向いてるけど?」

 

「えっ、あ、え、えっと。……なに?」

「あのなぁ」

 フランに呆れられるなんて心外だ。と、言いたいところだけど今のこの状況じゃ反論できない。

 

「町騎士、たぶん夕方ごろに来るんじゃないか、って父ちゃん言ってたぞ」

「夕方? って。そんなに時間ないじゃないっ! あたしたちが壁降りた辺りで鉢合わせする感じだよそれって?」

「慌てんな。まだ太陽そこまで傾いてねえよ。歩いて行くんでも余裕だ」

「ほんとに?」

 

「ああ。そっか。お前ずっと黒みてえな灰色の空ばっかで、時間の量り方忘れてっかもしんねえから、疑うのもしかたねえけどさ。って……あれ?」

「どうしたの?」

「そういや雪、止んでるよな?」

 

「今気が付いたの!?」

 びっくりして軽く飛び上がっちゃった。

 

「ああ、ぜんぜん気が付かなかったぜ。制御できたってのは暴走のことも含まってたんだな」

 驚きと感心が混ざった声と顔で言うので、「鈍感だなぁ、ほんと」って苦笑で言うあたし。苦笑しか出てこないもん。

 

「むしろ魔力が制御できたんだから、暴走は収まるでしょ」

 呆れて言うあたしに、「あ、ああ。そっか。そうだな」って苦笑いするフラン。

 

「雪の壁超えること考えると、誰か運ぶ役がいるな。どうする?」

 一呼吸おいた後でこう言う。気を取り直したみたい。

 

「ママンドラつれていこうかな、ブランドラなら飛べるから下りる時もあぶなくないし」

「なるほど、そうだな」

「それに騎士団ならブランドラが無害なドラゴンってぐらいは知ってるだろうしね」

「じゃ、頼むわ」

「うん」

 

 ってなわけで。ママンドラに出て来るようにお願いするため、家の中に行くあたしであった。

 ーーとんでもないことになったなぁ。

 

「うわっ!」

 家に入ったら、靴が雪で濡れてたせいで滑っちゃって、なんとか顔から転ぶことはさけられたけど思いっきり床に手を叩きつけたから、ちょっとの間きつく目を瞑るほど痛い。

 いつもはこんなヘマしないんだけどなぁ。やっぱり、緊張してるんだ。

 

「っつぅ……」

 体勢は立て直したけど、手はまだヒリヒリする。家の中のみんなが……って言ってもゴーレムはわかんないけど、心配そうに見てる感じがして、大丈夫大丈夫っと苦笑いで言う。

 

「それで、なんだけどさ」

 家に入れって言ったばっかりだから、ちょっとばつが悪い。でも言わないとだから、でママンドラを見つめて事情を話した。

 

 どこまであたしの言葉を理解してるのかわかんないけど、ママンドラはあたしのお願いを聞いてゆっくりとあたしの方、家の玄関方向に動き出した。

 

「わかってくれてよかった」

 安堵の息交じりに声が出てた。そうしてあたしは、ママンドラといっしょに外に出た。

 

 

 

***

 

 

 

「よっ」

 あれから後、冬の足跡を歩いて進むことになって、その間に緊張をなんとかしたいと思ってたんだけど結局ちょっと和らいだ程度で、今こうして、

「っと」

 二メトルぐらいのママンドラの背中から飛び降りることになってる。

 

「地面が……硬い」

 あたしの動ける範囲は全部足元は雪だったから、雪以外の地を踏んだのは久しぶりで。

 

 しっかりとした、足音が吸収されない地面が面白くって、何回かポンポン蹴ってたら、

「おわっっと!」

 踏み方間違えたみたいで転びそうになっちゃった……いや、実際ママンドラが前にいなかったらすっ転んでたんだけど……。

 

 ああ、やっぱりブランドラ親子のもふもふはきもちいいなぁ。

 

「って、なんか暑い」

 じわっと汗ばんできたから、ママンドラから体を離す。こんなにすぐ汗かくもんだったっけ?

 

「っと。ブランドラ乗ってるとやっぱ早えなぁ」

 言葉の後にブンっと両腕を振るったフラン。するとゆらゆらと彼の手にあった炎が、ジュッと掻き消えた。

 

「よくあんた、三メトルぐらいあるこの壁炎纏った手足だけで上り下りしてるわよね」

「褒めてもいいんだぜ?」

「アアスゴイスゴイ」

「っんにゃろぉ」

 

 あまりに分かりやすいフランの態度に、あたしは思わずクスっとしちゃった。

 

「さて、と」

 一息ついてから、ちらっと空を見た。

「そろそろかな?」

 薄く空の色が移り変わったのを確認したあたしは、そう呟いた。

 

 

 ーーまず、せっかく和らいでたのに緊張感戻って来たっ!

 

 

 小さく聞こえる。

 鎧を着た人独特の足音。

「き……た」

 同時に見えた。

 鎧を着た人二人と、それより遥かに軽装の、おそらく魔法使いの人が一人。

 

「きたな」

 あたしとまったく逆で、まるっきり普段通りのフラン。

 

「あんた、なんでおちついてんのそんなにっ、さっきはあんなに慌ててたのにっ!」

 思わずママンドラの後ろに隠れてしまった。

 

「なんかな。大丈夫だって思ってたら、自然と力が抜けたんだ」

「そういうとこだけは強いのね」

「だから『だけ』は余計だっつってんだろうが、まったく」

 喉かわいてきた。口の中から喉から、カラカラで、息をするとなんか 喉が痛い。

 

 喉潤したい……雪の壁でも食べようかなぁ?

 

「食うなよ、雪」

「っ、ゲッホゲホッ、なに? あんたあたしの心でも読んだのっ?」

 

「力が抜けたって言ったけど、俺だって緊張がなくなったわけじゃねえ。喉かわいてきたんだよ。でも、この場に水はねえし つばやら汗やらなめたところで焼け石に水だろ? じゃあもう残ってるの、後ろの雪しかねえじゃねえか」

「あ、ああ、そおゆうことか。びっっくりしたぁ」

 

「ん? お、おお!」

「え? なに? どうしたの?」

 いきなり歓喜の声を上げたフランに、状況がわからないから困惑で尋ねる。

 

「よく見ろよ、ミナファ姉ちゃんいるぞ! おーい!」

 手振ってるし……調子いいなぁ。

「ママンドラの背中に隠れた直後に、よく見ろだなんて、無茶言うなってば」

 

 やれやれの呆れた気持ちをそのまま、あたしは息交じりの声に乗せた。頭抱えたい……。

 

 ミナファさん。ミナファ・バーナウトって言う、フランの親戚のお姉さん。あたしとも仲良くしてもらってるんだ。

 そっか。そういえばこの町の町騎士になったって話してたっけ。

 

「わりい、とにかくだ。ミナファ姉ちゃんいるし雪は止んでるし、あぶねえことにはならねえ。確定だ、間違いねえよ!」

 ミナファさんを見てから喜びっぱなしのフラン。でもあたしは、やっぱり不安が拭えない。

「……だといいんだけどなぁ」

「信じろって、俺を」

 

 

「その暑苦しさが信用できないのよねぇ」

 溜息交じりに言ったら、「おいおいー」ってなさけない声出したから、あたしまた笑っちゃった。

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