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龍鱗と暗黒騎士  作者: シライ トモリ
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王宮魔法師団 -1-

 ―緊張する。俺は今日王宮に来ている。王宮魔法師団に魔石の解析をしてもらうために登城する父について来たのだ。


 しかもね、俺にも関係あるのだよ。1週間前にこの話を聞いてから緊張してあまり眠れていない。

 だって王宮だよ? 前世一般人の俺には縁の無い所だったので完全おのぼりさん状態だよ。


 今回の登城の目的は第一王子エリオットの遊び相手兼、同学年の御学友候補としてエリオットの時間が取れれば顔合わせをする予定なんだとか。


 ずっとこの日が来るのを楽しみにしていた。ついに、ついに会えるのかもしれないのだよ。挨拶の練習はばっちりだ。長い付き合いになるのなら最初が肝心だからな。


 俺の将来の目標は家族を失う未来を防ぎ、王宮騎士団第八部隊に入ること。エリオットとは学友だけでなく後々は同じ部隊に所属になる予定だ。フハハハ。


 と、その前に王宮魔法師団で先日のナイアドの森での魔物との出来事についての聞き取りがあるんだった。まだ子供とはいえ魔物を見たのは俺だけなのだ。この間父に報告したことと同じことを言うだけでよいと言われている。


 王宮魔法師団の団員はお目にかかることもあるが王宮魔法師団の本部には一般人の立ち入りは許可されていないと聞いている。貴重な体験だしもしかしたら魔法を見ることも出来るのかもしれないのでわくわくする。

 

 父からは今回聞き取りをする人物は穏やかな優しい人だからあまり緊張しなくて大丈夫だよと言われている。仕事で顔を合わせる機会が多いため、相手のことをよく知っているようだ。


 父の後ろについて王宮の長い廊下を進み中庭の辺りに通りかかった時、心臓がドクンッとはねた。立ち止まってそこを見ているとマンガの中のワンシーンが甦る。


 アルバートは一時期王宮でエリオットと共に座学の授業を受けていた。そして授業の合間に二人はこの中庭で剣術の手合わせをして楽しそうにしていたのだ。


 彼らが一緒に過ごした短い時間の中での一コマ。


 ここなのか……と感傷に浸っていると父に呼ばれた。おっといけない、予定に遅れるわけにはいかない。


 長い長い廊下を抜けて庭と林をさらに進んだところに王宮魔法師団の本部があった。いろいろな魔法を扱うところだから王宮から遠いのだろうか。この距離がちょっと怖い。


 入口の受付で父が本日の予定を告げて担当部の団員を呼んでもらい案内してもらう。建物の中は魔力が満ちていてゾワゾワするような不思議な感じがする。


 最上階の奥にある大きな部屋に案内され服装を整えて入ると、そこには父より年齢が少し上くらいの男性がいた。


「王宮魔法師団団長のルイス・グラードです。お越しいただきありがとうございます」


 知り合いって魔法師団の団長!? そういう事は初めに言っておいて欲しい。とんでもない人物の登場に緊張してしまう。


「グラード団長、忙しい中お時間いただきありがとうございます。この子は私の息子のアルバートです」


「はじめまして、アルバート・カーティスです」


「はじめまして、アルバート君。カーティス公爵、アルバート君、本日はよろしくお願いします。では、こちらにお座りください」


 グラード団長は細身の長身でクセのある金色の髪に切れ長のダークグリーンの瞳、整った顔で表情も物腰も穏やかで婦女子にとても人気のありそうな人物だった。


 挨拶が済みソファーに座るともう一人男性が現れてお茶を出してくれた。


 こちらもグラード団長と同じく細身の長身に銀の髪と淡いブルーの瞳、中性的な顔立ちでこれまた婦女子に人気がありそうな人物だ。ただし、瞳の奥がなんだか少し怪しい。


「彼は、副団長のヴァーチェスです」


「魔法師団の副団長をしています。ダグラス・ヴァーチェスです」


 なんとこちらの御方は副団長らしい。王宮魔法師団の団長と副団長直々とはもしや今日の訪問は俺が思っている以上に大事なのか?


「では早速ですが魔物の話を聞かせてもらってもよろしいですか?」


 グラード団長に促されて俺は森での出来事を思い出しながら話した。話し終わって隣に座る父を見ると、父に話した内容と相違点やもれはなかったようで頷いてくれた。

 次に父が森の調査結果の報告をする。


 ―調査結果―

 ・魔物が現れたとされた場所での魔物の痕跡なし。

 ・安全地帯周辺の調査もしたが同じく痕跡なし。 

 ・森に対して使ったとされる魔法の痕跡がないため魔法解析不能。使用者不明。

 ・魔石の出どころ不明。

 ―以上。


 というのが今回の調査結果だった。


 先生は外せない予定があるとのことで今日はこの場にいないけれど、前もって報告はしてあるとのことだ。 


 あの日、先生が魔物のいた場所を確認していたのは覚えている。その時も魔物の足跡、魔物の体毛、魔物の魔力の痕跡等は何も残っていなかったらしい。

 先生は父にその事については俺が部屋を出てから報告していたそうだ。 


 あの時茂みがガサガサと揺れ、目を向けたら魔物が現れた。なのに茂みに擦れて付着していそうな体毛も、枝が折れた個所も、足跡も残っていないって、そんなことあるのだろうか。これでは俺のただの妄想になってしまうんじゃないか。


 父も先生も疑わずに信じてくれたが、他の人達はどうだろうかと不安になる。先生が確認できたことだって森の異常と俺の持っていた魔石だけだ。


 嘘をついて騒ぎを起こしたと、俺を信じた父や先生まで信用を失う事になるのではないかと不安になったが、俺の心を察した父が大丈夫だと言ってくれた。


 ここは王宮魔法師団の本部の中で、王宮魔法師団の団長が直々に話を聞いているのだ。


 魔道具で発言に虚偽がないか確認されているし、団長は魔力の流れで感情の機微がわかるのでそちらでも見定められている。


 目は口ほどに物を言うとは言うが魔力の流れも同じようなので、この場で嘘や隠し事は出来ないとみて間違いない。


 そもそもあのような広範囲の異常事態は俺のような子供の起こせるものではない。

 そして人の手で起こされた現象なら魔法を使った痕跡やら何やらが必ずどこかに残されているはずなのだ。


 魔石に関しては俺は作れないし、もともと我が家にあったものでもない。


 魔物の正体は解らなかったけれど、魔石の方は魔法師団で調べてもらうことになった。

 そこでこの国で一番の魔石の研究者である副団長がこうして同席することになったらしい。


 ちなみに魔石マニアと言われているとのこと。うん、確かに目の輝き方が危ない人に見える。


 今日はもう用件は済んだので王宮に戻っていいのだけれど、めったに入る事の出来ない魔法師団本部内をキョロキョロ見回し過ぎたのか、せっかく来たのだからと見学とついでに俺の魔力量を測ってもらえることになった。


 ……ダグラス副団長に続きグラード団長の目の輝きも怪しいのは気のせいだと思いたい。




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