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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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王宮魔法師団 -3-

最後の方に少し残酷な描写があります。

 魔力量の測定と魔法適正診断が終わり水晶の光が消えても、グラード団長と父はとても驚いたらしくしばらくお互いを見つめ合っていた。


 ちょっと驚き過ぎじゃない? エリオットの方が凄いのにそこまで驚くことなのか? 父の袖を引っ張っるとようやくこちらを見てくれた。


「アルバート、君は私の想像を超える力を秘めているようだ」


 は? 父は何を言っているんだ?


「アルバート君は魔法を扱う職業に就くために今から精神の鍛練をしていると聞いていますが、本当に将来が楽しみですね。魔法の事で知りたいことがあったらいつでも私を訪ねて来て下さい」


 え? グラード団長まで何を……。王宮魔法師団の本部は一般人は立ち入ることはできない。


 しかもそこの最高責任者の団長を訪ねていける人なんて王宮内でも上級の役職の人だけと聞いていた。俺の中では王族に次ぐ雲の上の人的存在だ。


 そして仕事量の多さから本部から出てくることもほぼなく、姿を拝める機会は騎士団と魔法師団の合同演習の時だったり、国の式典の時くらい。


 だから今回の訪問でグラード団長とヴァーチェス副団長のお二方から聞き取りをされるなんて思ってもいなかったのだ。


 うむ、これは所謂リップサービスというものだな。体は子供だけれどそこはわきまえているので真に受けて訪ねて行って受付のお兄さんを困らすようなことはしないんだぜ。フハハハハ。


 そもそもそんな大それたことが出来るような鋼の心臓を持っていないんだけどね。


 そういえばエリオットのパーティに鋼の心臓を持ったやつがいたな、なかなかのいいキャラだった。って今はそんなことを考えている場合ではない。


「あの、結果を聞いてもよろしいですか?」


「ああ、そうでした。そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。アルバート君の魔力量はとても多いのです。私の知る限りでは私を含めたこの魔法師団の団員でもそこまでの魔力量の保持者はいません」


 魔力量が多いからエリオットと共に魔法を学んでいたとは設定に有ったけれど、そこまで多いのかよ。俺、サイドストーリーがなければ名前もない超脇役だったよね。まじか。


「適性の方は見て分かったかもしれませんが7属性全てがあてはまります。稀少な3属性全ての適性もあるので国王陛下には報告致しますが、国王陛下以外に公表するかどうかはカーティス公爵の判断に委ねさせていただきます。もちろん私は口外いたしませんのでご安心下さい」


 稀少な3属性ってきっと光、闇、無、の3つだよね。おいおい、元々の設定なのか転生特典のチートなのか知らないけれどアルバート万能すぎじゃない? 脇役なのに。


 だがいよいよ魔法剣士になる夢が現実味を帯びてきた気がするぜ。


 しかし国王陛下への報告は義務でも他の機関などに公表するかどうかは父次第なのか。


 魔法の適正なのに魔法師団にも公表されないとか意外だな。個人の情報は保護される国のようだ。


「すみませんカーティス公爵、アルバート君に大切な話があるので少し時間をいただけますか?」


「こちらはかまいません」


 グラード団長が大切な話があると言うので、魔法研究部門の部屋を出て最上階の一番奥にある魔法師団の団長室に戻った。

 研究室内も3人だけだったけれど他の人が近くにいない方がよいとの理由で移動したのだ。


 グラード団長と俺は膝が当たるくらいの位置で向かい合わせに椅子に座り、父は少し離れた場所に座っていた。


「では、アルバート君いくつか質問をしますので感じたことや思ったことを答えてください。わからないことはわからないと答えてください」


「はい」


「この魔法師団の建物に入って何か感じたことはありますか?」


「魔力が満ちていてゾワゾワするような不思議な感じがしました」


「今までに誰かが魔法を使うところを見たことはありますか?」


 前世のマンガならたくさん見たけれど、直接はないな。どう伝えるべきか、前世とかマンガとか言っても信じてもらえないだろうし。

 あ、あれだ。英雄の絵本にもあったような気がする。


「魔法は直接見たことはありません。絵本で見たのは見たうちに入りますか?」


「絵本ですか、詠唱とイメージがわかるのであれば入ることになるかな? 次の質問をします。自分や家族、その他の人々の魔力の色は見えますか?」


「見えません」


「では手を私の掌の上に乗せてください」


 グラード団長の掌の上に手を乗せると視界がぶれて色鮮やかだった世界が薄い灰色になり、人間や植物の輪郭だけがそれぞれ異なる色で覆われているのが見える。


 見たままをグラード団長に伝えるとそれが魔力の色だと教えてくれた。


 このまま鏡を見るように言われ見てみると、父やグラード団長を覆う魔力の色はそれぞれ細くはっきりして見えるのに俺を覆う魔力の色は混ざり合ってにじみモヤモヤとしている。なんだこれ……


「アルバート君は魔力量がとても多い。そして今は魔力が溜まり過ぎている状態なのです。魔法を習い適度に魔力を放出できればいいのですが、それができないのでこのままではいずれ体調に支障がでます」


 そんなことあるの? 魔法が使えない子供たちはみんなどうしているんだろうか。


 鏡に映る自分とグラード団長を交互に見ていると頭に手を乗せられ大丈夫だと言われた。ここはグラード団長にお任せするしかない。




 ……。


 恥ずかしいのですけれども……、他に方法はないの!?


 俺はグラード団長の膝の上に座り抱きかかえられる形でいる。

 一刻でも早くこの状態から解放されたくて、テーブルの上に置かれた水晶玉に手をかざし、言われたモノをイメージする。


 グラード団長から俺に送られてくる魔力を伝って俺の中から魔力が水晶玉に流れ込んでいく。なんだか気持ちがいい。体が軽くなっていく気がする。


 途中で父とグラード団長の慌てた声が聞こえたが体が楽になっていく感覚に夢中になって止められなかった。


 今まで魔力が溜まり過ぎて体に負担がかかっていたようだ。魔力を水晶に送ったおかげでずいぶんと体が軽くなった気がする。


 そして魔力を放出しすぎた俺は気を失っていたらしい。


 グラード団長は途中で俺に魔力を送るのを止め俺が放出するのを抑えようとしたのだが、溜まり過ぎた魔力の放出の勢いがすごく、魔力の放出を止めた時には魔力切れに近い感じになってしまって俺は気を失ってしまったのだ。


 俺が気を失っている間に王宮から連絡が来て父は退室して、グラード団長に介抱されていたと知り恐れ多さと申し訳なさでいっぱいだった。


 先程までと違い今は視界に映る世界の色は鮮やかで、魔力の色は見えない。魔力の色を見る方法は感覚で覚えるのが早いそうなので、また教わりに来る約束をしてもらった。


 どうやらグラード団長を訪ねて来ていいというのはリップサービスではなかったらしい。


 むしろ訪ねて来てほしい、そして俺がイメージしたモノについて教えてほしいと言われた。


 水晶には何とかギリギリ収まっているけれど、あれ以上注ぎ込んだら水晶は割れて大爆発が起こってしまっていたかもしれないと聞いた時は冷や汗が止まらなかった。


 あれはアランが使っていた魔法だった。

 地面が紅く燃え盛り波打ち、逃げることは許されず、そこにいる者たちを全て焼き尽くす非情な魔法なのだ。


 俺は何故あれを選んでしまったのか。英雄の絵本に出てきた魔法とか、他にもあっただろうに。絵本にあんな魔法はなかったから説明に困る。


 だがやらかしてしまったことは仕方がない。とにかく書庫で読んだ本と見たことのある絵本を頭の中で高速で思い返しそれらしい説明をするのに必死だったのだ。


 そんな俺をグラード団長は弧を描く口元を手で押さえ、目を細めて見つめていた。


 俺は忘れていた。グラード団長が魔力の流れで人の感情が読めるという事を。




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