「レディ・プレイヤー1」 コングレスよりも楽観的に・・・
立川シネマシティ「レディ・プレイヤー1」
過去の名作のパロディてんこ盛りの楽しい映画だった。ネット上のアバターがリアルではこんな人物だった・・・というくだりは昔のパソ通から今のSNSまで馴染みのある状況だけど、メジャーな映画に出てくるようになったのには時代を感じる。
ストーリーはスタニスワフ・レム原作の半アニメ・半実写の映画「コングレス未来学会議」と同じようにバーチャル世界とリアルの対比というテーマを扱っているが、アイアンマン、ゴジラ、ガンダム、キングコング、キューブリックの「シャイニング」その他数多の過去の有名作品(映画・アニメーション・ゲーム)のキャラクターをぶっ込んで、楽しく作り直したような内容といえる。
いずれの作品もバーチャル世界を離れた現実は、スラムが立ち並ぶ荒廃した都市風景である。しかし当然といおうか、スタニスワフ・レムが描くような政治社会的シリアスさはスピルバーグでは脱色され、結果的には、アメリカ風オプティミズムでくるまれたおとぎ話になっている。
個人的には企業主に雇われた殺し屋、アイロックという悪役の「本体」がどこかのくだりで出てくるかと期待していたが、最後まで不明なのは残念だった。インターネットならばネットサポーターのような役割を果たしていたからである。
他の著名作品のネタをまともに盛り込むためには、著作権交渉などでかなりの予算が必要だったことが容易に想像できる。
たとえば、マンガ「同人王」という作品がある。初期の同人誌版では、サンリオの有名キャラクターをデフォルメしたキャラクターを中心に据えることでインパクトを与えた作品だった。しかし商業出版として再販売される時には、パロディ化されたキャラクターは権利問題を避けるためにすべて描き直され、その結果、作品の勢いは削がれてしまっていた。
そう考えると、「レディ・プレイヤー1」はスピルバーグのような強者でなければ作れないやり方であり、作品内での大企業主である悪役ソレントは、スピルバーグ自身の立ち位置を自虐的に演じているのかもしれない。
2018/05/19